2010年の3月にXbox 360およびPC(Windows)用のゲームとして発売された。
コール オブ デューティシリーズなどに代表される物語や演出をプレイヤーに体感させる事に重きを置いた、一人称視点のアクションシューティングゲーム(FPS)になっている。
他のFPSゲームと異なるのはHUD(画面表示)の描写であり、画面に極力テレビゲーム的な表示(主人公の体力や武器の弾薬数)を排除し、映画を体験させるような演出を目指している点である。物語ありきの小説が原作ということもあってか、2010年のアクションシューティングゲームとしては珍しくオンライン対戦や協力プレイを実装しておらず、一人用専用になっている。
原作の設定や描写の多くがゲーム版にも反映されており、「弾薬を通貨代わりにする」「地上が放射性物質で汚染しているため防護が必要」「手で回す自家発電機の付いた懐中電灯を使う」などの部分がゲームのシステムとして登場している。これらは、汚染された未来世界での生き残りをかけた戦いという「原作の内容を体感させる演出」としての面と、「色々な管理をしながら計画的に行動や戦闘をしていく楽しみ」というゲームの遊びとしての面の両立を実現するもので、他のゲームとの差別化にも貢献している。
また、舞い上がるホコリや光と影の演出や、生活感溢れる散らかったメトロの各所を高水準のグラフィックス(当時)で表現し、物語やシステムだけでなく美術面においても原作の世界を体験させる事に力を入れている。特にPC版はDirectX 11に対応しており、それが顕著である。
難易度は2010年の欧米のゲームとしては高めである。
日本語版は2010年の5月にスパイクからXbox 360版が、6月にズー/イーフロンティアからPC版が発売され、音声はオリジナルのロシア語、ロシア語訛りの英語、そして日本語吹き替えの3種類が収録されている。字幕は日本語と英語字幕が存在する。
ゲーム版におけるアルチョムの人物描写について
一人用のFPSでは、プレイヤーを物語の世界に没入させるための手法として主人公を無口にさせる事が多い。そのためか、原作では台詞の多いアルチョムもゲーム版においては無口である。とはいえ、やはり小説原作という事もあってか、ステージ間にあるロード時間には彼自身の複雑な心境の吐露や細かい状況の解説といった「文学的」な内容のナレーションを行う。
ゲームのアルチョムは義父アレックス(原作のサーシャ)の友人であるハンターを尊敬しているが、彼が偵察から生きて戻らなかったために生まれて初めて故郷から外へと出ることとなる。この旅立ちの件は義父には内緒であり、真実を言わずに故郷を後にしたことを案じたり、危険なメトロを通過することへの恐怖を語るなどの原作に準じた描写もある。そのため、「無口なFPSの主人公」としては人間らしさの描写が多い。
なおゲーム版では彼自身の事にあまり言及されておらず、箱のイラストなどでも素顔が明かされない(基本的にガスマスク姿)。ほんの一部のムービーパートではガスマスク越しの彼の姿が写し出されるが、痩せた黒髪の青年とまでしか表現できない。
登場する敵
- 野盗
- 自由商人などから略奪して生計を立てている武装したゴロツキの集まり。序盤に戦う事が多い。
- 共産主義者
- 原作ではほぼ設定のみの存在だった勢力。中盤に戦う。ゲームの敵としての特性は野盗とほぼ同じ。
- ファシスト
- 第四帝国の構成員たち。中盤から終盤にかけて戦う事が多い。
- ノサリス(Nosalis)
- もっとも頻繁に出現するミュータント。非常に凶暴で機敏であり、大群で人間を襲撃してくる。
- 人間同様手足があるが、大抵4足歩行で突進してくる。腕力は強く、爪や牙も鋭い。肉体も強靭である程度の銃撃にも耐えるが、頭が弱点らしくそこを狙えば速やかに無力化できる。
- ムササビのような羽を生やした進化型などの亜種がいくつか存在する。
- ハウラー(Howler)
- 地上に出没する四足歩行のミュータントでオオカミに似ている。行動パターンはノサリスのものに近い(ノサリスは地上にはあまり現れない)。
- ラーカー(Lurker)
- 毛の無い犬の様なミュータントで、地下に穴を掘って暮らしている。無数に空いている穴を利用して八方から攻撃を仕掛けてくる難敵。ただし、耐久力は低め。
- ライブラリアン(Librarian)
- 原作における「司書」。上記ノサリスより一回り大きいゴリラの様なミュータント。その名称どおり、ロシア国立図書館(ライブラリー)に住み着いている。肉体は非常に強靭で戦闘力も高く、排除することは困難である。原作同様、目を会わせ続けていると攻撃をしてこない(ゲームでは一定時間後に遠くに立ち去る)。ただし稀に攻撃してくる個体もいる。
- デーモン(Demon)
- 翼の生えた怪物。上記のライブラリアン同様最高レベルの戦闘力を持っており、音もなく空から忍び寄り人間を襲撃する。建物の壁や天井を突き破ったり、装甲車を横転させるなど怪力なことがうかがえる。排除は困難だが、不可能でもない。
- アメーバ(Amoeba)
- 秘密のミサイル基地「D6」の深部に登場するスライムの様な敵。こちらを取り囲む形で無数に出現し、特攻を仕掛けてくる。
- ダークワン(Dark One)
- 原作の「チョルヌィ」。新種のミュータント。テレパシーを利用して人間の言葉を喋る上、度々アルチョムの精神に直接干渉してくる。
- 最後にはダークワンの作り出した幻想的な精神世界の中に引き込まれる事になる。
装備品
- ガスマスク
- 核戦争後という環境上、地上は未だに汚染されており、そこに出るには当然ガスマスクが必要になる。また、これらは戦闘で破損することがあり、それにより気密性が失われれば、命に関わる大問題となる。逆に言えば、人間と地上で戦う場合は相手のガスマスクを破壊することで無力化することもできる。
- ガスマスクはフィルターにより機能しており、これは定期的に交換しなければやがて機能を失うこととなる。また、激しい運動などで息が荒れればマスクが曇ることもある。
- ライターとクリップボード
- ライターは暗闇で光を得るために使用する。クリップボード(手板)には、自分がこれから何をすればいいかが記されている。これには目的地の方角を示すコンパスも収録されている。
- ヘッドライト
- 頭部に装備されたフラッシュライト。使い続けると光が弱まるが充電をすればまた光が強くなる。
- ナイトビジョン
- 暗がりを照明無しで見る事が出来るゴーグル。ライトより電気の消費が激しく最終的には機能停止する。ただし充電をすれば何度でも使える。
- 万能充電器
- 上記のライトの照明強化や暗視ゴーグルの充電を行う機械。原作にも登場する。
- ナイフ
- 対象物を切断、斬撃するための道具。ナックルダスターとナイフが一体になった様な形状をしており殴打も可能。アルチョムの手製という設定だが、ゲーム版独自のもの。
- スローイング・ナイフ
- 手投げナイフ。音が非常に小さいため暗殺に適しているが、ターゲットがアーマー等で防護していると弾かれる。拾えば再利用可能。
- リボルバー
- 昔ながらの回転式拳銃。威力が高いため、ミュータント相手でも十分に通用する。ノーマルモデルの他にサイレンサーを装備した消音型やロングバレルで精度を向上させたもの、そしてストックを装備した準カービン銃型、望遠スコープや以下のパーツを複合した狙撃銃型など、能力向上型のモデルが豊富である。
- バスタード・サブマシンガン
- アーモリー駅で製造された手製の機関銃。核戦争後という状況もあり資材の節約のためなのか、一般的なベルトリンクや箱型弾倉などではなくホッチキス Mle1914重機関銃のような保弾板によって装填を行うのが特徴。核戦争による文明崩壊後の低いテクノロジーで作られているため精度は悪く、すぐにオーバーヒート(使いようにもよるが)するため「バカマシンガン」と言われている。サイレンサーを装着したモデルも存在する。
- 一発あたりの威力はリボルバーをかなり下回るため、敵によってはあまり有効でない場合もある。
- AK74
- 東側世界を代表していた名銃カラシニコフ。一種のロストテクノロジーであるため入手困難だとされているが、中盤以降は大量に入手でき、むしろ上記のバスタードのほうが入手が困難になる。スコープを装備したカスタムモデルが存在する。
- トンネルガイド(取り扱い説明書)ではAK-47とあるがこれは誤記で、使用する弾薬が5.45㎜なのでAK-74である。
- VSV
- 大型のサイレンサーが組み込まれた自動小銃。レーザーサイトも備わっており精度の高いライフルであるが、装弾数は20発と少なめ。スコープの付いたモデルも存在し、元々の高い精度と相まって狙撃銃としての運用が可能。
- KALASH 2012
- カラシニコフ小銃の2012年モデルで取り回しがAK74よりも改善されている。同年に開発されたAK-12というものが実在するが本銃はオリジナルのブルパップ方式のライフルであり関係はない。装弾数40発。スコープ、サイレンサー付きのカスタム版あり。
- ダブルバレル・ショットガン
- 二つの銃身と引き金を持った散弾銃。至近距離では絶大な威力を発揮するが、二つの銃口から同時に放てば更に強力な一撃を放てる。同時射撃ならばノサリス程度は一撃で仕留められるが、2発しか装填できない短所がある
- オートマチック・ショットガン
- リボルバーのような6発装填のベルト式弾倉をもつ、より実戦的な散弾銃。独特なリロード方式が特徴。銃剣付きモデルも存在する。かつてソビエト時代に開発されたベルト式弾倉をもつ銃を参考にしている可能性がある。
- 弾倉の構造上、一回の装填で6発全てを装填できない場合もある。
- ヘビー・オートマチックショットガン
- 連続発射が可能なベルト給弾式のショットガン。外見はDShKに似ている。元々この武器は初回限定版を購入したユーザーだけがダウンロードできるものだったが、日本語版では予め実装されている。なお、発売数ヶ月後に登場した日本未配信のダウンロードコンテンツ"Ranger Pack(レンジャーパック)"にも収録されている。
- ティハール
- 圧縮空気で金属の弾を飛ばす空気銃。発射するたびに空気が減っていくため、レバーを使って空気を圧縮させる必要がある。空気の残量は銃についた圧縮メーターで確認できる。一応フルオートでの発射も可能。スコープの付いたモデルも存在し、圧縮メーターの残量に応じた大凡の射程を示す三色のレティクルが表示されている。
- ヘルシング
- 圧縮空気で矢を発射する連装式ボウガン。ティハール同様、レバーで空気を圧縮し、メーターで残量を確認できる。連射が効かず弾が高価であるのが欠点だが、矢は再利用が可能で威力も高い。スコープの付いたモデルも存在する。
- ボルトドライバー
- 電気によって弾を発射するガウスガン。弾はティハールと共用。劇中ではミラーが使用しているだけのNPC専用武器であったが、"Ranger Pack(レンジャーパック)"でプレイヤーも使用可能となった。ティハールやヘルシングと同様にレバーでバッテリーを充電して、発射用のエネルギーとする。またバッテリーを消費しての近接攻撃も可能。
ゲーム版のおおまかなあらすじ
オスタンキノ・テレビ塔(右)
※固有名詞はゲーム日本版の表記に準ずる。
- プロローグ
- アルチョムとミラーはコロレフ・ホールを通過し、モスクワの地上へと出た。他の仲間と合流して、彼らは旅の終着点であるオスタンキノ・タワーに向かう。だが、地上の支配者であるミュータントらの激しい攻撃を受け、レンジャーたちは次々と倒れて行く。そして、アルチョムも窮地に陥ったところで物語は8日前にさかのぼる。
- 第1章:旅の始まり
- 西暦2033年。最終戦争で地上が壊滅してから20年。新たに地上を支配しているミュータントたちは、地下で生き延びていた人類を徐々に追い詰めていた。辺境の「エキシビジョン駅」も度重なる襲撃で、数多くの負傷者を出していた。更に追い討ちをかけるかのように、「ダークワン」と呼ばれる新種のミュータントまでもが襲いかかってくるようになっていた。
- そんな中、野外活動を行うレンジャーである「ハンター」がエキシビジョンにやってきた。彼は状況を把握するため偵察に出るが、二度とアルチョムたちの前に戻らなかった。アルチョムは彼の伝言をポリス駅のミラーという人物に伝えるため、隣のリガ駅へ向かうキャラバンの護衛に加わり、これまで出ることが無かった故郷を後にした。
- 第2章:ブルボン
- 危険と犠牲を伴ったが、なんとかリガに到着したアルチョム。キャラバンはここで終点のため、ここからは独りでポリスを目指さなければならない。途方に暮れるアルチョムだが、「ブルボン」と名乗る中年男性から取引を持ちかけられる。それは(危険なルートであるが)一緒に「ドライ駅」に行くというものであった。報酬はカラシニコフ小銃とし、2人はドライ駅へ向かうため廃墟となったモスクワの地上へ向かう。
- 第3章:カーン
- ドライ駅に到着したが、此処は野盗(Bandits)が制圧しており、連中のアジトとなっていた。しかもブルボンは捕まってしまう。アルチョムはブルボンを救出するためドライ駅の中を突き進むが、ブルボンは野党の首領との決闘により命を落としてしまう。その後「カーン」と名乗るレンジャーが突如現れた。野盗の追撃から逃れるため、アルチョムは彼に従いドライ駅をあとにする。カーンの助言により、ポリスを目指すためアーモリー駅を目指すことになった。
- アーモリー駅に到着したアルチョムは、不審者と見なされ駅を支配する共産主義者たちに身柄を拘束される。だがここでカーンの友人アンドリューに救出される。此処から出てポリスへ行くには、共産主義陣営の新兵を乗せたトロッコに紛れてファシストとの戦場に行くしかないとの事である。アルチョムはアンドリューたちの支援を受け、共産主義とファシストとの最前線へ向かった。
- 第4章:戦乱
- 共産主義者とファシストの戦場を通過したアルチョムだったが、待ち伏せていたファシスト兵によって捕らわれてしまう。だがそこに現れた二人のレンジャー「ウルマン」「パヴェル」によって救出される。アルチョムがハンターの使いだと知ったウルマンは、相棒のパヴェルにポリス駅まで同行させることにした。だが車輌基地でノサリスの大群から襲撃されパヴェルはトロッコから落車、最後のあがきとしてパイプ爆弾に点火する。アルチョムは単独でポリスを目指し、途中のブラック駅でウルマンと合流。長かった旅路も終わりが見えてきたと思われた。
- 第5章:希望
- ついにポリス駅に到達したアルチョム。だが、議会はエキシビジョン駅を見捨てる決断を下したのだ。だが、ミラーは代案が実行できるかもしれないという。それは彼らレンジャーがいくつかのミサイルサイロを発見しており、ダークワンの巣への攻撃に使える可能性があるとのことだ。しかしそれら旧ソ連のミサイル発射管制は「D6」と呼ばれる秘密基地からしか行えないという。更に、その基地がどこにあるのかも不明だった。そこでD6の場所を知るべく彼らが向かったのはロシア国立図書館であった。苦闘の末、アルチョムは軍事文書保管庫からD6の文書を確保し、仲間の待つ教会へと向かった。
- 第6章:D6
- 数名の犠牲者を出しつつも、一行はD6に到達した。おぞましい悪夢のような光景に打ち勝ち、システムを復旧させてミサイル攻撃システムを復活させることに成功する。あとは誘導装置で攻撃目標をマークすれば、すべてに終止符を打てるだろう。だがアルチョムは疑念を抱いていた。ミラーは此処にあるミサイル攻撃システムで敵を焼き払うというが、既に人類は一度世界を焼いている。
- 第7章:テレビ塔
- プロローグと同じく、仲間たちは次々と命を落とした。アルチョムも絶体絶命かと思われたが、ミラーの奮闘で一時的に敵の攻勢が止んだ。この隙に生き残った2人は敵の包囲を突破し、オスタンキノ・テレビ塔に到達。誘導装置を設置するため塔を登るが、デーモンの襲撃でミラーが負傷。アルチョムは単独で塔の頂上を目指す。人類の未来を賭け、アルチョムはダークワンの巣を殲滅させようとするが…
原作とゲーム版の相違点
ゲーム版は改変がかなり多い。ここでは主だった物のみ挙げる。
- 登場人物がかなり減っている。
- 原作では「20歳過ぎ」と曖昧だったアルチョムの年齢がゲームでは「20歳」と明言されている。
- 最終戦争の起こった年が西暦2013年であると明言されている。
- 原作ではメトロ内にミュータントはほとんど侵入していないが、ゲームでは大量に流入している。
- レンジャーはゲーム版のみの設定。原作では単に「見張り」、「警備員」などと表現されている。
- ブルボンが金銭トラブルを抱えている。彼と共に地上に出る機会がある。またハン(カーン)と知り合いである。彼に待ち受ける結末が異なる。
- ゲーム版は原作よりも地上に出る回数が多い。
- 原作では人間同士で殺し合いをする場面は非常に少ないが、ゲーム版では頻繁に殺し合いをする事になる。
- 原作ではAK47、AK74共に登場するが、ゲーム版ではAK74のみが登場する。
- ゲーム版のみ「戦前に製造され、金銭となる高品質な弾薬」と「戦後に製造され、金銭にならない低品質な弾薬(ただし交換所で高品質の弾薬と交換することは可能なので間接的には金銭になる)」の2種類が存在する。また、高品質な弾薬は銃器に装填して撃つことにより低品質な弾薬よりも高い威力を発揮するが、同時に金銭を撃ち出しているという事にもなるので、残弾管理には注意が必要である。
- ゲーム版においては、先述のバスタードマシンガンなどのような後退した技術により作られた手製の武器が多数登場する。
- 前述の通り、怪現象(ゲームではアノマリーと呼ばれる)がゲーム独自のものに変更されている。
- ゲーム版ではポリスにおけるカースト制度の表現が一切ない。
- キエフスカヤ駅および勝利公園駅での重大な出来事が省かれている。
- D6がミサイル基地の名称になっている。
- ゲーム版ではパーヴェルが死亡し、ダニーラは生き残る。
- 原作とおおむね同じ結末と、原作と全く違った結末の2つが用意されている。
日本語版
日本語字幕の他、日本語吹き替え音声も収録されている。