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アセテート盤(Acetate disc)または録音盤(ろくおんばん)は、円盤式レコードの規格に準拠した、柔らかい合成樹脂などでコーティングされた金属製の録音用メディア[1]。セルロース盤[1]、ワックス盤[2]とも。
初期は亜鉛板にワックスエステルを塗布したものだった(蝋管と同様の層構造。特にワックス盤と呼称した場合はこれを指すことが多い)[2]。普及期のものは多くの場合、芯の部分はアルミニウムで、コーティング素材はニトロセルロース[1][2]かアセチルセルロース(セルロースアセテート)、あるいはアルマイト皮膜[3]であった。アセテート繊維は含まれていない。
SPレコード準拠の10インチ録音盤の場合、SPレコードの再生時間とほぼ同量の片面約3分の録音が可能だった。1940年代後半以降、長時間録音をはかるために、16インチなど、より大きな規格の録音盤が開発されたが、磁気テープの普及に押され、原盤制作の現場以外では一般化しなかった[2]。
流通用・再生専用のパッケージであるシェラック盤やビニール盤よりも強度が弱く、湿度や経年変化により表面剥離などが起きやすい。また、針による摩耗が容易に起きるため、再生回数に制限があった[1](1938年時点の国産品の性能では、約30回の再生でノイズ量が市販SPレコード並みになったとされる[2])。また物理的な記録であることから録音データの記録・劣化は不可逆であり、データの上書きやリセットは不可能である。
レコードの生産において、流通盤を製造する前段階に、音質参照および、複製の元(マスターディスク=金型)の作成のために用いられる。この場合「ラッカー盤」と呼ばれる。
ラッカー盤は、録音された音が最終的にどのようにレコードに移されるかを決定する際に重要である。マスターディスクを決定するまでに、その都度音質や音量を変更するなどして、試験的に何枚も作成される。
安価で素早く、高音質で制作できたため、宣伝(プロモーション)目的盤や、音楽イベント(レゲエにおけるサウンド・システムなど)用の編集済み音源として用いられた。
1960年代後半より、ジャマイカのDJやプロデューサーが、アセテート盤に吹き込んだオリジナルの音源をレコード会社などに特注で作らせ、主催するダンスパーティ(サウンド・クラッシュ)等で人気を競ったことが知られ、このような目的のアセテート盤を特にダブ・プレートと呼ぶ。アセテート盤が一般的でなくなると、以上のような用途の媒体はビニール盤やCD-ROMなどに切り替えられていったが、「ダブ・プレート」の語のみが名残として残った。アセテート盤での制作はもっぱらコレクターのために行われるようになった。
日本では、とりわけ初期のラジオ放送において、番組の収録素材として用いられた。光学録音(トーキー映画に用いられる技術)、磁気録音(ワイヤーレコーダー、磁気テープ)などはいずれも開発途上[1]であり、利用しうる唯一の音声記録媒体であった。アセテート盤による収録番組の代表的なものに、終戦時の玉音放送がある[2]。
日本では戦前に、少数ながら、カッティング録音のための部品が民生向けに流通し、特注ないし自作によって録音を行っていた記録がある。
戦後の1949年、日本電気音響(のちのデノン)が民生用のポータブル円盤録音機「デンオン RC-1」を発売したものの、安価なオープンリールテープが登場したため、普及にいたらなかった[2]。
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