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一般的に異性と関連付けられている服を着る習慣 ウィキペディアから
異性装(いせいそう)とは、文化的に自らの性役割に属するとされる服装をしないこと。
従来の社会にある服装規範に違和感を持ち、自身の固定化された性別とは異なる性別の服装をすることをトランスヴェスティズム(transvestism)、一般に異性装を行う者をトランスヴェスタイト(transvestite)と呼んでいた[1]。これは本来は医学的な概念としての呼称であり、今は時代遅れの用語とされている[1]。これにネガティブなイメージを持つ異性装者が自ら生み出した呼称にクロスドレッサー(cross-dresser)がある。同様に異性装を行うことをクロスドレッシング(en:Cross-dressing)という。また自分または相手に、全体または一部の異性装をさせて性的に興奮を得るフェティシズムは、異性装フェティシズムともいう。両方とも比較的男性に一層多いことが知られている。
異性装をしている状態をA面(after)と表現する場合もある。逆に異性装者の異性装をしていない状態はB面(before)と表現される。
世界保健機関(WHO)の『疾病及び関連保健問題の国際統計分類』(ICD)では以前は「性嗜好障害」の下に「フェティシズム的服装倒錯症」を分類していたが、2019年の「ICD-11」からは「性嗜好障害」の言葉を使わずに「パラフィリア症群」という言葉を用い、「フェティシズム的服装倒錯症」の用語はカテゴリから消えた[2]。また、「ICD-10」では項目があった「両性役割服装倒錯症」は、臨床的な存在意義が認められないという理由で廃止された[3]。
なお、変身願望を実現するための手段(ジェンダー表現)としての異性装は、いわゆる性同一性障害とは異なる(加えて「性同一性障害」という用語は「ICD-11」では「性別不合」に変更され、精神疾患として扱われなくなった[3])。
女は男の着物を着てはならない。また男は女の着物を着てはならない。あなたの神、主はそのような事をする者を忌みきらわれるからである。
とあるため、同書を聖典(啓典)に含めるユダヤ教、キリスト教、イスラム教の戒律に抵触する。現代では世俗化が進み教会などにおいてもこの規定を重視しない社会が多いが、シャーリアを法源とするイスラム国家では異性装が犯罪となることもある。
異性装が宗教的禁忌となる社会では、女性軍人の軍装が異性装とみなされ問題となる。古くはジャンヌ・ダルクが異端審問で魔女と認定された理由のひとつが軍装を身に着けたことであった。
現代では、湾岸危機に際してアメリカ軍がイスラム国家のサウジアラビアに駐屯した際、米軍の女性軍人の存在に対してサウジアラビア政府が難色を示した。なお同じくイスラム国家であるイランでは、全身を覆うイスラームの女性装に則った軍服をまとった女性兵士の部隊がある。
宗教的祭礼の服装の場合や、遊戯(仮装)の服装の一種、身を隠す手段(変装)として一時的に異性装をする場合もある。
上記の「異性装の理由/芸術」の項と、下記の「関連項目」も参照。
神話や伝説を多く含む古代の史書『古事記』『日本書紀』は、ヤマトタケルが女装して宴に潜入して、熊襲建を討ったと伝える[10]。
中世文学においても異性装の物語は人気を博した[11]。その代表的な作品が平安時代後期に描かれた『とりかへばや物語』であり、男装の女君と女装の男君がジェンダーを入れ替えて宮廷生活を送る物語である[11]。平安時代末期の『有明の別れ』は男装の女君が隠れ身の術を使って活躍し[11]、室町時代の短編物語絵巻『新蔵人物語』では主人公の女性が自らの意志で男装して宮中に上がる[11]。
江戸時代には、小説や演劇等において異性装や男女の入れ替えといった発想を取り入れた作品が多く作られた[10]。曲亭馬琴の小説『南総里見八犬伝』に登場する八犬士のうち2人(犬塚信乃・犬坂毛野)は女装で登場している。柳下亭種員・二世柳亭種彦・柳水亭種清が書き継いだ小説『白縫譚』の主人公若菜姫は男装している[12]。歌舞伎『青砥稿花紅彩画(白浪五人男)』の主人公の一人である弁天小僧は女装して美人局を働く男性であり[10]、女装のまま居直って正体を現す場面は「知らざあ言って聞かせやしょう」のセリフとともに知られている[13]。神田祭や山王祭では、女性が男装する出し物があるなど異性装がしばしば行われており、これらを描いた浮世絵が多数現存する[10]。これらの異性装は職業や立場によるもので、性的指向やアイデンティティとの関係は無いとされる[14]。
近代において、実在の人物である川島芳子をモデルとした村松梢風の小説タイトルに使われた『男装の麗人』という言葉は、美男子に扮した女性を指す表現として広く使われた。こうしたキャラクターが登場する演劇や映画・テレビドラマ、漫画・アニメーション作品は現代に至るまで多数制作されている(『リボンの騎士(サファイア (リボンの騎士))』[15]や『ベルサイユのばら(オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ) 』など)。恋愛シュミレーションゲーム『ときめきメモリアル/ときめきメモリアルの登場人物((伊集院レイ)項目参照))』には家のしきたりで外では男として生活するため男装したキャラクターも登場した。
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