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電気配線を用いた通信方法 ウィキペディアから
電力線搬送通信(でんりょくせんはんそうつうしん)は、電力線を通信回線としても利用する技術。電力線通信、電灯線通信、高速電力線通信、高速PLC、英語: PLC (Power Line Communication)、PLT (Power Line Telecommunication)、BPL (Broadband Over Power Line)とも呼ばれる。
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電力線を通信回線としても利用する技術。450kHz以下の周波数を用いるものを「低速PLC(ナローバンドPLC)」、2 - 30MHzを用いるものを「高速PLC(ブロードバンドPLC)」と呼ぶこともある。このうち、10kHzから450kHzまでの周波数を用いた低速PLCは、1987年(昭和62年)に法制度が整備され、その最大伝送速度は、数kbps - 128kbpsである[1]。一方、日本でのブロードバンド電力線搬送通信については、e-Japan戦略におけるブロードバンドインターネット接続の一環として、2001年(平成13年)から2002年(平成14年)にかけて、最初の研究会[2]を総務省が開催し、主に電柱から建物へのラストワンマイル解消のため、電力会社の架空電力線を活用する屋外PLCの実用化を検討した。
しかし、当時開発されていた高速PLCでは航空管制や短波放送等の無線通信に対する有害な混信源となり得ることから、使用周波数帯の拡大は見送られ、研究開発等を継続することが必要との提言がなされた。これを受け2004年1月に高速電力線搬送通信設備に関する実験制度[3]が導入され、高速PLCの研究開発および既存の通信・放送との共存の研究開発が継続された。
とその後、総務省は、高速電力線搬送通信設備の研究会[4]や作業班[5]を立ち上げ、規制緩和の議論が進み、2006年(平成18年)10月に、屋内に限り2MHzから30MHzの周波数使用を認める項目を追加する省令改正をしたのを受け、対応製品が流通、2013年(平成25年)には、屋外利用(屋内電気配線と直接に電気的に接続された屋外電力線に限る)が制度化され、住宅内のホームネットワーク用途から、ビル・工場の電力線を活用した機器制御や監視用途へと広がりを見せている。
電力線搬送通信に用いられる変調方式として、以下の物が使用されている。
電力線搬送通信機器は、「有線LAN-電力線-有線LAN」という経路の中継器(ブリッジ)として機能するモデムである。電力線通信は、機器を既存のコンセントに挿すだけで簡単にネットワークを構成できる。
日本国内において利用可能な高速電力線通信機器の規格は以下のとおり。
ブロードバンドインターネット接続として電力会社の屋外電力線を使用する高速電力線搬送通信はAccess BPL (Access Broadband over Power Lines) と呼ばれている。当初(2002年)日本においても、電柱から建物内へのラストワンマイル対策、ブロードバンドインターネット接続の引き込み線として、電力会社の架空電力線を使用する形態での利用が考えられていたが、架空電力線からの漏洩電磁波レベルが大き過ぎ短波に影響を与えることから、実用化は見送られた。その後各種ブロードバンド回線が急速に普及したため下火となった。
日本国内での電力線搬送通信は屋内利用に限られているが、有線LAN(イーサネットケーブル)や無線LANと共に、Local Area Networkの一つとなっている。一般家庭向けの製品や、ビルや集合住宅内、工場内で回線を引き回す用途として、各社からPLC製品が販売されてきた。
無線通信は遮蔽物による通信障害に弱いことから[8]、その補完として2020年代頃より再注目されている。IoT時代を迎えその対応に向けて、通信性能の向上と長距離化技術を新たに取り入れたIEEE 1901-2020が標準規格化されたことで、これまでの民生分野のみならず、広域利用を求める各産業分野から幅広く注目を集めており、特に産業分野では、無線や有線の通信技術を組み合わせ活用することで、これまで以上に生産性の効率化や現場の見える化など新たなビジネスモデル利用「インダストリー4.0」の実現を目指している。これらの課題を解決する手段として専用線などの有線通信活用があるが、既設構造物に対して構造上や外観上、或いは工期上の制約など新規に配線する場合、導入困難な事が少なくない。このような状況の下、高速PLCが採用される事例が増えている[9][10]。
屋内において2MHzから30MHzまでの周波数の搬送波により信号を送受信する、「電力線搬送通信」(広帯域電力線搬送通信)を実用化するにあたり、総務省の「高速電力線搬送通信に関する研究会」[4]「情報通信審議会」[11]「電波監理審議会」[12]での議論・審議を経て、段階を経ながら規制緩和が実施されてきた。それぞれの状況については以下のとおりである。
2005年1月31日から同年12月22日までの間、屋内利用を前提に高速電力線通信機器と既存無線利用(アマチュア無線・短波放送など)との共存条件を検討するため、12回開催された。 最終報告書において「機器が発生するコモンモード電流は、周波数2メガヘルツから30メガヘルツまでの範囲において、コモンモードインピーダンス25Ω、線路の平衡度 (LCL) 16dBのインピーダンス安定化回路網 (ISN) を用いて帯域幅9キロヘルツで測定したとき、30dBμA(準尖頭値)以下であること」との許容値案が示された。
2006年1月23日から同年6月29日までの間、高速電力線搬送通信設備に係る許容値及び測定法について審議され
等漏洩電磁波を周囲の雑音以下にする答申「PLC機器が発生するコモンモード電流は、2MHz - 15MHz : 30dBμA (31μA)、15MHz - 30MHz : 20dBμA (10μA)」の許容値案が示された。なお、この際に仮定された周囲雑音レベルは、2MHz - 15MHz : 28dBμV/m、15MHz - 30MHz : 18dBμV/m であった。
その後、高速電力線搬送通信設備作業班においては、①事業者等からの具体的提案の集約 ②漏えい電波低減技術の効果の検証 ③無線利用との共存可能性・共存条件の検討 ④その他関連する事項の審議が行われている。
2011年3月11日から2012年6月4日まで、
同一敷地内に設置される高速PLC設備間で通信を行うものであって、屋外(分電盤※より負荷側)に設置された高速PLC設備に係る許容値及び測定法について審議され、2012年10月19日情報通信審議会により答申「屋外PLC設備が発生するコモンモード電流は、屋内PLC設備より10dB低い、2MHz - 15MHz : 20dBμA 、15MHz - 30MHz : 10dBμA 」の許容値案が示された。
※同一施設内に複数の分電盤が存在する大規模施設の場合、各分電盤を集約した施設全体の分電盤を指す。
2017年10月20日から2019年4月25日まで、
高速PLC設備の三相電力線での使用および鋼船内での使用に係る審議が行われた。
2019年7月23日情報通信審議会により答申「PLC 設備を接続できる電力線として、600V 以下の単相及び三相交流用電力線の利用も可能とすることおよび鋼船における屋内用PLC 設備の利用を可能とすること。」の使用範囲の拡大案が示された。
2006年7月12日から同年9月13日までの間、「電力線搬送通信設備の技術基準等の整備のための、無線設備規則の一部を改正する省令案」の審議が行われ、「高速PLC設備の設置申請が個別にあった場合は、慎重に審査すること」「万が一混信が生じた場合には、迅速に対応できる体制の整備に努めること」「漏洩電波に関して、国際規格などが改定された場合には、必要に応じて技術基準を見直すこと」の付帯条件を付して、改正省令案が妥当であると答申した。
このような経緯を経て2006年10月4日、「無線設備規則の一部を改正する省令」「電波法施行規則の一部を改正する省令」が公布され、同日付で施行となった。
2013年3月13日 - 同年4月10日
屋内においてのみ認められている「広帯域電力線搬送通信設備」の利用範囲を屋外(分電盤から負荷側)に拡大するため、新たな技術基準を設けるものに関し審議の結果、諮問のとおり(コモンモード電流の許容値をは屋内PLC設備より10dB低いものとする)改正することは適当との答申がなされた。
2021年3月10日
「PLC 設備を接続できる電力線として、600V 以下の単相及び三相交流用電力線の利用も可能とすることおよび鋼船における屋内用PLC 設備の利用を可能とすること。」の使用範囲の拡大案に関し、審議の結果、諮問のとおりに改正することは適当との答申がなされた。
日本国内における電力線搬送通信 (PLC/BPL) の実用化にあたり、推進派[誰?]と非推進派[誰?]間で下記の点についての主張がなされている(BPL 2002年 - 、PLC 2005年 - )[要出典]。
ナローバンドPLCによる家電製品の制御としては、X10が1970年代からあり、欧米で使用されている。家庭用PLC機器は、2000年前後から欧米を中心に流通している。
PLCを利用した、ブロードバンドインターネット接続であるアクセスBPL (Broadband over Power Lines) は、電磁環境に及ぼす悪影響への懸念に対する配慮から、小規模な試験サービスや、地域限定での商用サービスにとどまっている。
アメリカ合衆国では、アメリカ無線中継連盟 (ARRL) が数回にわたり陳情を出し、2004年10月に連邦通信委員会 (FCC) に通信との干渉対策として、利用可能な周波数帯域を80MHzまで拡大した規制緩和が行われ、地域ごとに既存無線局と干渉しない周波数帯を利用できるようにした。その一方で、既存の無線通信への影響を避けるために、電力線搬送通信装置のデータベースへの登録義務を定め、BPLの使用禁止周波数、使用禁止地域などの措置を新規に採用した[32]。
日本のように、都市部に人口が集中し、ブロードバンドインターネット接続サービスが広く普及しているのとは異なり、土地が広いアメリカ合衆国などにおいては、基地局から各家庭の近くまで光ファイバー等の通信網を張り巡らせ、変圧器などの装置から家庭まで、ラストワンマイルの数mから数十mまでの短い距離を、電線で搬送するタイプのBPLが用いられる。
ヨーロッパの場合を述べる。スウェーデンでの実証実験では、手軽に利用できるという肯定的な意見がある一方、家電製品の使用状況によっては通信できない場合もあるため、使いづらいという否定的な意見も出ている。2003年にまとめられたECCレポートにおいて、電力線からの漏洩電界がCISPR22 ClassBだとしても、大きな干渉問題を引き起こすことが指摘された[33]。その後、2004年から2008年までOPERA (Open PLC European Research Alliance) というプロジェクトが、欧州連合の「PLCフォーラム」の支援下でBPLの商用化研究を推進している。
NATO軍(北大西洋条約機構)の研究技術機構 (RTO) は、技術報告を公表し、その中でイギリスやドイツでの実測値を基に、1970年代のアメリカ合衆国での測定に基づく、ITU-R勧告P.372-9 に示された、環境雑音の値はヨーロッパではいまだ適切であること、無線通信やCOMINT(Comminication Intelligence;通信傍受による情報収集)の確保のためには、同勧告の"Quiet Rural"(静穏な田園地域)の値より1 - 10dB低いレベルでの規制が必要なこと、PLTはxDSLに比べ多大な混信問題を引き起こすことなどを主張し、絶対防護要求はPLCからの漏洩電界強度として-15dBuV/mであるとしている[34]。
大韓民国では、漏洩電界による規制値を定めた上で、短波帯電力線搬送通信の利用が解禁されている。アマチュア無線バンドについては、屋内外共にPLCの使用が禁止されている。同様に、航空無線用の周波数は屋外に限って、PLCが使用できない周波数に指定、漁業無線局の近傍ではPLCは漁業無線用周波数を使用することができない。
米国の法制度[35]
FCC(連邦通信委員会)においてFCC 規則 part 15 に、Access BPL およびIn House BPL の許容値等が定められている。
非通信時は、マルティメディア機器の技術基準であるCISPR 32 に準拠したものとなっている。
通信時は、In-situ testing を行う。In House BPL では、実住宅3軒を用い、住宅の壁から周囲の30m点において、PLC起因による漏洩電界強度が30μV/m以下であるかを評価する。
FCC Part 15 Subpart Gにて許容値等の詳細が決められている。
通信時は、In-situ testing を行う。実架空線3カ所を用い架空線からの実距離30m点において、PLC起因による漏洩電界強度が30μV/m以下であるかを評価する。
Subpart G で以下の運用条件等も規定されている。
欧州標準規格EN 50561-1[36]が発行されており、その許容値は、基本的にはマルティメディア機器の技術基準であるCISPR 32[37]に準拠したものになっているが、通信時の電源端子の伝導妨害波については、下記の技術導入が求められているのが特徴的となっている。
1990年代には既に導入がなされていたことから、許容値の明確化は見送られ、委員会勧告
COMMISSION RECOMMENDATION of 6 April 2005 on broadband electronic communications through powerlines[38]
が発行されている。次のような概要となっている。
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