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インドのボードゲーム ウィキペディアから
カロム(carrom)は、ビリヤードに類似した器用さを競うデクステリティー系統のボードゲームで、2人、もしくは2人がペアとなって4人で対戦する。特定のエリアからストライカー(打ち玉)を手の指で弾いて、盤上に並んだストライカーと同じ色の偏平な円筒形のパック(玉)をコーナーにあるポケット(穴)に全部入れた後、先にジャック(王将)を入れることを競うゲームである。キャロム、カルーム、カルム、カラム、カロン、カイラム、カイルム(アラビア語)、ファッタ(パンジャーブ語)、クロンヌ、フィンガービリヤードなど、さまざまな名称で呼ばれている。
カロムは、18世紀のインドを統治していたマハーラージャによって遊ばれるようになったと考えられている。パンジャーブ州パティアーラの宮殿にはガラス製の盤が現存する。スリランカ、パキスタン、ネパール、バングラデシュ、モルディブ、アフガニスタンおよび中東の周辺国においてポピュラーなゲームである。インド系移民によってヨーロッパやアメリカにも持ち込まれ、各地に伝播するなかで様々なローカルルールが派生した後、1988年10月にインドのチェンナイで国際キャロム連盟(ICF)が設立され、統一ルールが制定された。発祥地として、エジプト、エチオピア、イエメン、ミャンマー、バングラデシュという説もあるがいずれも根拠に乏しい。
日本へは明治末期に伝来している。彦根市からカナダへ移民した人々が、現地のフランス系カナダ人の間で流行していたボードゲーム「ピシュノット」を郷里へ持ち帰り伝えたものと考えられる。彦根市は地場産業として仏壇作りが盛んな地域で、その技術を活かしてカロム盤が製造された。そのため、彦根市を中心とする滋賀県の湖東・湖北地域では、主に正月や地蔵盆の頃によく遊ばれるようになった。1913年(大正2年)の墨書き入りで、日本最古と言われる60cm角のカロム盤が彦根市の門脇直也実家に保管されており、ポケットは現在の円形とは異なる三角形で、当時の価格は1円20銭(現在価値に換算すると約3万円)であった。
1905年(明治38年)に滋賀県立商業学校(現・滋賀県立八幡商業高等学校)の英語科教師として来日し、その後、日本国籍を取得するウイリアム・メレル・ヴォーリズが、アメリカ製キャロム(チェッカーボードが描かれ、4色のパックがあったとの証言が残されている)を米原町のYMCAに持ち込んでいる。
1909年(明治42年)に美満津商店が、「ポケツト玉ハジキ(カロム)」としてチェッカーボードの描かれた盤を販売している。このボードは、1917年(大正6年)に美津濃が発行した商品パンフレットにも「ポケット玉ハヂキ 一名カルム」として掲載されている。
1933年(昭和8年)創業のはなやま玩具が、アメリカのキャロム社の製品を模造しており、このキャロムが、1957年(昭和32年)から始まる南極地域観測隊のレクリエーション用具として納品され、南極の昭和基地やそこへ向かう長期航路の退屈しのぎとして、付属ルールとは差異のある「南極ルール」で遊ばれた[1]。1974年(昭和49年)には、エポック社が「アメリカンスナップ」という類似商品を販売している。
1935年(昭和10年)頃から、岩手県の盛岡市、花巻市、岩手郡雫石町では「闘球盤(投球盤)」という名称で地元の木工所が製造販売している。
京都市南区や下京区の児童館で親しまれている「オニム」というボードゲームがあり、カロムと類似したルールで、終戦直後から遊ばれるようになったという。オニムでは90cm四方の盤を使用する。
1988年(昭和63年)8月28日、第1回カロム日本選手権大会が彦根市で開催された。当時、彦根市のほとんどの地域では「カルム」または「カラム」と呼んでおり、地元の中野木工所が製造する盤にも「カルム」と表記されていた。高宮町だけが「カロム」と呼んでいたが、日本選手権開催にあたり『日本国語大辞典(小学館)』に「カロム」と掲載されていたことから「カロム」を採用することとなった。以降、カロム日本選手権大会は毎年継続して開催されている。1998年(平成10年)11月29日、彦根青年会議所によって日本カロム協会が設立された。昭和30年代は、75cm角の大型盤が主流であったが、日本選手権大会では、公式盤として62cm角を採用している。2010年(平成22年)7月16日、彦根青年会議所がカロムのイメージキャラクターを公募して、子供の部は160点の応募の中から「カロムット兄姉」(南川瀬町在住・小林瑠璃)、大人の部は367点の応募の中から「カロム王子」(稲部町在住・山本ゆう子)が選出された。
2006年(平成18年)、カロムの全国普及を目的として、全国カロム普及振興会(略称NCS)が設立された。
2011年(平成23年)4月7日、東日本大震災の経済復興を目的にいわき市の企業5社による共同プロジェクトで「みんなともだちカロム」が製作される。2012年(平成24年)9月16日、このカロム盤を使用した第1回C1カロムグランプリ全国大会が開催された。
2014年(平成26年)11月1日、彦根市にある丸松木材が、関ヶ原の合戦の屏風絵をカロム盤に、東西両軍武将の家紋や旗印をパックにプリントした「戦国カロム」を製造販売している。
2018年(平成30年)11月23日、ティーエンターテイメントが、プラスティック製で現代風にアレンジを加えた「スーパーカロム」を製造販売している。
2019年(令和元年)5月25日、「みんなともだちカロム」が、NPO法人芸術と遊び創造協会のグッド・トイ2019を受賞。
日本キャロム連盟(JCF)の推奨するキャロム盤は、国際キャロム連盟が世界各国で行われている様々な国のキャロムの中でも最もポピュラーであったインドやスリランカにあるボードを基準とし、その統一されたボードでグローバルなゲームを行おうとするものである。一方で、現在でも日本の伝統である彦根カロムの形式は存続して全国大会なども開かれており、多くの愛好者がいる。
最大の違いは、彦根カロムが床や畳などに座って競技するのに対し、キャロムは椅子かスツールに座って競技することであり、椅子やスツールを動かすことはできない。キャロムではストライカーが盤外に飛び出しても手番を終えるだけでペナルティーは発生しない。また、ストライカーがポケットに入っても、同時にコイン(キャメロン)がポケットに入っていれば、コイン(キャメロン)2枚をセンターサークル内へ戻すことで手番が継続する。キャロムではプレイヤーが会話をすることが許されていない。
キャロムと彦根カロムの用具に違いが見られるものの、基本的には同じ遊戯である。だが、キャロムがポイントを取って競う競技なのに対し、彦根カロムはジャックの争奪戦で勝敗が決まるため、戦術やプレイスタイルが若干異なる。
国名 | 名称 | 概要 |
---|---|---|
インド | キャロム | ポケットが小さい。世界各国に波及している。 |
イギリス | キャロム | インドの盤が普及している。 |
アメリカ | キャロム | 盤がリバーシブルになっており、表裏両面を使用して138種類のゲームができる。付属するキューを使用することもできる。 |
カナダ | ピシュノット | ポケットが大きく彦根に伝播したカロムの祖型。 |
パキスタン | ダブ | 通常のカロムと比較して極端に盤が大きい。 価格は彦根カロムの10分の1と安価である。 |
ネパール | カロンボール | 主に貸しカロム屋で1台1ルピーで借りて遊ぶ。 |
ミャンマー | ゼーコン | NUMBERとCIRCLEという大きく2種類の遊び方がある。 NUMBERはCIRCLEより難しく、ビリヤードのルールと類似する。 CIRCLEはNUMBERよりも簡単で遊びやすいため主流で、日本のカロムのルールと類似する。 |
マレーシア | カロム | ポケットがフレームの内側にある。 |
インドネシア | カランボル | ストライカーやパックにコインを使用する。ワンバウンドルールで遊ばれることが多い。日本のカロムのルールと類似する。 |
中国 | 康楽球(カンルーチョウ) 克郎球(クーランチョウ) | ビリヤード同様キューを用いてパックを打つ。 コーナーのポケットが円形。 |
チベット | ジレン | 未詳 |
ラトビア | ノヴス | キューを用いて対面に置かれた8個のディスクを対面側にある両端のコーナーポケットに落としていく。
北欧など周辺国や北米でプレイされている。 |
フィンランド | コローナ | ノヴスの北欧版。 |
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