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スシスクス(学名:Susisuchus)は、前期白亜紀に生息したワニ形上目新鰐類の属[1]。化石はブラジル北東部のアラリペ盆地およびリマ・カンポス盆地に分布するアプチアン階のクラト層ノヴァ・オリンダ部層から発見されている。2003年に命名されており、本属のみでスシスクス科を構成し、また正鰐類の系統群に近縁である。タイプ種 S. anatoceps は軟組織を保存した関節した単一の部分的骨格から知られる。第二の種である S. jaguaribensis は部分的な化石に基づいて2009年に命名された。
スシスクス | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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S. anatoceps の標本(A)およびその薄片断面試料(B・C) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
地質時代 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
前期白亜紀 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Susisuchus Salisbury et al., 2003 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
種 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
スシスクス属は2003年にタイプ種 S. anatoceps の記載で以て設立された。S. anatoceps はアラリペ盆地に分布するアプチアン階のクラト層で発見されており、当該の地層で記載された最初のcrocodyliformの動物である。ホロタイプの骨格は不完全ながらも部分的に関節しており、頭蓋骨と下顎および体骨格の中軸骨格、前肢さらには皮骨板の一部が保存されている。また軟組織も保存されており、前肢と右足の指にはそれらを被覆する皮膚が見られる。標本の保存状態から、本個体は乾燥死体となった後に盆地に堆積・埋没したと考えられる[2]。
第二の種である S. jaguaribensis は S. anatoceps の骨格から約115キロメートル離れたリマ・カンポス盆地から産出し、2009年に命名された[3]。
2009年には、新たなcrocodyliformの化石がクラト層から記載された。当該の層準から産出したワニ形上目にはウルグアイスクス科のアラリペスクスとトレマトチャンプサ科のカリリスクスがいるが、これらとは腓骨の形質状態や大腿骨と脛骨の比率に基づいて区別が可能である。四肢要素がアラリペ盆地から産出した他の既知の全てのcrocodyliformと異なることから、暫定的に本標本は後肢が発見されていないスシスクスのものとされ、cf. Susisuchus sp. として分類された[4]。
Susisuchus anatoceps のホロタイプ標本は頭蓋骨と下顎、前肢、中軸骨格の一部、複数の皮骨板を含み、両前肢と右足の指には軟組織の痕跡も見られる。S. jaguaribensis はさらに発見部位が少ないものの、その断片的な化石は種を標徴するには十分である。両種はともに鱗状骨と頭頂骨とが接触しており、その接触は頭蓋天井に開いた穴である上側頭窓の後側の境界に位置する[3]。
皮骨板からなるスシスクスの背側の外骨格は、現生のワニを含む派生的な正鰐類のものに類似する。スシスクスは4列の皮骨板を持つ最初の中正鰐類の一つであり、背側のその構造は背部をより強固にしていた。この形態では、背側には paravertebral osteoderm(背部の正中線に近い皮骨板)からなる4本の分かれた列が存在する。ベルニサルティアをはじめとするより初期の中正鰐類では、皮骨板の列はわずか2列であった。2列に並んだ大型の皮骨板は、スシスクスにおいてはより小型化し、4列に断片化している[5]。また、スシスクスはparavertebral osteodermの外側にそれぞれ2列の accessory osteoderm を有している[2]。
この断片化により、スシスクスの胴部は水平方向の柔軟性が向上した。この柔軟性のためスシスクスは遊泳時に横方向へうねることが可能になり、結果として移動効率が向上した。ただし4列全体の皮骨板の幅が断片化によって狭まりはしなかったため、背部には高い姿勢での歩行時において直面する力に耐えうる剛性がもたらされたと思われる。しかし、高い姿勢での歩行能力はスシスクスの体サイズに制約を課したと思われる。もしスシスクスが体重50キログラムを上回ったならば、高い姿勢での歩行時にかかる力に耐えきることは不可能であったと思われる[5]。
スシスクスはアメリカ合衆国のテキサス州から産出したパキケイロスクスやオーストラリアのクイーンズランド州から産出したイシスフォルディアと近縁である。これらの3属はいずれも非常に派生的な前期白亜紀の中正鰐類であった[2]。スシスクス科の当初の記載において、イシスフォルディアは本科に属する可能性があると考えられたが、当時イシスフォルディアはまだ命名されていなかった。2006年にイシスフォルディアが命名された際、当該の属は正鰐類の最も基盤的な属として位置づけられた一方、スシスクスは正鰐類の姉妹群としてその外に置かれた。以下のクラドグラムは Salisbury et al. (2006) に基づくもので、中正鰐類内でのスシスクスとイシスフォルディアの類縁関係を示す[5]。
中正鰐類 |
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スシスクスの胴椎と尾椎は両凹椎骨であり、これらの椎骨の椎体の端が窪んでいたことが示唆される。4列の皮骨板を持つcrocodyliformにこの特徴が存在することは異様であった[2]。両凹椎骨は椎骨同士の接続の安定性を欠き、体の支持を先述した大型の鱗板骨で補っていたためである[1]。この特徴を鑑み、スシスクス属のみを内包するスシスクス科が設立されるに至った[2]。
スシスクス属の第二の種として S. jaguaribensis が記載されると、本属は系統学的に再定義された。その定義とは、S. anatoceps と S. jaguaribenesis の最も近い共通祖先とその全ての子孫を含むノード(節)ベースの分類群である[3]。
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