戒長寺
奈良県宇陀市榛原戒場に真言宗御室派の寺院 ウィキペディアから
奈良県宇陀市榛原戒場に真言宗御室派の寺院 ウィキペディアから
戒長寺(かいちょうじ)は、奈良県宇陀市榛原戒場にある真言宗御室派の寺院である。山号は戒場山(かいばさん)。境内に大イチョウがあり11月中頃から12月初旬頃に、紅葉した葉が落葉し境内を黄色に染めることで知られている[注 1]。
戒長寺 | |
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本堂 | |
所在地 |
宇陀市榛原戒場386 |
位置 | 北緯34度33分49.899秒 東経135度59分00.301秒 |
山号 | 戒場山 |
院号 | 薬王院 |
宗派 | 真言宗御室派 |
本尊 | 薬師如来 |
創建年 | 不詳 |
別称 | 戒場薬師 |
文化財 |
銅鐘(重要文化財) 薬師三尊、御前立木造薬師如来坐像(県指定文化財) |
法人番号 | 6150005004505 |
境内は、大和富士と呼ばれる額井岳(816メートル)の東、戒場山(737.6メートル)の中腹の高台に位置する。寺の創立や沿革は明らかでないが、春日大社文書中の仁治元年(1240年)の年記のある「関東下知状案」に「戒場寺」と見えるのが文献上の初見とされる。寺伝では、用明天皇の勅願により聖徳太子が建立し、後に空海(弘法大師)が伽藍を整備したと伝わるが、裏付ける文献等は発見されておらず、信憑性に乏しい[1]。しかし、現状の本堂の規模に対し所蔵する仏像数が多いこと、仏像の製作年や銅鐘の鋳造年代等を考慮すると、平安時代後期には寺勢が盛んであったと考えられる[注 2]。また、現在の戒長寺境内眼下に広がる戒場集落内に遺跡が発見されており、そこがかつての戒長寺跡と推定されている。同遺跡は榛原町教育委員会(当時)によって1991年(平成3年)10月23日から同年12月6日にかけて発掘調査が行われ、「戒場遺跡」と名付けられた。そこから12世紀頃の建築物遺構等が確認されており、確認された柱穴は直径40~80cm、その内の一つの建築物遺構の規模は、東西2間、南北2間(東西約440cm、 南北440cm)と想定される。これは当時の民家としては、柱穴の直径が大きく、建築物遺構の規模も大きい。また、戒場遺跡周辺には、寺院の痕跡を示すとみられる「ダイモン」「カネノカイト」「ゴマヤマ」「ドウバタ」「ドウザカ」の小字名がある。「ダイモン」は「大門」、「カネノカイト」は「鐘の垣内」、「ゴマヤマ」は「護摩山」、「ドウバタ」は「堂端」、「ドウサカ」は「堂坂」の意とみられる。このうち「ダイモン- 大門」は、戒長寺からまっすぐ南方へ伸びる町道の延長線上にあることから、かつて参道の「大門(山門)」が存在した場所の名残と推測でき、前述の町道は、かつての参道であった可能性が高いと考えられる。以上のことから戒場遺跡は、戒長寺の旧境内と一致する可能性が非常に高く、かつての戒長寺旧境内は、現在の戒場集落の広範囲を占めていたと考えられている[1][2]。
以下の仏像を所蔵する[1]。本尊の薬師三尊は秘仏である[注 2]。
木造薬師如来及び両脇侍像(薬師三尊) - 中尊の薬師如来坐像、左脇侍の日光菩薩立像、右脇侍の月光菩薩立像からなる三尊像である。薬師如来坐像は、榧(かや)材、日光菩薩立像、月光菩薩立像は檜材が用いられている。3体ともに内刳(うちぐり)のない、一木彫像である。薬師如来坐像は像高84cmで、平安時代前期の重厚な趣があるが、頭部や胸の厚みは薄く、温和な丸い顔立ちや簡素な衣文の表現には、地方色が認められる。日光菩薩は像高101.3cmで、頭部と躰体の比率もよく、肉どりも穏やかで、軽やかな量感把握をみせる造形に平安後期の特色が窺える[3]。
「御前立」の木造薬師如来坐像は、半丈六(高さ134.6cm)の坐像である。寄木造で檜材が用いられ、左手に薬壺を持つ一般的な像容である。伏し目の温雅な表情や、なだらかな肉取り、均整のとれた体躯、整理された衣文の表現などに、平安時代後期の定朝様の作風の特色が窺える[3]。
境内は、戒場山中腹にあり、脇道もあるが、通常は参道の長い石段を登る。境内に入るとすぐに、幹周り約4m、高さ約30mの大イチョウがあり、11月中頃から12月初旬頃に、紅葉により落葉したイチョウの葉で境内が黄色に染まることで知られている。大イチョウのすぐ右横に五輪塔が建ち、五輪塔右横には、かつて神仏習合時代の戒長寺鎮守社の戒場神社鳥居が建つ。大イチョウ左横には鐘楼門が建つ。堂宇は本堂、寺務所のみで、本堂右側方に、戒場神社社務所、本堂右後方に戒場神社拝所、本殿が建つ。戒長寺と戒場神社境内の境界を示すものはなく、参道も戒長寺と戒場神社が共有し、神仏習合時代の名残を残す[注 3]。
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