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医療費亡国論(いりょうひぼうこくろん)とは、日本で当時の厚生省保険局長吉村仁が1983年(昭和58年)1月31日の全国保険・年金課長会議において発表した「医療費増大は国を滅ぼす」という論のことである。吉村は同会議で「医療保険制度をいま改革しなくては、必ず崩壊する」と発表した[1]。
吉村仁は1983年(昭和58年)3月に「医療費をめぐる情勢と対応に関する私の考え方」というレポートを旬刊誌『社会保険旬報』(社会保険研究所、1424号、pp.12-14)に寄稿する[2]。吉村は同レポートに「このまま医療費が増え続ければ、国家がつぶれるという発想さえ出てきている。これは仮に医療費亡国論と称しておこう」と著している[3]。
吉村仁が『社会保険旬報』に寄稿したレポート「医療費をめぐる情勢と対応に関する私の考え方」は1983年(昭和58年)5月19日の衆議院社会労働委員会でも取り上げられた。吉村は浦井洋から質問され、以下のようなやりとりがあった。
- 浦井委員
- そこで、保険局の方にお尋ねしたいのですが、吉村保険局長はあっちこっちでいろいろなことをしゃべっておられるようであります。鬼にも蛇にもなるということだそうであります。最近のこういう雑誌なんかに、ある程度あなたの考え方が集大成されたような形で出ておるようであります。それを私なりにダイジェストしてみますと、たとえばここなんかは「医療費適正化の方向と対応策」という題で、一番新しいのに出ておるわけですね。そこで、医療費を考えるメルクマールとして、一つは「医療費亡国論」、二番目が「医療費の効率逓減論」、三番目が「医療費需給過剰論」と、こういうふうに、それなりに理論立ててきておられる。こういうものを踏まえた上で、今後の対応の基本的な方向はということであなたが言っておられるのは、重点は「公共医療費を抑制して医療費に対する国民負担(公共負担)が増大しないようにする」。そして、良質医療へ転換させる、こういうことは非常に耳ざわりよく、すっすっと入ってくるわけなんです。ここで「公共医療費」というのはあなたがつくられた言葉なんでしょうけれども、公が責任を持って支払い負担する医療費だということは、結局自由診療に使う医療費は幾らかかっても結構だということを言っておられるようであります。大体そういうことでしょうか、簡単にコメントしていただきますと。
- 吉村政府委員
- 大体そういうことでございます。 — “第098会国会 社会労働委員会 第10号”. 国立国会図書館 (1983年5月19日). 2009年10月4日閲覧。
吉村仁はこの方針に基づき、1984年に健康保険法の大改正を成し遂げた。現役世代医療費に1割自己負担を導入、退職者医療制度の創設、また老人保健法に基づく老人保健制度(後期高齢者医療制度#歴史)などが創設された[5]。
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