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シキミ属(学名: Illicium)は、被子植物のマツブサ科に分類される属の1つである[3]。常緑性の低木から高木であり、精油細胞をもち芳香がする。花は両性花であり、らせん状に配置した多数の花被片と雄しべをもつ(図1a)。雌しべは多数が輪生しており、集合性の袋果となる(図1b)。40種ほどが知られ、東アジアから東南アジアと北アメリカに隔離分布している。トウシキミの果実は、香辛料として広く用いられている(
本属のみでシキミ科 (学名: Illiciaceae) とすることが多かったが、2020年現在ではふつうマツブサ科に分類される。学名はラテン語の illicere("魅了する")に由来する[4]
常緑性の低木から高木[5][6][7] (下図2a)。材は散孔材 (道管は散在している)[7]。ふつう無毛であるが、まれに若枝に微軟毛がある[6]。芽鱗は覆瓦状、早落性[6]。節は1葉隙1葉跡性[7][8]。葉は互生し、多くは枝先にまとまってつく[4][6] (下図2b, c)。葉は単葉、葉柄があり、托葉を欠き、葉身は全縁で革質[5][6][7]。気孔は平行型または不規則型[7]。葉や若枝には精油細胞が存在し、香りが強い[5][6][7]。
花は両性、放射相称、葉腋に単生 (まれに2–5個) する[5][6][7] (下図3a-c)。花柄があり、その基部に早落性の芽鱗がある[5]。花被片は7–33枚、白色、黄色または赤色、らせん状につく[4][5][6][7] (下図3a-c)。萼片と花弁の分化は不明瞭であるが、しばしば外側の花被片は小型で萼片状、内側の花被片は大型で花弁状になる[4][6][7] (下図3a-c)。雄しべは多数、らせん状につき、花糸は短く、葯は内向し、縦裂開する[5][6][7]。雌しべは6–18個が輪生し、離生心皮、側面で互いに接しており、花柱は細く、子房上位、各心皮は1個の倒生胚珠を含む[4][5][6][7][8] (下図3a)。個々の心皮は袋果となり、輪状に集まって多角形から星状となる[5][6][7][8] (下図3d, 4a)。果実は褐色、内果皮はやや木質になる[4][6]。各袋果は内縫線で裂開し、1個の種子を出す[5][6]。種子は楕円形から卵形、やや扁平で光沢がある[4][6]。胚乳は油性、多量[5][6]。
プレニル化C6–C3化合物、ネオリグナン、およびセコプレジザン型セスキテルペンなど特徴的な二次代謝産物を生成するが、その多くは生理活性物質であり、中にはアニサチンなどの有毒物質も存在する[9][10][11]。染色体数は 2n = 28 (アメリカシキミは 2n = 26)[11]。
北米南東部と西インド諸島、および日本を含む東アジアから東南アジアに隔離分布する[5][6][7][8]。
湿潤な地域において森林の亜高木層から低木層に生育する陰生植物であり、強い日光によって葉の白化や壊死が起こる種もいる[12]。
トウシキミの果実は
またトウシキミの果実は生薬としても用いられ (生薬名は大茴香)、芳香性健胃薬などに利用される[16][17]。
シキミ属は花の類似性 (多数の花被片、雄しべ、雌しべなど) からモクレン科に分類されることもあったが[5]、ふつう独自のシキミ科 (Illiciaceae A.C.Sm. (1947)) に分類されていた[22][23]。新エングラー体系では、シキミ科はモクレン目に分類されていた[24]。また狭義のマツブサ科 (マツブサ属とサネカズラ属) に近縁であることは古くから認識されており、クロンキスト体系では両者はあわせて独立のシキミ目 (Illiciales) に分類されていた[25]。
その後20世紀末以降の分子系統学的研究から、シキミ科と狭義のマツブサ科の近縁性が支持された。両者は姉妹群の関係にあり、2つの科に分けて扱うことも可能であるが、2020年現在では両者をマツブサ科としてまとめることが一般的になっている[8][26]。この広義のマツブサ科はトリメニア科やアウストロバイレヤ科に近縁であり、これら3科はアウストロバイレヤ目にまとめられている[8][26]。
シキミ属には37種ほどが知られている[1]。北米や西インド諸島など新世界に約6種、東アジアから東南アジアの旧世界に約31種が分布している。新世界の種と旧世界の種は、それぞれ単系統群を構成している[27][28] (下系統樹参照)。
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5. シキミ属の系統仮説 (一部の種を含んでいない)[27][28] |
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