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キンチャクダイ科(Pomacanthidae)は、スズキ目スズキ亜目に所属する魚類の分類群の一つ[1]。8属で構成され、タテジマキンチャクダイ・サザナミヤッコなどサンゴ礁に生息する熱帯魚を中心に91種が含まれる[2]。
キンチャクダイ科は太平洋・インド洋・大西洋の熱帯域に分布する海水魚のグループで、特に西部太平洋に住む仲間が多い[2]。ほとんどは水深20mより浅い海の岩礁やサンゴ礁で暮らし、深所にまで分布する種類はまれである[2]。同じスズキ亜目のチョウチョウウオ科やベラ亜目の仲間と並び、サンゴ礁魚類の代表的存在として知られる[3]。
鮮やかで美しい体色をもつ種類が多く、一般には「ヤッコの仲間」として親しまれる。体色は成長段階によって著しく変化し、稚魚と成魚ではまったく異なる色彩・斑紋を呈することがしばしばある[2]。性別による体色の差も大きく、いわゆる性的二形を示す種類が多い。また、キンチャクダイ類の多くは雌性先熟型の雌雄同体で、すべての個体が当初は雌として成長し、ある程度大きくなると雄に性転換する[4]。1匹あるいは複数の大型の雄によってハーレムが形成されるものとみられるが、繁殖行動については詳細が明らかになっていない種類が多い[3]。
本科魚類はその美しい色彩から、水族館などで観賞魚として飼育されるほか、スクーバダイビングでの観察対象としても一般的な存在である。日本ではサザナミヤッコ・ロクセンヤッコなどの中型種を食用として利用する。
キンチャクダイ類は「エンゼルフィッシュ Angelfish」の英名をもつが、日本語で「エンゼルフィッシュ」と言った場合はベラ亜目シクリッド科に属する淡水魚のエンゼルフィッシュ(Pterophyllum 属)を指すことが多い。英語ではシクリッド科のエンゼルフィッシュを「Freshwater angelfish」、キンチャクダイ類を「Marine angelfish」として区別する。
体は強く側扁する[4]。一見してチョウチョウウオ科の仲間に類似するが、前鰓蓋骨にはチョウチョウウオ類にはない強いトゲが存在する[3][4]。オスにはこのトゲが2対ある。また、チョウチョウウオの仲間に見られる腹鰭の付け根のトゲ、および浮き袋の突起をいずれも欠く[5]。さらに、頭部を骨板に覆われたトリクティス幼生期を経ずに成長することも、チョウチョウウオ科との重要な鑑別点となる[3]。
連続した一つの背鰭をもち、棘条および軟条はそれぞれ9-15本・15-37本。臀鰭は3棘14-25軟条で構成される。多くの種類では背鰭・臀鰭の中央から後方にかけての軟条が大きく発達し、後方に細長く突き出ることもある。尾鰭は15本の分枝した鰭条からなり、辺縁は丸みを帯びるか、あるいはタテジマヤッコ属のように三日月型になる。椎骨は24個[2]。
キンチャクダイ科は8属91種が分類されている[4][5]。日本および台湾の近海に分布するスミレヤッコ Centropyge venustus は当初 Holacanthus 属として記載され、後に独立の Sumireyakko 属とされたが、同属は現在ではアブラヤッコ属のシノニムとして扱われることが多い[3][5]。ここでは和名のある種を述べる。
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