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経路依存性(けいろいぞんせい、英: path dependence)は人々が過去の状況下でおこなった決定の集合が、現在の選択肢に強い制約をもたらすことを指摘する概念である。[1]
経済学と社会科学において、経路依存は時間内の単発の結果またはプロセスの長期均衡のどちらかを指す。通常の使われ方では、経路依存性は以下のどちらかを指す。
Aの用法による「歴史は重要である」という命題は、多くの状況で自明である。なぜなら、すべての出来事には原因があり、異なる原因は異なる結果をもたらすことがあるからである。この用法は、「将来的なシステムの発展は、過去の道筋に影響を受ける」、あるいは逆の表現として「過去の特定の出来事は将来に影響を及ぼす可能性がある」ことを表現する。
より狭い概念であるBは、Aをふまえ更に深い妙味を指摘する。不完全な先見性をもって起きた過去の出来事や意思決定が、収穫逓増や正のフィードバックなどのメカニズムを通じて、将来の時点からみて「望まれざる」発達をたどること、それにより将来何らかの意味で非効率な状態に至るダイナミクスを論じるものである。
この記事では、Bを念頭に解説する。
経路依存性理論はもともと経済学者が技術適応プロセスと産業進化を説明するために開発された。理論的アイデアは進化経済学に強い影響を与えた。[4]
経済プロセスが一定の事前決定されたユニークな均衡に向かって着実に進まない多くのモデルや経験的ケースがあるが、達成される均衡の性質は部分的にそこに到達するプロセスに依存する。したがって、経路依存プロセスの結果は、多くの場合、固有の平衡に向かって収束することはなく、代わりにいくつかの平衡(時には吸収状態として知られる)の1つに到達する。
この経済発展に対する動学的見解は新古典派経済学の伝統とは大きく異なる。新古典派の最もシンプルな見方では、初期の条件や一時的な出来事にかかわらず一つの結果だけが可能性としてもたらされるとした。ところが、経路依存性があると、スタート地点と「偶然」の出来事(ノイズ)が最終的な結果に対して大きな影響を持つ。次の例のそれぞれにおいて、不可逆的な結果を伴って進行中のコースを邪魔したいくつかのランダムなイベントを特定することができる。
LiebowitzとMargolisは経路依存性をいくつかのタイプに区別する。[3] 非効率性を示唆しないタイプもあれば、新古典派経済学の政策的含意に合致するタイプもある。この中で「最も深刻な(third-degree)」経路依存性だけが新古典派経済学に異を唱える(この場合、切り替えの利益が大きく、移行は現実的ではない)。彼らは、理論的な理由からそのような状況はまれであり、現実の世界において、私的ロックインの非効率性は存在しないとする。[14] VergneとDurandは、経路依存性の理論を経験的にテストできる条件を特定することによりこの批判を適切であるとした。[15]
技術的には、経路依存性の確率過程は、過程(プロセス)自身の歴史の結果(関数)として発展する漸近分布を持つ。[16] これは非エルゴード確率過程とも呼ばれる。
エディス・ペンローズは、『会社成長の理論』(The Theory of the Growth of the Firm)(1959)の中で、有機的そして買収を通じた会社の成長がその会社の経営者の経験とその会社の発展の歴史に強く影響されていることを分析した。
比較政治および社会学における最近の方法論的研究は、経路依存性の概念を政治的および社会的現象の分析に適用した。経路依存性は、社会的だろうと、政治的だろうと、文化的だろうと、制度の発展と持続性の比較歴史的分析にまず用いられてきた。おそらく2つのタイプの経路依存性プロセスがある。
決定的合流点フレームワークは、国々の間でとりわけ、福祉国家の発展と持続、ラテンアメリカにおける労働法人、そして経済発展の変動を説明するために使用されてきた。キャスリーン・セレンなどの学者は経路依存性フレームワークに含まれる歴史的決定論は、制度的進化からの絶え間ない破壊の対象になると警告する。
ポール・ピアソンの政治科学において経路依存性を厳密に定式化しようとする影響力を持った試みは、経済学からアイデアを部分的に持ってきている。ハーマン・シュワルツはこの努力に疑問を呈しており、経済学の文献で特定された力は、権力の戦略的な行使によって制度を作りそして変えることができる政治的領域には広まっていないとする。
緊急戦略の経路依存性は、個人およびグループに対する行動実験で観察されている。[18]
社会学や組織論などの社会学において、経路依存とは区別されるが密接に関連する概念として、「刷り込み」がある。刷り込みは初期の環境条件がどのように永続的な印を組織や組織の集合(産業やコミュニティー)に押すかを扱う。刷り込みは、外部環境条件が変わったとしても長期的に組織行動や結果を形作り続ける。[19]
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