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太陽炉(たいようろ)は、レンズや反射鏡などを用いて太陽光を集光し、高温を作り出す装置である。
レンズで屈折させて集光する方式と、反射板または反射鏡で反射させて集光する方式がある。後者は数種類に分かれる。
凸レンズなどに光を通すことで光を屈折させ、集光する。
大型レンズは製造コストが非常に高価となるため、教育目的の実験以外ではあまり利用されていない。
平面鏡または凹面反射板を用いて放物面を形成し、集光する。凹面反射鏡は天体望遠鏡のものと同様に高価であるため、ほぼ用いられない。用途によって適した方式が分かれる。
既存の平面鏡を転用できるほか、反射板や鏡の製作が容易で製造コストが低い。太陽熱発電所から小型着火器までさまざまな用途に利用される。発電所では鏡を用いるものが多いが、小型のものでは金属をそのまま反射板として利用するものが多い。大型のものでは多数の小さな平面鏡を放物面の形に並べる方式が多い。長時間連続使用するには、太陽を追尾する必要がある。
太陽熱発電の熱源として用いられる。
ソーラーオーブンとして太陽炉が野外調理に利用される。直接的に熱源として調理する場合が多い。インドのブラマクマリスセンターやアナダナム複合施設のように調理用の蒸気の熱源として大規模施設で利用される場合もある。反射板は非常に眩しいため、視覚障害を防ぐ目的で利用の際にはサングラスが必要である。
オリンピックの聖火をギリシャのオリンピアで最初に点火する時に使われる。
ソーラーライターと呼ばれるタバコの着火器がある。
世界保健機関(WHO)や赤十字が家庭での水処理と安全な貯蔵のための実行可能な方法として推奨している太陽水殺菌の効果向上や時間短縮のために利用される。太陽水殺菌は分散型水処理のため、簡単かつ効果的な方法であり、家庭などでも行うことができる。そのため、太陽水殺菌による水の殺菌はすでに多くの発展途上国で利用されている[1][2]:55。EAWAGによって発行されている太陽水殺菌の手順に関する教育用パンフレットは多くの言語で入手可能である[3][2]。他にも、太陽炉を用いて水を蒸発させ、衛生的な蒸留水を作る試みがなされている。
太陽光の収束度によっては幾千度の高温に達するため、物質の熔融実験や結晶の合成にも用いられる[4][5][6][7]。
超高熱を利用し、物質の還元にも利用される。
古代には、第二次ポエニ戦争でシュラクサイのアルキメデスが鏡に反射させた太陽光を大型レンズで集光し、ローマの軍船を焼いたとされているが、事実かは確認されていない。2005年に行われたマサチューセッツ工科大学の実験チームによる実験では、停止中には発火させることが可能なものの、移動する船への集光は困難という結果が出ている。[8]
日本では、産業技術総合研究所中部センターの前身である名古屋工業技術試験所(名古屋工業技術研究所)で高温での物質科学研究に使われてきたが、現在はその研究は行われていない。かつて海軍の艦船に使用されていた探照灯の放物面鏡の予備品が、反射鏡として利用された[9]。若狭湾エネルギー研究センターは研究を続けており、2008年には二酸化炭素を分解する研究が成果として発表された。2011年には、戦艦大和の部品を用いた、新燃料電池に使用するマグネシウムの再利用施設が公開された。
近年は実用化が進んでいる。太陽熱発電で用いられるほか、発展途上国を中心に高度な技術や材料のほか燃料を必要としないため、調理加熱用の道具として利用される。インドではヒンドゥー寺院が太陽熱発電所を建設し、経費を削減している。
小型のものは手のひらに載る数センチメートルのタバコの着火用からトランク程度の調理用まで市販されており、持ち運びが容易であるため、海外では調理用としてキャンプなどで広く利用されている。小型であっても非常に眩しくなるため、視覚障害を防ぐ目的でサングラスなどによる保護が必要である。
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