ジョンソンは幼い頃から数学に強かった。グリーンブライア郡には、アフリカ系アメリカ人が8年生以降に通える公立学校がなかった。そこで、コールマン夫妻は、子供たちがウェストバージニア州インスティテュートにある高校に通えるよう手配した。この学校は、当時黒人専用の大学だったウェストバージニア州立大学(West Virginia State College (WVSC)、現在のWest Virginia State University (WVSU))のキャンパス内にあった[11]。ジョンソンは、10歳で入学した[12]。一家は、開校期間中はインスティテュート、夏はホワイト・サルファース・プリングスで過ごした[13]。
14歳で高校を卒業したジョンソンは、続いてWVSCに入学し[14]、受講可能な数学のコースをすべて受けた。大学では、高校時代に彼女を指導した化学者で数学者のアンジー・ターナー・キングや数学で博士号を取得した3番目のアフリカ系アメリカ人であるW. W. Schieffelin Claytorなどの教授らが彼女の指導に当たった。Claytorは、キャサリン専用の新しい数学コースを追加した[15]。1937年、キャサリンは18歳で数学とフランス語の学位を取得し、成績最優等(summa cum laude)で卒業した[12][16][17]。大学ではAlpha Kappa Alpha(アフリカ系アメリカ人の大学間社交クラブ)のメンバーであった[18]。卒業後、彼女はバージニア州マリオンの黒人公立学校で教職に就いた[14][19]。
ジョンソンは、26の科学論文を共同執筆した[6][42]。彼女が各種の褒章を受賞し、科学分野における人生のロールモデルになっていることは、宇宙科学とコンピューティングの先駆者として彼女が社会に与えた影響の大きさを物語っている[42][43][44][45]。1999年には、ウェストバージニア州立大学の Outstanding Alumnus of the Year に選ばれた。2015年11月24日、STEM(科学・技術・工学・数学の4分野)における先駆的アフリカ系アメリカ人女性の例として、他のアメリカ人16人とともに、バラク・オバマ大統領から大統領自由勲章が授与された[46]。当時、オバマ大統領は次のように語った。「キャサリン・G・ジョンソンは、彼女の性別と人種に対して社会が求める枠にとらわれるのを拒否する一方、人類の力が及ぶ範囲をいっそう広げました」[5]。 また、NASAは、ジョンソンが局の「科学者として働いた最初期のアフリカ系アメリカ人女性の一人として果たした歴史的な役割」を称えた[2]。
自身の名前が与えられたJohnson Computational Research Facilityの前にて
NASAでは、ジョンソンの名前が2つの施設に付けられた。ひとつはバージニア州ハンプトンにあるNASAのラングレー研究センターの施設で、2016年5月5日、新たに建設される40,000平方フィート (3,700m2)の建物に「キャサリン・G・ジョンソン計算研究施設」(Katherine G. Johnson Computational Research Facility)と名付けられることが決まった。この施設は、2017年9月22日に正式にオープンした[47][48]。この日は、宇宙飛行士アラン・シェパードが搭乗した歴史的なロケット打ち上げと着水の55周年を記念する式典も行われ、その成功に貢献したジョンソンも出席した[49]。セレモニーで、ルーウィンド副局長がジョンソンについて次のように述べた。「世界中の何百万人もの人々がシェパードの飛行を見ましたが、当時の人々が知らなかったのは、彼を宇宙に送り出し、安全に帰還させるための計算が、本日の名誉ゲストであるキャサリン・ジョンソンによって行われたということです」。 このイベントで、ジョンソンはシルバー・スヌーピー賞も受賞した。この賞は、宇宙飛行士賞と呼ばれることも多く、NASAによれば「飛行の安全性とミッションの成功に顕著な貢献をした人物」に贈られる[50]。もうひとつ、2019年2月22日に、NASAはバージニア州フェアマウントの独立検証・妥当性確認施設(Independent Verification and Validation Facility)の名称を変更し、キャサリン・ジョンソン独立検証・妥当性施設とした(Katherine Johnson Independent Verification and Validation Facility)[51]。
2016年、サイエンスライターのマイア・ワインストックが、レゴの「NASAの女性」(Women of NASA)のプロトタイプを開発し、ジョンソンもその中に加えた[53]。ジョンソンは彼女が人形としてキットに加えられるのを断ったため、最終的な製品版には含まれなかった[54]。2018年3月、玩具メーカーのマテルが、NASAのIDバッジを身につけたジョンソンがモデルのバービー人形を発表した[55]。2018年5月12日、ジョンソンはウィリアム・アンド・メアリー大学から名誉博士号を授与された[56]。2018年8月、ウェストバージニア州立大学はジョンソンを記念してSTEM教育向けの奨学金制度を設立し、キャンパスに彼女の等身大の銅像を建てた[57]。2019年6月、ジョージ・メイソン大学のサイテック(SciTech)キャンパスで最大のビルディングがキャサリン・G・ジョンソン・ホールと名付けられた[58]。2019年8月、Government Executive誌が新たに開設する「Government Hall of Fame」(米国政府に顕著な貢献をした人物の殿堂)の初期メンバーの1人としてジョンソンを選出した[59]。
2020年、ワシントン州ベセル(Bethel)学区に新設された小学校がキャサリン・G・ジョンソン・ホールと名付けられた[60]。2020年11月2日、バージニア州で最大、全米で12番目に大きい学区を担当するフェアファックス郡の公立教育組織(Fairfax County Public Schools、FCPS)とフェアファックス市の共同で、市内のシドニー・ラニア中学校(ラニアはアメリカ連合国時代の兵士で詩人、音楽家)の名称をキャサリン・ジョンソン中学校(KJMS)に改称することが発表された。住民の85%の賛成の声を受けての決定であった[61]。
2020年11月6日、愛称が「ジョンソン」と名付けられたアルゼンチンの人工衛星ÑuSat 15(COSPAR 2020-079G)が打ち上げられた。2021年2月、ノースロップ・グラマン社は国際宇宙ステーション用のシグナス補給船15号機(NG-15)を、SSキャサリン・ジョンソンと命名した[62]。2021年、カリフォルニア州サクラメントにあるサンフアン統一学区(San Juan Unified School District)は、新たに開校した中学校をキャサリン・ジョンソン中学校と命名した[63]。