有期労働契約
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有期労働契約(ゆうきろうどうけいやく、Fixed-term contract)とは、契約期間の満了日が設定された雇用契約であり、期間の定めのある労働契約(きかんのさだめのあるろうどうけいやく)とも呼ばれる[3]。一時雇用のひとつ[2]。これと対比される概念は期間の定めのない労働契約である[3]。
この契約を締結する場合は、契約期間の満了後における当該契約に係る更新の有無を明示しなければならない[4]。
各国においては雇用保護規制の対象となっており、契約更新の最大回数もしくは累積月数を規制する国もある[2]。正規労働者の解雇規制が強い国では、一時雇用者の雇入規制も高いという傾向がみられる[2]。
国際労働機関(ILO)の雇用終了条約(第158号)においては、有期労働契約が雇用保護規制の回避を目的として用いられないよう措置を求めている。
- 第二条3
- 特定の期間の定めのある雇用契約であつて、この条約に基づく保護を回避することを目的とするものが利用されることを防ぐための適当な保障を規定する。
— 1982年の雇用終了条約(第158号)
- 第四条
- 労働者の雇用は、当該労働者の能力若しくは行為に関連する妥当な理由又は企業、事業所若しくは施設の運営上の必要に基づく妥当な理由がない限り、終了させてはならない。
EU諸国においてこの形態の労働契約を結ぶケースは、英国で4.3%、スペインで22.3%、ドイツで11.0%、イタリアで13.4%、フランスでは14.4%であった[5]。
欧州連合の有期労働指令においては、第4項1において同一労働同一賃金の義務が定められている。
Clause.4.1. In respect of employment conditions, fixed-term workers shall not be treated in a less favourable manner than comparable permanent workers solely because they have a fixed-term contract or relation unless different treatment is justified on objective grounds.
雇用条件に関して、有期労働者は、客観的な理由により異なる待遇が正当化されない限り、有期契約または関係を持っているという理由だけで、同等の正規労働者より不利な待遇を受けてはならない。
— Fixed-term Work Directive 99/70/EC
イギリスの有期労働契約は、期限満了日になると自動的に終了し、雇用主はそれを通知する必要はない[6]。しかし期間が2年を超える場合、雇用主は雇止めを行う理由が存在することを示す義務がある[6]。また早期に中途解約する場合、1週間の事前通知期間を置く必要がある[6]。
また期間が4年を超える場合、事業主が合理的な理由を示さない限り、自動的に期間の定めのない労働契約に転換となる[6]。
日本では労働契約法第4章で定められている。
労働基準法 第14条 (契約期間等)
- 労働契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、3年(次の各号のいずれかに該当する労働契約にあつては、5年)を超える期間について締結してはならない。
「一定の事業の完了に必要な期間を定めるもの」とは、ダムや大型のビルの建設現場など、工事が完了すればその事業が明らかに消滅する場合[7]。
契約期間が終了後、更新について異議を述べないときは、契約は同一条件で自動更新されたと推定される。
有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準[4] (契約締結時の明示事項等)
第1条 使用者は、期間の定めのある労働契約(以下「有期労働契約」という。)の締結に際し、労働者に対して、当該契約の期間の満了後における当該契約に係る更新の有無を明示しなければならない。
2 前項の場合において、使用者が当該契約を更新する場合がある旨明示したときは、使用者は、労働者に対して当該契約を更新する場合又はしない場合の判断の基準を明示しなければならない。
3 使用者は、有期労働契約の締結後に前二項に規定する事項に関して変更する場合には、当該契約を締結した労働者に対して、速やかにその内容を明示しなければならない。
労働条件通知書においては、期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準が絶対的明示事項となっている(労働基準法施行規則第5条1項)。モデル通知書では以下のフォーマットとなっている。
使用者の側から有期労働契約を更新しない場合(雇い止め)、有期労働契約が3回以上更新されているか、1年を超えて継続して雇用されている労働者については、30日前までに雇用終了予告が必要である[4]。
有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準[4] (雇止めの予告)
第2条 使用者は、有期労働契約(当該契約を3回以上更新し、又は雇入れの日から起算して一年を超えて継続勤務している者に係るものに限り、あらかじめ当該契約を更新しない旨明示されているものを除く。次条第二項において同じ。) を更新しないこととしようとする場合には、少なくとも当該契約の期間の満了する日の30日前までに、その予告をしなければならない。
有期労働契約の中途解約は、民法上はやむを得ない事由があれば可能であるが、「やむを得ない事由があるとき」に該当しない場合は解雇することができないことを特別法である労働契約法によって明らかにしている。
民法上は契約期間が5年を超える場合は上述の限りではないが、特別法である労働基準法により一般の労働契約では原則として3年を超える有期雇用契約は締結できない。
民法第626条(期間の定めのある雇用の解除)
- 雇用の期間が5年を超え、又はその終期が不確定であるときは、当事者の一方は、5年を経過した後、いつでも契約の解除をすることができる。
- 前項の規定により契約の解除をしようとする者は、それが使用者であるときは3月前、労働者であるときは2週間前に、その予告をしなければならない。
労働基準法第14条(契約期間等)
労働契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、3年(次の各号のいずれかに該当する労働契約にあつては、5年)を超える期間について締結してはならない。
- 専門的な知識、技術又は経験(以下この号及び第四十一条の二第一項第一号において「専門的知識等」という。)であつて高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する労働者(当該高度の専門的知識等を必要とする業務に就く者に限る。)との間に締結される労働契約
- 満60歳以上の労働者との間に締結される労働契約(前号に掲げる労働契約を除く。)
なお労働者側からの解約は、原則として契約から1年を経過していればいつでも可能である。
労働基準法第137条 期間の定めのある労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、その期間が1年を超えるものに限る。)を締結した労働者(第14条第1項各号に規定する労働者を除く。)は、労働基準法の一部を改正する法律(平成15年法律第104号)附則第3条に規定する措置が講じられるまでの間、民法第628条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から1年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。
使用者側から中途解雇を行う際には、期間の定めのない労働契約の場合と同様に、予告期間を30日以上置くか、または日数分の解雇予告手当を労働者に支払う必要がある。しかし、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合(単なる経営破綻では「やむを得ない事由」には該当しない)もしくは懲戒解雇である場合は事前予告・解雇予告手当は不要である。さらに2か月以内の労働契約(日雇い)や試用期間である場合等、事前予告・解雇予告手当を不要とする者が定められている。
労働基準法第21条 前条の規定は、左の各号の一に該当する労働者については適用しない。但し、第1号に該当する者が一箇月を超えて引き続き使用されるに至つた場合、第2号若しくは第3号に該当する者が所定の期間を超えて引き続き使用されるに至つた場合又は第4号に該当する者が14日を超えて引き続き使用されるに至つた場合においては、この限りでない。
- 日日雇い入れられる者
- 2箇月以内の期間を定めて使用される者
- 季節的業務に4箇月以内の期間を定めて使用される者
- 試の使用期間中の者
労働契約法改正により、有期労働契約が5年を超える場合、これを期間の定めのない労働契約に転換できる権利を得ることとなった(無期転換申込権)[8]。
なお、以下の労働者は特例規定が制定されている。
働き方改革関連法成立により、事業主は正規雇用者との間において不合理な待遇相違を設けてはならず、相違があるときはその理由を説明する義務が課せられた。
(不合理な待遇の禁止)
第8条 事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。第14条2 事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者から求めがあったときは、当該短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由並びに第六条から前条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該短時間・有期雇用労働者に説明しなければならない。
— 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律
3 事業主は、短時間・有期雇用労働者が前項の求めをしたことを理由として、当該短時間・有期雇用労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない
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