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海上自衛隊の礼式(かいじょうじえいたいのれいしき)とは、海上自衛隊において実施されている礼式である。
「自衛隊の礼式に関する訓令」(昭和39年5月8日防衛庁訓令第14号)及び「海上自衛隊礼式規則」(昭和40年5月24日海上自衛隊達第33号)等によって規定されている。概ね一般的な海軍の礼式に同じである。なお、以下の記述は、平成16年4月8日庁訓第49号及び平成16年4月6日海上自衛隊達第11号による改正時のものを原則として基準としている。
本記事は、原則として、自衛隊の中で海上自衛隊に特有の礼式を記述しているので、自衛隊の礼式一般及び警衛隊及び警衛の敬礼については自衛隊の礼式を参照。
隊の敬礼一般に関しては、陸海空自衛隊で共通である。ただし、指揮者又は監督者に引率されて訓練、作業、授業又は競技等に従事している場合においては、その指揮者又は監督者のみが敬礼を行うものとされている。
他方、隊の答礼に関しては、特則があり、海上自衛官又は隊は、他の隊から敬礼を受けた場合は、その隊に対して答礼を行うものとし、その隊の指揮者に対する答礼を以てその隊に対する答礼とする。ただし、奏楽を行っている音楽隊は、行進中はその指揮者のみが敬礼を行う。また、各個の敬礼を省略できる場合は、隊の敬礼の場合についても準用される。
自衛艦は、天皇旗を掲げている自衛艦その他の船舶及び観艦式における観閲官の乗艦する自衛艦等に対しては、登舷の敬礼を行う。遠洋航海等のため出航する自衛艦(練習艦隊)とこれを見送る自衛艦との間においても同様である。
登舷の敬礼は、「登り方用意」「登れ」の号令で乗員が舷側に整列する。服装は、白手袋着用の礼装である。らっぱ又は号笛を以て「気を付け」を令し、総員が舷側又は上甲板に整列し、幹部自衛官及び准海尉は挙手の敬礼を、海曹・海士は姿勢を正す敬礼を行う。
登舷の敬礼を行う場合は、敬礼を受ける自衛艦との最近接点の方位の約45度前から敬礼を始め最近接点の方位の約45度方向に遠ざかるときまで継続する。ただし、距離、速力等によりその時機を適宜変更することができる。
自衛艦において定時に自衛艦旗を掲揚し又は降下するときは、定時10秒前にらっぱを以て「気を付け」を令して定時に国歌(君が代)1回を奏し、この間次の各号に定めるところにより敬礼を行う。当直士官は、艦橋又は後甲板付近に位置し、自衛艦旗に対し挙手の敬礼を行う。艦橋及び露天甲板にある者は、自衛艦旗に対し挙手の敬礼を行い、その他の場所にある者は、姿勢を正す敬礼を行う。海上自衛官は、陸岸において自衛艦旗の掲揚又は降下を目撃するときは、その場に停止し、当該自衛艦旗に対し敬礼を行う。
音楽隊の乗り組んでいる自衛艦が、外国軍艦と同所に在泊し、定時に自衛艦旗を掲揚又は降下するときは、「国歌」を奏した後外国軍艦の首席指揮官の先任順序により逐次当該国の国歌1回を奏する。ただし、外国の港湾に在泊するときは、「国歌」に続き当該国の国歌を先に奏する。自衛艦が外国軍艦と同所に在泊し、定時の自衛艦旗の掲揚又は降下に際して外国軍艦において奏する「国歌」を聞き、又は自衛艦において外国の国歌を奏するときは、艦橋及び露天甲板にある者は自衛艦旗又は当該国の軍艦旗に対し挙手の敬礼を行い、その他の場所にある者は起立して姿勢を正す敬礼を行う。
幹部自衛官等が自衛艦を出入する際は、送迎を行うほか、特定の礼式を原則として行う。送迎を行うに際しては、幹部自衛官及び准海尉は挙手の敬礼を行い、海曹及び海士は警衛、舷門堵列員(舷門堵列員は海士で、2名ないし8名で、通常礼装)及び号笛を吹く者のほか、姿勢を正す敬礼を行う。陸上自衛官又は航空自衛官が自衛艦を出入する際は、その階級に応じて準用するが、舷門堵列員の整列及び号笛を以てする礼式は行わないのを例とする。舷門堵列員等の整列は、舷門側から、舷門堵列員を向かい合わせで並べ、次に当番[1]、当直海曹又は警衛海曹、副直士官、当直士官の順である。
この自衛艦を出入りする者に対する敬礼は、2人以上の受礼者が同時に出入する場合は、そのうち最上位者等に対するもののみ行い、2人以上の受礼者が連続して出入する場合は、そのうちの主な者に対するもののほか、適宜その一部又は全部を省略することができる。
受礼者が艦長・艇長である場合は、副長・当直士官が送迎を行う。受礼者が当直士官よりも高位の幹部である場合は、当直士官が送迎を行う。通常の、その乗艦(艇)を出入する場合には、舷門堵列員による敬礼はない。
自衛艦旗授与式の実施要領は、次の式次第により行う。
式典の儀礼曲は公募で選ばれた『海のさきもり』である[2]。
観閲式の実施要領は、原則として次の式次第により行う。
葬送式の実施要領は、原則として次の通りである。礼式は、配員の状況等により儀仗隊を編成することが困難な場合又は葬送式場の部隊等の所在地から遠隔の地であって儀仗隊を派遣することが困難な場合は、省略することができる。
着任時は原則として第1種礼装で着任の挨拶をする。
1等海佐又は2等海佐たる艦長の、着任の際の「自衛艦を出入する者に対する敬礼」は次の手順により行われる。
着任式では、着任者に対し、その指揮監督を受ける者があいさつを行う。あいさつは、各個にその職名及び氏名を申告することを以て行う。
艦の出航における登舷礼では見送る隊員が互いに正帽を振る『帽振れ』が行われている。
手順は「帽振れ」の号令で正帽の鍔を右手で持って脱帽、その後頭上(斜め前)でゆっくり回し、「帽元へ」の号令で礼を終了する。
出航以外にも、宇宙飛行士に選出された金井宣茂一等海尉が退職する際や[3]、不祥事で辞任することになり栄誉礼を辞退した吉川榮治の離任式など、退職時の見送りとしても行われている。
イギリス海軍では見送りの際に相手に帽子の上を向けて時計回りに回す見送りが行われており、大日本帝国海軍では帽子の上は向けずに右手で持って頭の上で回す礼として導入され、海上自衛隊でもほぼ同じ礼が行われている。なお大日本帝国海軍では3回以上連続して回し、持つ位置や速さには個人差があった[4]。
民間船への見送りとしても行われることがあり、父島基地ではおがさわら丸が出港する際に基地の隊員が帽振れで見送ることがある(時間や業務の都合で来ないこともある)。
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