オーストラリア諸語 (オーストラリアしょご、英 :Australian Aboriginal languages)は、オーストラリア大陸 及びその周辺のメルヴィル島 ・グルートアイランド島 ・ウェルズリー諸島 ・トレス海峡諸島 などの島々で、先住民 (アボリジニ )によって話されてきた、約200の言語の総称。一つの語族を形成するのではなく、数十の互いに関係性が見出しがたい語族からなる。
すでに消滅したタスマニア諸語 は資料が乏しく、オーストラリア諸語との関係は明らかでない。音韻的な類型などから、タスマニア諸語、パプア諸語 、大アンダマン語族 と合わせてインド・太平洋大語族 を形成するという説がある。
かつては600~750程度の言語の存在が知られていたが、現在話されているのは北部準州内陸部を中心に分布する、200程度[1] の言語である。17万人ほどのアボリジニ人口のうち、これらを母語 として話せるのは47,000人[1] 程度である。話者数が1,000人に達する言語は、パマ・ニュンガン語族 に属するアリャワラ語 (英語版 ) (Alyawarr、1,500人)、アランダ語 (英語版 ) (Arrernte、3,175人)、カラ・ラガウ・ヤ語 (英語版 ) (Kala Lagaw Ya、3,000-4,000)、ンガーニャチャラ語 (英語版 ) (Ngaanyatjarra、1,200人)、ピチャンチャチャラ語 (Pitjantjatjara、2,500人)、ワルマジャリ語 (英語版 ) (Walmajarri、1,000人)、およびワルピリ語 (Warlpiri、3,000人)、孤立言語 のティウィ語 (英語版 ) (Tiwi、1,500人)、ならびに、グンウィングアン (Gunwingguan) 語族(英語版 ) に属するエニンディリャグワ語 (英語版 ) (Anindilyakwa、1,000人)、グンウィング語 (英語版 ) (Gunwinggu、1,511人) が知られている。この他いくつかの数百程度の話者を持つ言語を除いた多くの言語は、すでに数名程度の高齢の話者しか残されていない。
パマ・ニュンガン語族 に属する言語の話者数が多いのは、北部準州 以外の地域で話者数の減少が著しかったためである[ 要説明 ] 。
多くの言語が膠着語 的で、能格言語 であることが知られている。また、2進数 ないし3進数 の数詞 を持つ言語が多く、このため「アボリジニは3より多い数を数えられない」と言われることがある[ 要出典 ] が、これは誤りである。
オーストラリア諸語の語族
Giimbiyu語†
Arnhem(
グンウィングアン語族 を含む)
(英語版 )
言語の分類は次のようになされる。上位分類から順に語族 、語派 、語群となる。† は死語 を表す。
ブナバン語族 (英語版 ) (Bunuban, Bunaban)
デイリー語族 (英語版 ) (Daly) - デイリー川 (英語版 ) 流域
Bringen-Wagaydy
Malagmalag
Daly Proper
Malagmalag Proper
Murrinh-Patha(英語版 ) (Garama)
Darwin Region 語族(英語版 ) - ノーザンテリトリー ダーウィン
ララキア語 (英語版 ) (Laragiya, Larakia)
Limilngan-Wulna
Umbugarla-Ngumbur†
Garawan 語族(英語版 )
Giimbiyu 語†(英語版 ) (Mangerr)
グンウィングアン語族 (英語版 ) (Gunwinyguan, Arnhem) - ノーザンテリトリー アーネムランド
Burarran(英語版 )
Djauanic
エニンディリャグワ語 (英語版 )
Gagudjuan
Gungaraganyan
Gunwinggic
Mangarayic
Marran
Alawic
Marra (Mara とも)[2]
Ngalkbun
Rembargic
Warayan†
イワイジャン語族 (英語版 ) (Iwaidjan, Yiwaidjan)
Amaragic
Margic
Yiwaidjic
Jarrakan 語族(ジェラガン語族、Djeragan)(英語版 )
Mirndi 語族 (Mindi)(英語版 )
West Barkly(英語版 ) (Jingulu, Wambaya)
Yirram(ジャミンジュンガン、Djamindjungan)(英語版 )
パマ・ニュンガン語族 の主要な語派である アランディック諸語 (黄緑)
トレス海峡諸島 に分布するパマ・ニュンガン語族のカラ・ラガウ・ヤ語 (英語版 ) (橙色)
パマ・ニュンガン語族の主要な語派である Paman(英語版 )
(黄緑)
パマ・ニュンガン語族は大陸の北東(Paman)から南西(Nyungar)まで広域に分布する
パマ・ニュンガン語族 の主要な語群であるワティ諸語 (英語版 ) (黄緑)
パマ・ニュンガン語族 - 約160言語[1]
アランディック諸語 - ノーザンテリトリー アリススプリングス 。Aranda族(英語版 )
アランダ語 (英語版 ) (Aranda, Alyawarr)
Baagandji
Bandjalangic
Durubalic†(英語版 )
Dyangadi
Dyirbalic(英語版 )
Flinders Island
Galgadungic
Gumbaynggiric
カラ・ラガウ・ヤ語 (英語版 )
Karnic(英語版 )
Kulinic(英語版 ) - ビクトリア州
マラ語派 (英語版 ) (Mara, Maric)[3]
Mbara
Muruwaric
Ngarinyeric-Yithayithic
Paman(英語版 )
Central Pama
Coastal Pama
Flinders Pama†
グーグ・イミディル語 (Guugu Yimidhirr)
Lamalamic
Mayabic
Mbariman†
Middle Pama (Wik)(英語版 )
Norman Pama
Northeastern Pama (Umpila)(英語版 )
Northern Pama(英語版 )
Rarmul Pama
Southern Pama†
Southwestern Pama (Western Pama)(英語版 )
Umbindhamuic†
Yir Yoront
South-West(英語版 )
Coastal Ngayarda(英語版 )
Inland Ngayarda(英語版 )
Kanyara(英語版 )
Malgana(英語版 )
Marngu(英語版 )
Mirning(英語版 )
Ngarrkic (Ngarga)(英語版 )
Ngumbin(英語版 )
Nyungar (Noongar)(英語版 )
ワティ諸語 (英語版 )
Yinggarda
Yura(英語版 )
Wagaya-Warluwaric(英語版 )
Waka-Kabic†(英語版 )
Warumungic
ウィラドゥリ諸語
Worimi
Yalandyic
Yanyuwan
Yidinic(英語版 )
Yugambal
Yuin
Yuulngu(英語版 )
ティウィ語 (英語版 ) - ティウィ諸島
Wagiman 語(英語版 )
Wardaman 語 (Yangmanic)(英語版 )
ウォロラン語族 (英語版 ) (Worrorran, Wororan)
角田太作 (1988)「オーストラリア原住民語」『言語学大辞典 』第1巻世界言語編上:. 三省堂.
ディクソン, R・M・W (英語版 ) (2001)『言語の興亡』大角翠 訳. 岩波書店. (The rise and fall of languages . Cambridge: Cambridge University Press. 1997).
Bowern, Claire and Harold J. Koch (eds.) (2004) Australian languages: classification and the comparative method . Amsterdam: John Benjamins.
Dixon, R. M. W. (1980) The languages of Australia . Cambridge: Cambridge University Press.
–––– (2001) The Australian linguistic area. In: Alexandra Y. Aikhenvald and R. M. W. Dixon (eds.) Areal diffusion and genetic inheritance: problems in comparative linguistics . Oxford: Oxford University Press.
–––– (2002) Australian languages: Their nature and development . Cambridge: Cambridge University Press.
『世界の言語と国のハンドブック』 下宮忠雄 (大学書林)