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ストロー(英: straw)とは、飲み物などを飲む際に用いられる器具[1]。両端に穴が空いた細い管状の道具で、コップなどの容器に入った飲料に指し入れ、逆側の先端を吸うことで飲料を口に運ぶことができ、コップを持って傾けたり、口を直接コップに付けたりする必要がない。
ポリプロピレンなどのプラスチックで作られる場合が多く、紙製あるいはプラスチック製の袋に封入されている製品もある。市販されている小型の紙パック入りの飲料では、ストローがプラスチック製の袋に封入された上で商品に付属されている場合が多い。
元々、ストローとして、麦の穂を切り取った残りの麦稈(ばっかん)すなわち麦わら(straw)そのものが利用されていたため、この名前で呼ばれる。普通の麦わらと区別するには "drinking straw" と呼ぶ。後述するようにプラスチックごみ問題が深刻化し、自然界で生分解される素材のストローが求められるようになり、現代でもライ麦の茎を使ったストローが製造・販売されている[2]。
中国では、唐朝の詩人杜甫が「黄羊饫不膻,芦酒多還醉」と詩っており、この「芦酒」は植物の芦の茎を使った管で吸う酒のことである。イネ科の荻の茎も使われており、北宋時代の『雞肋編』には「荻管吸于瓶中」という記述がみられる。
日本のストロー生産は、1901年(明治34年)頃に岡山県浅口郡寄島町(現・浅口市)で川崎三一が麦稈を使って始めたという[3]。
日本でも1950年代後半頃までは喫茶店やカフェで麦わらが使われており、紙封入りの麦わらを、冷えた飲み物のコップに付着した水滴を利用して縦に貼り付け、ウエートレスが客席へ運ぶ姿が見られたものである。日本で、米の裏作として麦を栽培することが減り、原材料がより低価格で調達できる紙やプラスチックへと変遷してきた。麦わらを模した中空の形状や用法は変わっていない事から、現在でも変わらず「ストロー」の名で呼ばれ続けている。上記の浅口市には、国内生産の約半分を占めるストロー製造会社シバセ工業があるが、日本で使われるストローのうち8割~9割は中国や韓国などからの輸入品と見られる[4]。
「ストローハット」の語も本来は麦藁帽子を指すが、現代では多種多様な素材が存在し、総じて形状からストローハットと呼ばれているように本来の意味が曖昧になっている。
なお、調理用語において「ストロー」とは麦わら程度の太さに切ることを指す(ストローポテトなど)[1]。また、ストローの「吸い上げる」という意味合いから、交通機関の発達により人口が移動して偏る現象はストロー現象と呼ばれている。
ストローの形状は単に直線に細長い筒状のもの(ストレートストロー)が一般的である。このほかに、中間に特殊な蛇腹加工を施する事で折り曲げとその角度固定を自由とし仰向けの状態でも容易に使用可能な「曲がるストロー」(ステイストロー、フレックスストロー)や、中間をいくつかに分割しさらに入れ子式にする事で収納時にコンパクトになる「伸びるストロー」といった機能的に長けたデザインのものや、先が二つに分かれており二人で同時に吸わないと飲めない「アベックストロー」、中間を長くとり曲げ加工や膨張収縮させて意匠的デザインに長けたものなど、あるいはそれらの複合デザインのものなどが挙げられる。また、もっぱらかき氷に用いられるストローとして、先端をスプーン状に開いた「スプーンストロー」がある。
太さに関しては通常の太さ以外に、カクテルなど主にマドラーの代用としても使用されるより細く強いストローや、タピオカや果実などの固形物が入っている飲料に使用される太いストローなど、用途に合わせた内径の違いが存在する。またストローの太さは液体を汲み上げるために必要な吸引力の差を生む。
細ければ細いほど小さな吸引力で済むが、一度に汲み上げる量が減る。また太ければ太いほどより多くの吸引力が必要となるが、汲み上げられる量も多くなる。例えばマクドナルドのストローは通常よく使われるタイプの物より太い。これは飲む際に最もおいしいと感じさせるために必要な吸引力を独自研究した上での計算された太さであり、マーケティング戦略の一環であると言われている。[要出典]
ストローの上方から空気を吸引することで液体を重力に逆らって持ち上げることができる。この作用原理には、大気圧の力が関係している。
液体をストロー上方へ運ぶ直接的な力は、コップ内の液体にかかっている空気の重さ、すなわち大気圧の力そのものである。ストローを吸う行為は直接的にはストロー内の空気を吸い出すという行為であり、外部の大気圧に対してストロー内部の気圧を低くするだけの行為である。これによりストロー内部に密着している液体表面だけが大気からの圧力より開放されるが、それ以外の液体表面には依然として大気圧の重みがかかっている状態になる。常に大気圧に押さえ付けられている液体はより低い気圧のほうへ押し出されざるを得ないが、結果的にそこはストロー内部の空間となる。
2018年、欧州連合(EU)は、海洋ごみの多くが使い捨てプラスチック製品であることに着目し、ストローなどの素材を代替品に切り替えるよう義務付ける規制案を発表。2019年を目途に、欧州議会と加盟国で議論されることとなった[5]。
プラスチックから紙製ストローなどへの転換も試みられているが、耐久性に問題があり、試行錯誤が続けられている[6]。これに関して、大手コーヒーチェーンのスターバックスが、2020年までに全世界の店舗でプラスチック製ストローを全廃する方針を表明。日本でも大手外食チェーンのすかいらーくが傘下のファミリーレストラン「ガスト」で2020年までに廃止する方針を打ち出している[7]。
こうした規制の動きを受けて、様々な提案がなされている。代替素材としての紙、ステンレス鋼、ライ麦や大麦、竹(バンブー)、リサイクルガラス、食材でもあるパスタやちくわのほか、ストローを使わないようにすることも含まれる[8]。2018年にはアキュラホームが、間伐材を使った木製ストローの量産とホテルへの納入予定を発表した[9]。
日本の学校給食で出される牛乳では、上部を開けて口をつけて飲む紙容器に切り替え、ストローを使わないようにする動きもある[10]。
プラスチックストローの規制の動きに対して、脊髄性筋萎縮症などの身体障害者には曲げられるプラスチックストローを利用しなければ誤嚥を招くという意見が世界的に出ている[11][12]。そのためイギリスでは2020年4月に施行される規制法で例外的に医療目的や障害者に対してプラスチックストローを提供することを許可している。
ステンレス製のストローが目に突き刺さり、外傷性脳損傷で死亡した60歳の女性の事故や、スターバックスで4人の子供が金属製ストローで創傷を引き起こした問題のように、金属製ストローはその硬さや熱の通しやすさから危険性も指摘されている[13][14]。
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