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二日酔い(ふつかよい)、宿酔(しゅくすい)とは、酒などのエタノール(アルコール)を含んだアルコール飲料を、自身の代謝能力以上に摂取することにより引き起こされる不快な身体的状態。
エタノールの中間代謝により生成されるアセトアルデヒド中毒症状・脱水症状・低血糖・睡眠不足など複数の要因が重なって二日酔いの症状を引き起こす[1][2]。基本的には、夜間に酒を飲み、アルコールが抜けた翌朝の起床後、顕著に現れる現象を指す。急性アルコール中毒とは異なり、生命に直接の危険はないが、しばしば頭痛や吐き気などの著しい不快感を伴う。なお飲酒後、短時間で現れるものは悪酔い(わるよい)という。
日本政府は、質問主意書の答弁書で、『「二日酔い」については、その要因と発症機序について未解明な部分が多く、医学的に確立された定義は存在せず、また、法律、政令及び省令において「二日酔い」を定義した規定はない』との見解を示している[3][4]。
原因が酒にあるのは確実だが、二日酔いに至る原因は驚くほど解明されていない[5]。薬物が体から抜けていくときの離脱症状、脱水症状、低血糖、栄養失調、体の酸塩基平衡のアンバランス、炎症反応、アセトアルデヒドの影響、酒に含まれるメタノールや不純物などなどが原因としてあげられている[5][1][2]。
アルコールがドーパミンニューロンに作用すること、血中のカテコールアミン量が上昇することなどが要因の一つではないかという研究も進められている。
ただ一つ言えるのは、原因は一つではなく複数の要因によって引き起こされているということである[5]。
二日酔いは主に飲みすぎ、すなわち自身のアルコール分解能力を超えた量の酒を飲むことで起きる。
アセトアルデヒドの代謝酵素であるアセトアルデヒド脱水素酵素は、人種あるいは個人の遺伝的体質により、その代謝能力に差がある[6]。
モンゴロイドのほぼ半数はアセトアルデヒド脱水素酵素の働きが弱い「低活性型」か、全く働かない「失活型」である、そのためモンゴロイドには酒に弱く二日酔いになりやすいタイプが多く、全く酒を飲めないタイプ(いわゆる「下戸」)も存在する。それに対しコーカソイド・ネグロイドはこの酵素がよく働く「活性型」であり、酒に強く二日酔いにもなりにくい体質の者が多い。なお人類のアセトアルデヒド脱水素酵素のタイプは元々「活性型」が基本タイプであり、「低活性型」及び「失活型」は突然変異によって生まれたハプロタイプである。
筑波大学の原田勝二による研究は、日本においては九州地方と東北地方に「酒豪遺伝子」が多い(すなわち二日酔いになりにくい「活性型」が多い)という結果を示している[7]。
色のついた酒より透明な酒、醸造酒より蒸留酒が二日酔いになりにくいとされている。酒に含まれる水とエタノール以外の酒含有物をまとめてコンジナーと呼ぶ。これらのようなコンジナーの影響が二日酔いの重症化、長期化にかかわってくると考えられている[1]。
蒸留酒を作った際の副産物の一種にフーゼル油というものがある。過去には二日酔いの原因物質と考えられていた。しかし、詳しい研究はあまり行われてこなかったが、メインとなるエタノールの悪影響ほどではない、逆にエタノールの影響を軽減しているという報告もある[8]。
メタノールの代謝が早い人ほど二日酔いに苦しむという説もある[9]。ペクチンを含む果実から作る酒にメタノールが含まれやすく、似たような化学構造を持つことから蒸留でも共沸を起こしてしまい取り除くのも難しい[10]。そのため、各国で規制は行われるものの、若干量のメタノールは許容値とされ、多くはワインなどの果実酒、果実酒から作った蒸留酒などに含まれる[10]。
頭痛、嘔吐・吐き気、喉の渇き、胸のむかつき、体の震え、アルコール性胃炎による悪心などの自覚症状がある。
二日酔いの症状は飲酒翌日の昼ごろまで続くことが一般的で、ほとんどの場合、飲酒翌日中に症状は治まる[20]。
酒の大量摂取を避け、おつまみを食べること。就寝前に水分、糖分の補給を行っておくことで、ある程度の予防策となる[21][22]。
肉体的には脱水症状を起こしているため、水分を大量に補給することがまず第一である。さらに肝臓でのアルコール分解には糖分が必要であり、糖分を摂ることも有効となる。水分補給時、ただの水・お湯よりは、スポーツドリンクの方が水分糖分を同時に摂取できるので望ましい。ただし、お茶・コーヒーはカフェインの利尿作用があるため避けた方がよく、胃炎を起こしている場合、胃への刺激となるため、冷たい飲み物は好ましくない。
飲酒によって睡眠の質が低下し、睡眠不足で体調が崩れているため、睡眠をとるのも効果的な対処法である。
現代医学が発達する以前から、二日酔いに対処する民間療法は各地に伝わっている。
解毒、頭痛などを和らげる薬がメインとなる。胃炎を起こしている場合は、適切な胃腸薬の摂取が有効である[22]。
一番の対策は、深酒しないことである[25]。そして、積極的に吐くことである[2]。
救急医療では、点滴静脈注射による輸液、症状がひどい場合は更に糖とビタミン剤を点滴投与する場合がある[23]。
暴飲を避けるために、少量のお酒で悪酔い状態になる抗酒薬(嫌酒薬)が使用される場合がある。アセトアルデヒドの分解をわざと妨げ、少しでも飲酒すると強制的に不快感を引き起こす薬品(シアナミド、ジスルフィラム等)は抗酒薬としてアルコール依存症の治療に使われている。ヒトヨタケをアルコールと同時に摂取すると悪酔いするのも同様のメカニズムである。
風呂やサウナに入って汗として有害物質を出してしまうという方法を取る人もいるが、酔った状態で滑りやすく溺れやすい水場に近寄ることの危険、アルコールなどの濃度を濃くしたり、脱水症状・脳卒中・心筋梗塞などを引き起こす原因ともなる[21]。
運動や入浴は、血流が全身に拡散してしまい、肝臓に血液が集まらないためよろしくない[21]。
「迎え酒」と称してまた酒を飲み症状を緩和させるということが世界各国で行われていたが、単にアルコールで不快感を麻痺させるだけであり、肉体への負担が大きいため行うべきではない(主にアルコール依存症の罹患者に多い行為である点に留意)。
写真家ロバート・キャパが「神はこの世を六日間で創り給うた。そして七日目には二日酔いを与え給うた。」との言葉を残したように、二日酔いは洋の東西を問わず、人類を古くから悩ませてきた。
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