防火帯(ぼうかたい、英語:firebreak)とは、防災上設けられる延焼被害を食い止めるための帯状の地域。
都市の防火帯(延焼遮断帯)は、河川、道路、鉄道、公園などの公共施設を軸に、そこに耐火建築物群や空き地などを保全・建設・誘導し、市街地火災を食い止めるための帯状の領域をいう[1]。大規模地震などによる同時多発性火災の被害を局限化するため、市街地大火の危険性の高い地域を防火帯(延焼遮断帯)でネットワーク状に分割する手法を防火ブロック(防火区画)という[1]。
英国における歴史
近代防火体制の基礎は1666年のロンドン大火後にイギリスで始まったとみるのが一般的である[2]。チャールズ2世は仮設建築の促進等で人心の安定を図るとともに、無断建築の禁止、木造建築の厳禁、建築物の規格化、融資制度、税制改正などとともに、焼跡地の整地と都市計画の策定も実行した[2]。
日本における歴史
防火建築帯
街の防火を目的に、1952年(昭和27年)、耐火建築促進法が法律第160号で施行され、この法に基づく防火建築帯造成事業が開始される。都市の中心部に地上3階以上 高さ11メートル以上の耐火建築物が帯状に建設された防火帯を作ろうという目的で、防火建築帯は長屋形式の共同商店建築を成していた。都市の不燃化のみならず、共同化による都市の高度利用をも目的とし、日本の市街地改造の系譜の中で初期の試みという位置づけがなされている。鳥取大火の復興に初めて適用され、3327m の防火建築帯が造成された。防火建築帯造成事業は制定後各地の大火復興で用いられ、1953年の大火の復興にあたって893mの防火建築帯を造成した大館市では、1956年の大火でその効果を発揮した。大阪などでは大阪における集合住宅形成史005にあるとおり、中高層建築物融資と併存住宅について 耐火建築・都市の不燃化を促進をすすめた。
耐火建築促進法による防火建築帯はその後、1957年(昭和32年)に制度化された住宅金融公庫の中高層耐火建築物に対する融資とともに吸収発展し、1961年(昭和36年)防災建築街区造成法に引き継がれ、これに基づく防災建築街区造成事業が開始される。ここからこうした事業は帯状の線的な開発から面的な開発へ移行し、市街地改造法とともにその後法整備が行われ、1969年にはこれらが統合されるかたちで都市再開発法(法定再開発)が施行され、現在に至っている。
森林・林野では山火事を防ぐために森林の一部を帯状に切った地域をいう[3]。特に土地の利用上の目的で行われる火入れでは、その火が火入れ地の外に出ないようにする境界線の役割を果たす[4]。また、火入れ地の内部に設けられる防火帯は火勢のコントロールに利用される[4]。
防火帯には河川や稜線など自然にある地形地物を利用したものと植物の刈り取りや焼き切りなどによって人為的に作られるものがある[4]。
火に強い樹種もあり、日本では森林法で定められる防火保安林として管理されることがある。
- 都市不燃化運動史 (1957年) 都市不燃化同盟 (著) ASIN: B000JAVSNE
- 岡田春輝 , 岡田昭人 , 阿部俊彦 , 米田諭史 , 佐藤 滋 7174 鳥取市における防火建築帯再生に関する研究(1-4) : 床利用の変容実態と利活用の可能性(中心市街地における防災,都市計画) 学術講演梗概集. F-1, 都市計画, 建築経済・住宅問題 2010
- 佐藤晋太郎 , 円満隆平 , 村田裕子 7332 防災建築街区再生の試み : 富山県氷見市を例として(市街地変容:再開発・商店街,都市計画) 学術講演梗概集. F-1, 都市計画, 建築経済・住宅問題 2009
- 初田香成 9167 沼津本通防火建築帯について : 都市不燃化運動の地方都市における事例研究(都市史:日本近代(2), 建築歴史・意匠) 学術講演梗概集. F-2, 建築歴史・意匠 2006
- 亀井幸次郎 都市計画の防火的効果と防火地域または防火建築帯指定への基本的条件に関する実証的研究 (防火) (学位論文要旨) 建築雑誌. 研究年報 62, 263, 1962
- 亀井幸次郎 防火地区又は防火建築帯指定えの理論と実際 新都市 15(8), 35-38, 1961
- 亀井幸次郎 防火地区または防火建築帯指定への理論と実際 新都市 15(5), 11-21, 1961年4月号
- 浜田 稔 4039 防火建築帯の効果判定基準 : 大火防止効力からの観点(都市計画・建築経済・防災) 日本建築学会論文報告集 (63-2), 497-500, 1959
- 藤田金一郎 , 亀井幸次郎 , 谷 重雄 主題・防火建築帯の経済的効果 (防火部会 (昭和33年度四国大会・研究協議会)) (四国連合大会特集) 建築雑誌 74(867), 29, 1959年2月号
- 浜田 稔 防火建築帯の効果判定基準 日本火災学会論文集 9(1), 1959年10月号
- 谷 重雄 4039 防火建築帯の投資効果について(都市計画・経済・防災) 日本建築学会論文報告集 (60-2), 1958年
- 河合正一 , 緒形昭義 , 速水祥二 4008) 足貸上部アパート群の実態調査 : 横浜市における足貸アパートの研究(2)(都市計画・経済・防災) 4007) 足貸脚部商店群の実態調査 : 横浜市における足貸アパートの研究(1)(都市計画・経済・防災) 日本建築学会論文報告集 (60-2), 1958年
- 藤岡泰寛 , 大原一興 , 小滝一正 買取権付き市街地共同住宅における生業隣接型居住の実態と共同建築手法に関する考察-住商併存の共同化建築に関する研究 その1-日本建築学会計画系論文集565号 2003年3月
- 碓井憲一 都市不燃化と防火建築帯 セメント (67), 3-9, 1956年4月号
- 小宮賢一 防火建築帯の造成とその効果 市政 5(10), 61-68, 1956年10月号
- 松下喜一 沼津市防火建築帯の造成 (〔行政〕) (昭和30年度春季大会特集) 建築雑誌 70(824), 16-17, 1955年7月号
- 沼津市本通防火建築帯 建築界 4(1), 1955年1月号
- 村井 進 二年間の防火建築帯の動き 火災 4(3), 113-117, 1954年12月号
- 松下喜一 沼津市本通防火建築帯 火災 4(3), 106-112, 1954年12月号
- 浜田 稔 沼津市防火建築帯視察記 火災 4(3), 104年10月号6, 1954年12月号
- 鳥取県建築課 烏取市防火建築帯について 火災 4(3), 1954年12月号
- 池口 凌 鳥取市火災復興に於ける防火建築帯の造成 (都市不燃化特集) 建築雑誌 68(801), 41-47, 1953年8月号
- 堀内亨一 東京都におけう防火建築帯の実施状況 (都市不燃化特集) 建築雑誌 68(801), 36-40, 1953年8月号
- 小食 強 [他] 「防火建築帯に建つ店舗付共同住宅」競技設計審査報告 建築雑誌 68(799), 1953年6月号
- 大阪市防火建築帯図 建築と社会 33(12), 1952年12月号
- 村井 進 防火建築帯造成の計画まで 新都市 6(5), 14-17, 1952年5月号
- 東京都防火建築帯指定図 (1953年) 東京都建築局 東京復興土地住宅協会
(各地のおもな防災不燃化事業)
- 和歌山都市計画事業、復興土地区画整理事業 準防火地域 - 和歌山市
- 柏駅駅前商店街耐火建築商店街(昭和31年~36年) - 柏市
- 末広町防火建築帯(昭和30年~32年) - 高岡市
- 魚津火災復興土地区画整理事業(昭和32年) - 魚津市
- 防火建築帯造成事業(昭和35年) - 射水市
- 防火建築帯造成事業(昭和35年度完了) - 浜松市
- 防火建築帯造成事業(昭和36年度完了) - 磐田市
- 高岡駅南ビル防火建築帯(昭和36年) - 高岡市
- 耐火建築促進事業(昭和38年度完了)、防災建築街区造成事業A(昭和46年度完了年) - 静岡市
- 水戸駅前第一防災街区造成事業(昭和44年度完了年) - 水戸市
- 氷見市中央町防災建築街区造成事業(昭和47年) - 氷見市
- 下町火災復興土地区画整理事業(昭和48年) - 黒部市
- 中央通り防災建築街区造成事業 - 小矢部市
- 上市町西中町第1種市街地再開発事業 - 上市町
- 高岡駅南土地区画整理事業(昭和50年) - 高岡市
- 本町防災建築街区造成事業(昭和50年度完了年) - 和歌山市
- 防火建築街区造成事業(昭和54年度完了年) - 伊東市
- 防災建築街区造成事業(昭和51年)出町地区土地区画整理事業 - 砺波市
- 和歌山都市計画新南第二地区区画整理事業 - 和歌山市
- 仙台市清水小路多賀城線新寺小路地区都市防災不燃化促進事業(平成3年度完了)
- 鹿島神宮駅周辺北、東山地区(平成8年) - 鹿嶋市
- JR潮来駅東側あやめ東地区(平成8年) - 潮来市
- 高岡駅前ビル建設事業(平成13年) - 高岡市
- 仙台市国道45号小田原地区都市防災不燃化促進事業(平成9~平成25年度事業中)
- 牛久駅西口地区第一種市街地再開発事業・牛久駅東・牛久北部 - 牛久市
- 伊奈・谷和原丘陵部一体型特定土地区画整理事業 - つくばみらい市・水海道都市計画事業分、伊奈都市計画事業分
- 守谷駅周辺一体型土地区画整理事業 - 守谷市