Remove ads
ウィキペディアから
和達 三樹(わだち みき、1945年2月10日 - 2011年9月15日[1])は、日本の物理学者。専門は、数理物理学・物性基礎論・統計力学。学位は、Ph.D.(ニューヨーク州立大学・1970年)。東京大学名誉教授。東京理科大学教授。東京都出身。父は和達清夫。
物性基礎論・統計物理学の分野で先駆的、独創的な研究を行っている。とくに非線形現象を中心に研究を進め、物理学における厳密に解ける模型(可解模型)の統一的理論の構成に寄与した。まず非線形発展方程式の初期値問題を解く手法として逆散乱法と呼ばれる手法を拡張し、変形KdV方程式等いくつかの模型を厳密に解くことに成功した。さらに逆散乱法とベックルンド変換との関係、それらを用いた保存則の導出を行い、ソリトン概念の確立を含めて世界的に優れた業績を次々にあげた。さらに、上記の逆散乱法を量子系、統計力学系に拡張した量子逆散乱法の一般化を進めた。この手法を用いることにより、ハイゼンベルク模型やハバード模型の完全積分性を証明するとともに、2次元格子統計力学において無限個の可解模型が存在することを示した。これらの模型は統計力学に限らず、固体物理学等においても非常に基本的で重要な模型であり、当時同時進行で研究が進んでいた共形場理論の予言するユニバーサリティクラスを実現するものである。また、統計力学において知られていた転送行列法を量子逆散乱法の視点から見直し、量子転送行列法と呼ばれる方法を開発した。
数学と物理学の接点に関する研究として、統計力学における可解模型と、数学における絡み目理論との関係を明らかにした。V.G.Jonesは絡み目多項式の発見によりフィールズ賞を受賞したが、和逹博士の研究は Jones 多項式の発見とほぼ同時であり、さらに Jones 多項式は、無限個存在する絡み目多項式の1つであることを証明した。また、長距離相互作用する1次元量子粒子系に対して、量子逆散乱法が適用できることを示し、それらの系の分類と直交基底の構成法を見出した。この研究は、その後多くの研究者がこの分野に参入するきっかけとなったものである。
近年では、磁気トラップされたボース・アインシュタイン凝縮体が、相互作用が有効的に引力である場合には不安定になり、粒子数の上限(臨界粒子数)が存在することを示した。この現象(凝縮体の崩壊)は、Li-7 を用いたライス大学での実験結果を見事に説明した。また、高次スピン自由度をもつスピノル型ボース・アインシュタイン凝縮体に対するグロス・ピタエフスキー方程式において、相互作用定数が可積分条件をみたす場合があることを証明した。逆散乱法の拡張によりソリトン解を構成し、多成分ソリトン系が多彩な衝突過程をもつことを明らかにした。
以上のように、東京大学、東京理科大学を中心として研究、教育に従事し、学術上も数々の業績をあげた。その門下から多くの人材を輩出させ、また国内外においても、研究・教育の発展のために大きな貢献をしてきた。2004年(平成16年)9月から2005年(平成17年)8月には、日本物理学会会長を務めている。
Seamless Wikipedia browsing. On steroids.
Every time you click a link to Wikipedia, Wiktionary or Wikiquote in your browser's search results, it will show the modern Wikiwand interface.
Wikiwand extension is a five stars, simple, with minimum permission required to keep your browsing private, safe and transparent.