多剤大量処方
同じような薬効の薬が必要数を大幅に超えて多数処方され、かつ、それぞれの薬の量自体も本来必要な量より多い処方 / ウィキペディア フリーな encyclopedia
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この項目では、日本の精神科において同種の薬剤が大量となっている問題について説明しています。特に高齢者で問題になる薬の種類が多いことについては「多剤併用問題」を、意図的に2剤以上の薬を組み合わせて用いる事については「併用療法」をご覧ください。 |
多剤大量処方(たざいたいりょうしょほう)とは、同じような薬効の薬が必要数を大幅に超えて多数処方され、かつ、それぞれの薬の量自体も本来必要な量より多い処方のことである。多剤併用大量処方(たざいへいようたいりょうしょほう)とも呼ばれる。多剤大量処方に陥る原因は、単純に薬を多く投与したほうが効果が高くなるだろうという、医師の誤った思い込みである[5]。そのため、薬理学的な考慮のない、危険性を無視した投薬がままみられる。
精神科医療においては、精神科医による薬理学の知識不足が多剤大量処方の原因として指摘されている[6][7][3]。そのため、これらの薬が精神疾患を完治させるわけではないにもかかわらず、目先の症状の変化に気を取られて、同じような薬を何種類も処方することになる[8]。そして、それぞれの薬の量が限度用量以内であれば、全体として過剰投与になっているとは認識されくにい[6]。精神科で使用される薬には主なものとして抗精神病薬、抗うつ薬、気分安定薬、興奮剤、抗不安薬/睡眠薬などがあるが、深く考えずにそれぞれのカテゴリーの薬を複数ずつ処方すれば、ほぼ自動的に多剤となってしまう。こうした薬では減薬時に離脱症状が生じることがあり、減薬も困難となることがある。
欧米では向精神薬の登場により、それまで精神科病院に収容することしかできなかった患者の社会復帰が進み、精神科病院の病床数は減少していった。しかし、日本では逆に、それまで家庭などで放置されてきた患者の収容・隔離が進み、病床数は増えていった[9][10]。日本では、入院日数が長くなるほど、薬を使うほどに収入が増える医療保険システムにより、多剤化・大量化・高力価化が促され、効果が不十分な患者に多量に薬を使うことが常態化していき、減量が簡単ではなく減薬の方略もないので半永久的な投薬の実態があった[8]。統合失調症への投薬で言えば、1970年代には向精神薬の薬剤投与数の平均は2剤、200-300ミリグラムであったが、1993年には5剤、平均1000ミリグラムを超えた[11][12]。厚生労働省は2010年に自殺うつ病対策チームを発足し、日本では諸外国より精神科での多剤投与が多く、これが、オーバードーズ(過量服薬)による自殺未遂が後を絶たない素因になっていると指摘されている[13]。2016年、多剤大量処方の改善のための「向精神薬減量ガイドライン」を計画する、日本精神薬学会が発足した[14]。
1971年の向精神薬に関する条約では、乱用されてはならない薬物が指定されている。2010年に国際麻薬統制委員会(INCB)は、日本でのベンゾジアゼピン系薬物の消費量の多さの原因に、医師による不適切な処方があると指摘している[15]。