とんぶり
ホウキギの実 ウィキペディアから
とんぶりは、アカザ科ホウキギ属[1]の一年草であるホウキギ(学名: Bassia scoparia[2]〈シノニム: Kochia scoparia[3]〉ホウキソウ、ホウキグサ)の成熟果実を加熱加工した食品の、日本語での名称である[4]。
日本では1,000年以上前に中国から薬用植物として渡来したといわれ[5]、民間療法で用いる生薬の一つであったが、現代では日本文化における食品の一つとして用いられることが多くなった。
概要
ホウキギの成熟果実を加熱加工した食品である[6]。直径1 - 2ミリメートル程度の粒状で、味は無味無臭だが、プチプチとした歯触りを楽しむ食材として使われることが多く、「畑のキャビア」とも呼ばれる[6]。
ホウキギはホウキに加工するために日本各地で栽培されていたが、次第に衰退した[6]。とんぶりは、加工が難しいことなどから日本国内の他地域では生産が普及しておらず、秋田県大館市のみで栽培、生産が継続して行われている[6]。大館とんぶり(おおだてとんぶり)は、秋田県大館市の特産食材である。
漢方医学では地膚子(日本語読み:ぢぶし、じふし)と呼ばれ[7]、主に利尿と強壮を薬効とする生薬として扱われた。とんぶりのスコパリアノシド (scoparianoside) 類とコチアノシド (kochianoside) 類には、小腸でのグルコースの吸収抑制等による血糖値上昇抑制活性が認められた[8]。
呼称
「とんぶり」の名称の由来については諸説あるが、唐から伝来した「ぶりこ」(ハタハタの卵)からついた呼び名『とうぶりこ』が転訛したものとする説が有力である[7]。
食べ方
さっと熱湯にくぐらせてから、酢の物、酢味噌和え、粘りのある食材(納豆・ナメコ・とろろなど)と合わせて食べる[5]。
ご飯や豆腐に乗せて食したり、細く切ったキュウリやツナと混ぜて食されることが多い[7]。他にもパスタ料理に使用されるなど、料理のジャンルを問わずに利用されている[7]。
歴史
ホウキギの原産地は中国、南アジア、ヨーロッパであり、日本へは平安時代に渡来したとされる[5][7]。
秋田県大館市の周辺地域では江戸時代からホウキギの果実を食用とする習慣があり、現代までその文化は続いている[7]。もっぱら各農家で自家消費用に製造して食していたと考えられているが、1973年に大館市にとんぶり加工場が作られたことで、商品として安定した出荷が行われるようになった。当初は地方色の強い食材であり、秋田県など東北地方で食べられてきたが、真空パック品が製造されるようになって、流通が拡大されたことで入手も容易になり[5]、大館のとんぶりは日本全国的に周知されるようになった[6]。
2017年に「大館とんぶり」が秋田県初の地理的表示(GI)として登録される[7]。
ピークの1988年には、生産量は418トン、生産農家は138戸あったが、以降は減少し、2018年時点では生産量は54トン、生産農家は7戸だった[7]。さらに2023年度には生産農家は5戸まで減少[9]。同年度は天候の影響もあり、生産量は20トン余りに落ち込んだ[9]。生産者減少への対策として、大館とんぶり生産組合は旧比内町以外の農家への栽培技術指導を解禁し、2024年度には地域外で新規に2戸が栽培を開始した[9]。
生産
大館市の中でも比内地域(旧比内町)でのとんぶり生産量が多い[7]。他地域産のとんぶりが市場で流通しているという情報はなく、流通しているものはすべて大館市産と考えられている[6]。
比内地域は山に囲まれた地形であり、風によって成熟したホウキギ果実が落ちることが防げることと、豊富な湧き水に恵まれているため、とんぶりの加工に必要な水を確保できることが、この地域にとんぶり生産、加工の文化が根付いた要因である[6][7]。
また、比内地区の多くはコメ農家であるため、冬期の収入減を補うため、とんぶりの生産を始めたという経緯もある[7]。
- 4月下旬からホウキギの種まきを行い、定植や開花を経て、9月から10月上旬に成熟した実を収穫する。
- 1週間ほど天日や乾燥機で乾燥させる。
- 釜で乾燥した実を十分に煮て、24時間湯温でふやかす。
- 実を揉んで果皮(外皮)を取り除き、脱水する。
栄養価
栄養素はカロテンが可食部100グラム中に800ミリグラム含まれ、鉄、マグネシウム、ビタミンB群、ビタミンK、葉酸、食物繊維も多く含まれている[5]。
参考文献
- 講談社編『からだにやさしい旬の食材 野菜の本』講談社、2013年。ISBN 978-4-06-218342-0。
出典
関連項目
外部リンク
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