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『円覚経』(えんがくきょう)、正式名称『大方広円覚修多羅了義経』(だいほうこうえんがくしゅたらりょうぎぎょう)1巻は、唐代中国で撰述された仏典(偽経または疑経)の一つで、「大円覚心」を得るための方法を説く。唐の仏陀多羅訳とされる[1]。訳者の仏陀多羅については『宋高僧傳[2]』『續古今譯經圖紀[3]』『開元釋教録[4]』にそれぞれ小伝があるが、記述内容は何れも類似で漢訳時期等の詳細は不明である[5]。
『円覚経』の内容は、本来、真浄明徹な大円覚心[6][7]を実証具現するには、上・中・下の三機根に応じて、奢摩他(samatha)・三摩鉢提(samāpatti)・禅那(dhyāna)の三種の浄観を修習すべしと説く。
『円覚経』は7世紀末から8世紀初めにかけての成立であると考えられているが、初期の禅宗の灯史である『伝法宝紀』[8](でんほうぼうき、713年)に早くも引用されている。中国唐代撰述の偽経ではあるが、圭峰宗密 が25歳で『円覚経』に出会い、29歳で受戒、37歳(816年)以降生涯をかけて多くの疏鈔を撰述した[9]。その後、中国仏教に大きな影響を与えてきた大乗起信論にとって代る重要経典となった。宗密の後、宗派を問わず、多くの注釈書が撰述された[10]。後世、同じく中国撰述経典である『楞厳経』と共に「教禅一致」を説く経典と見なされ、宋・元・明と時代が下がるに従って重視されるようになった[11]。荷沢宗の法系に属する圭峰宗密は、この経を最高のものと位置づけ、生涯をその研究・注疏撰述に献げて、『略疏』4巻・『略疏鈔』12巻・『大疏』12巻・『大疏鈔科』3巻・『大疏釈義鈔』13巻などを著した[12][13]。
柳田聖山『中国撰述経典 -(仏教経典選 (13)) 円覚経』1987年 筑摩書房 ISBN 978-4480330130
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