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歯を磨くための道具 ウィキペディアから
歯ブラシ(はブラシ、英: toothbrush)は、歯を磨くのに使用する小さなブラシである[1]。自然の歯あるいは入れ歯を磨くのに使う。漢字で表記する場合は「歯刷子」[1][2]。口腔衛生ケアに用いられる用具の一つ。
なお歯ブラシのみでは歯の表面の50%にしか届かないため、他の部位の歯垢を除去するために、別途デンタルフロスや歯間ブラシなどの歯間清掃用品の併用が、口腔ケアにおいては必要である[3]。
一般的な製品は柄の先端の片側に数十本ごとに束ねられた繊維が複数植えつけられていて、その摩擦によって歯垢などの汚れを落とす。 歯ブラシは先端から植毛部、頚部、把柄部の3つの部分からなり、さらに植毛部の上方をつま先、下方をかかとという[4]。繊維の束は列状に配置されており、一般的な3列植毛のほか、6列植毛、5列植毛、4列植毛、2列植毛、1列植毛のものもある。毛先の形状にはラウンドカット毛と超極細毛がある[5]。毛切りには平切りのほか山切りなどがある。
360度歯ブラシのように先端が特殊な形状のものもある。また、スイッチを入れるとモーターにより動作する「電動歯ブラシ」(電気歯ブラシ)もある[6]。また、柄のない指サック型の製品もある[6]。歯磨き粉を用いる場合には歯ブラシの毛先に付けて磨くことになるが、「粉付き歯ブラシ」のように最初から粉状の歯磨き粉を付けている使い捨ての歯ブラシもある。
繊維を加工したり毛先を0.02mmに加工するなど、歯と歯の間や奥歯の汚れを綺麗に取る為のものや、歯茎を刺激するものなど多機能化が行われている。また、「歯科医院向」の製品も製造されている。
長く使っていると繊維が曲がって毛先が開き、歯磨きの効果が落ちるため、取り替えの時期となる。歯磨きに使用出来なくなると、風呂場のタイル目や排水溝など身の回りの細かい所などの掃除に使用する場合もある。ペット用の歯ブラシもあり、犬用のものでは大型犬用・小型犬用などがある。
少なくとも紀元前3500年のバビロニアでは、木の枝から作った歯木を使用していた[7]。それが、インドやギリシャでも習慣が普及し、各々の土地にあった木が用いられた。中国では歯木に楊柳の枝を用いたことから楊枝(ようじ)となった。これは爪楊枝ではなく房楊枝と呼ばれるもので、細い木の枝をブラシのように一方の端を噛み砕いて使用した。インドなどの仏典に釈迦が歯木を使って地に投げたところたちまち根づいて大木となった話や弟子に歯木を使わせる記述があり、当時既に歯木が使用されていたことが窺われる。日本でも歯ブラシが一般化するまでは房楊枝が一般的に歯磨きに使用されていた。
アメリカ歯科医師会によると、1498年に中国の皇帝が豚毛を骨の柄に植えつけたものを歯磨きに使用したものが、最初の歯ブラシであるとしている。しかし1223年に宋に留学した禅僧の道元が現地における「くちすすぐともがらは、馬の尾を寸餘にきりたるを牛の角のおほきさ三分ばかりにて方につくりたるがながさ六七寸なる、そのはし二寸ばかりにうまのたちがみのごとくにうゑて、これをもちて牙歯をあらふ」習慣を記述しており[注釈 1]、実際の歴史はさらに古いものと思われる。
17世紀ごろからヨーロッパでも使用されるようになるが、19世紀に大量生産されるようになるまで一般的ではなかった。
1872年に大阪において鯨のひげの柄に馬毛が植えられた「鯨楊枝」が製造販売され[8]、1890年に大阪盛業株式会社が「歯刷子(はぶらし)」の名称で第三回内国勧業博覧会に出品する[8]。 1903年(大正3年)に小林富次郎商店(現在のライオン)が「萬歳歯刷子」を発売。 1917年には歯ブラシ会社が集中していた大阪府八尾市でセルロイド製の歯ブラシの生産が始まった[9]。また、1938年2月24日にはデュポン社がナイロン製の歯ブラシを初めて売り出した。
60 Second Marketer websiteの情報によると、世界では毎年およそ35億本の歯ブラシが販売されている[10]。
2018年時点での世界における市場規模は、非電動の歯ブラシの市場は、およそ44億米ドルである[11]。
世界の主な歯ブラシの製造会社は、P&G、コルゲート、Curaprox、Unilever (ユニリーバ)、Boie USA、Sensodyne(GSK。日本では「シュミテクト」ブランド)、Dr. Collins、Sunstar (サンスター)、Nimbus、Dr. Fresh(ドクターフレシュ)、Lion (ライオン)など[11]。
日本国内ではおよそ4億本/年が生産されている[12]。昭和20年代には大阪府が全国の出荷額の90%以上を占めていた。しかしながら、2009年時点では有力メーカー工場の移転などにより大阪府の出荷額の占有率は15.8%にまで低下した[12]。また近鉄八尾駅前には「生産高日本一」を記した歯ブラシ型のモニュメントが設置されている。
家庭用品品質表示法の対象品目になっている[13]。柄の材質(ポリプロピレン、飽和ポリエステル樹脂など)、毛の材質(人工毛(ナイロンなど)、天然毛(白馬毛、豚毛、馬など))、毛のかたさ(かため、ふつう、やわらかめ)、耐熱温度(60度、80度など)、表示者名の表示がされる[14]。また日本産業規格 (JIS S3016[15]) において規定がある。
幼児が口に箸や棒等をくわえたまま転倒や衝突などで口腔内の軟組織が受傷することがあるが、その原因の第一位が歯ブラシであり、30%以上であると報告されている[16][17]。歯ブラシの形態から症状は軽微なことが多いが、重症ないし重症となる危険性の高い症例の報告も多く[18][19] 、保護者による危険性の認識や監視の必要性が指摘されている[17]。
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