調和平均
平均の一種 ウィキペディアから
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数学において、調和平均(ちょうわへいきん、英: harmonic mean, subcontrary mean)とは、いくつかある広義の平均のうちの一つである。典型的には、率(割合・比率)の平均が望まれているような状況で調和平均が適切である。
正の実数について、調和平均は逆数の算術平均の逆数として定義される。例えば、3つの数 1, 2, 4 の調和平均は次のようになる:
正の実数 x1, x2, …, xn について、調和平均 H は
と定義される。これは逆数の算術平均の逆数であり、
と書ける。
重みの集合 w1, w2, …, wn が伴ったデータ集合 x1, x2, …, xn について、重み付き調和平均 (weighted harmonic mean) を考えることができ、次で定義される:
重み付き調和平均で重みがすべて 1 の特別な場合が、上で定義した(通常用いられる)調和平均である。重みがすべて等しい任意の集合に対する重み付き調和平均は、調和平均に等しい。
調和平均は一般化平均でパラメータを −1 とした特別な場合 (M−1) であり、また3つのピタゴラス平均の一つである。ピタゴラス平均の残る2つは算術平均 (M1) と幾何平均 (M0) である。
調和平均は、典型的には率や比に対する平均を考える場合に適切である。例えば速度の平均を計算することを考えると、乗り物がある距離を時速 60 km で走りそれから同じ距離を時速 40 km で走った場合、全体の走行時間と走行距離から求められる平均速度は調和平均の値である時速 48 km であって、算術平均によって求められる時速 50 km を平均とするのは適切ではない。もっとも、調和平均が適切な場合でもしばしば誤って算術平均が用いられる[1]。
正の実数の集合に対して、調和平均を H, 算術平均を A, 幾何平均を G とすると、3つの平均の間には関係 H ≤ G ≤ A が成り立つ。平均を取る数の値がすべて等しいとき、かつそのときに限り、3つの平均は等しくなる。
また、2数 x1, x2 について考えると、調和平均は
と書ける。この場合算術平均は A = (x1 + x2)/2, 幾何平均は であるから、
という関係が成り立つ。これは とも書け、2つの数の幾何平均は算術平均と調和平均の幾何平均に等しいということである。
この関係は n(データ集合の大きさ)が3以上の場合に拡張することができ、一般の場合の関係は次のようになる:
この関係式は調和平均の定義式を変形した式
から導かれる。
3つの数の平均では次の関係が成り立つ[2]:
物理学では、ある状況において、特に率や比を含む多くの状況において、調和平均は最も適切な平均を提供する。
例えば、乗り物がある距離を速度 x(例えば時速 60 km)で走りそれから同じ距離を速度 y(例えば時速 40 km)で走ると、平均速度は全距離を総走行時間を割ったものになるが、これは x と y の調和平均となる(時速 48 km)。調和平均が適切でない場合もあり、例としては、乗り物がある時間速度 x で走りそれから同じ時間速度 y で走る場合が考えられ、その平均速度は x と y の算術平均となる(同じ例では、時速 50 km)。3つ以上の異なる速度で走った場合でも同様となる。
異なる例として、2つの電気抵抗を接続することを考える。抵抗 x(例えば 60 Ω)と抵抗 y(例えば 40 Ω)とを並列に接続すると、その効果は x と y の調和平均 (48 Ω) に等しい同じ2つの抵抗を並列に接続した場合と同じである(合成抵抗の逆数が x の逆数と y の逆数との和に等しくなる)。また、この抵抗を直列に接続すると今度は x と y の算術平均 (50 Ω) に等しい抵抗を直列に接続したものと同じ効果となる(合成抵抗は x と y の和に等しい)。
このほかに調和平均を用いるのが適切な例としては、コンデンサを直列に接続する場合などが挙げられる。
なお、率や比を扱う場合でも重み付き平均を考えることが適切になることがあり、速度の例では複数の速度で異なる時間・異なる距離を走った場合が該当する。
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