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シンセサイザーの一種 ウィキペディアから
アナログ・シンセサイザーは、シンセサイザーの中でアナログ回路を用いて音声合成を行う機種に対する呼称。
1920年代の電子工学の黎明期から一部の愛好家の間で低周波発振を利用した電子鍵盤楽器が製作されており、その後、1940年代から1960年代に電子工学の進展により、徐々に電子楽器への電子工学の普及が進み、改良が施された。電子鍵盤楽器製作の愛好家の一部は後にメーカーになった者もある。日本国内でも『初歩のラジオ』誌で1977年1月号から1978年3月号まで「ミュージック・シンセサイザーの回路から製作・徹底ガイド」が連載されるなど、一部の愛好家の間で自作された。1960年代半ばのシンセサイザー実用化以来、1980年代半ばまでのシンセサイザーはアナログ回路を用いたものだったが、技術の進展に伴い登場した安価で多機能なデジタルシンセサイザーの普及により、生産台数は減少した。しかし1990年代後半から、アナログ独特の音質と機能が再評価され、21世紀に入るといくつかの会社からアナログ・シンセサイザーが新たに発売された。発売終了後、数十年を経たミニモーグやプロフェット5などが銘機あるいはビンテージ機としてこだわりを持つミュージシャンに愛用されている。
デジタル音源の普及と共に一時期廃れていたが、近年、アナログシンセが各方面で見直され、各社から往年の名機の復刻や雑誌の特集でも取り上げらたり、関連書籍が出版されるなど、一部で復活の機運が高まりつつある[1][2]。
デジタル音源では得にくいような、太く温かい音が特徴である。
アナログシンセサイザーは、基本的に以下の回路で構成される。
音声信号を担当する機能は以下の3つである。
この3つの機能によって、倍音が豊かな基本信号からフィルター回路によって任意の倍音を抜き最後に音量を決定する。これを減算方式と呼ぶ。
その際に重要な点は、3つの機能が全て電圧(ボルテージ)で制御(コントロール)出来る様になっている事。これによって下記の制御信号を発信する回路から任意の電圧を加えて音程/音色/音量を制御する事が可能になった(詳細は制御の規格を参照)。
上の3つの機能を制御する回路は、主として以下のものがある。
上記の基本機能に加え、より多彩な音響合成を実現するために、下記のような追加機能を提供する機種もある。
モジュラー・シンセサイザーの場合は、パッチ・ケーブルにより各機能ブロックの任意接続が可能なので、より柔軟に音声信号に変調をかけることが可能である。
アナログシンセサイザーは、大別して2種類の情報を電圧として送受信する事で各機能を制御する。
電圧制御式の先駆的存在であるモーグ・シンセサイザーは、この制御電圧を「1オクターブ/1ボルト」と定義し、他のメーカーも概ねこれに倣った(MSシリーズ以前のコルグ等「周波数/ボルト」を採用した機種も存在する)。このため、シンセサイザーはメーカーの別に関りなく制御信号をケーブルで接続して混合使用する事が可能であり、任意のメーカーの鍵盤やシーケンサーで異なったメーカーの音源を制御する事も可能だった。
ただし単音1つにつき、CVとGATEの情報をそれぞれ別のケーブルで送る必要があった。そのため、配置や接続に必要な機材と手間は膨大なものとなり、精密機械であるシンセサイザーの接続であるがゆえのトラブルも少なくなかった。さらに、ポリフォニックシンセサイザーの登場で、送受信情報量が増加した。これらの状況に対して各メーカーはそれぞれ独自の対応規格を考案していたが、デジタル技術の進展に伴い、1983年にメーカー間の協議で「MIDI」が正式に規格化された。
1960年から1980年頃に製造されたアナログシンセサイザーは、気温の変化(厳密には、機体内部の熱変化による回路構成部品の特性変動)が回路に大きく影響したため、まるで管楽器や弦楽器のような演奏時の調律が必須であり、演奏者やスタッフの悩みの種となっていた。たとえば、初期のYMOのコンサートでは、開演の数時間前から本番と同様の照明を当てて、本番開始時に温度変化が生じないようにされた。その対策として、チューニングの自動化をしたもの(オートチューン)や発振器部分だけをデジタル化(デジタルコントロールドオシレータ、DCO)したものもあった。
1970年代後半にはポリフォニックシンセサイザーも登場した。だが、和音を出したり凝った音色を作るためには、必然的に高価で大規模な電子回路が必要となる。1980年代後半には、安価なデジタルシンセサイザーの発売により出荷台数は減少したが、アナログシンセサイザー自体の特徴的な音色や直感的な操作性はデジタル登場後も定評があり、その結果、アナログシンセサイザーとデジタルシンセサイザー双方の良さを集約したハイブリッド・タイプも登場している。
古いアナログシンセサイザーの音色に独特の暖かさや華やかさがあるとして、アマチュア・プロを問わず現在でも愛用する奏者は多い。だが、時代の変化につれ古いアナログシンセサイザーに用いられた電子部品が入手困難となり修理しにくい状況が発生している。純正部品が手に入らず「電子部品」として等価ではあるが、型番の違う別の部品を使用すると、修理の結果、元の物理的な特性が再現されず、性能・機能・「味わい」が薄れて「楽器」としては等価でなくなってしまうとして問題視する演奏者も少なくない。
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