G0期
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G0期(英: G0 phase)は、細胞周期の外部に位置する細胞状態である。G0期は栄養素の欠乏など増殖に必要な資源の制限によって引き起こされる段階であり、resting phaseと呼ばれる休止段階であると一般的に考えられていた。現在では、G0期にはさまざまな状態が存在すること、また複数の理由でG0期への移行が起こることが知られている。例えば、成体の神経細胞の大部分は体内で最も活発に代謝を行う細胞の1つであるが、完全に分化したterminal G0 phaseと呼ばれる状態で存在する。神経細胞は、確率的要因や栄養素の供給不足のためでなはく、内部の遺伝的プログラムによってこの状態となっている。
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![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/d/db/Gray626.png/200px-Gray626.png)
G0期と呼ばれる細胞状態の存在は、細胞周期の初期の研究において初めて示唆された。放射性同位体ラベリング技術を用いて細胞周期の4つの段階が定義されたとき、細胞集団のすべての細胞が同じ速度で増殖するわけではないことが発見された[1]。集団の一部は活発に増殖したが、他の細胞は非増殖状態のままであった。この非増殖細胞のうち、一部は外部刺激に応答して細胞周期の進行を再開し増殖を行った[2]。当初は単にG1期が延長された状態であるという見方と、G1期とは異なる状態であるという見方が存在した[3]。その後の研究によって、G1期のR点(制限点)の存在が指摘され、R点の通過より前の細胞はG0期へ移行することができるが、R点を通過した細胞は有糸分裂に従事することが示された[4]。これらの結果によって、G0期と呼ばれるアクセスが制限された状態の存在の証拠が得られた。これら分裂を行わない細胞はG1期を脱出し、静止期(quiescent stage)と呼ばれる不活性な段階へと移行する。