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メスフラスコ[1]ないし全量フラスコ[2][3](ぜんりょうフラスコ、独: Messkolben、英: volumetric flask)とは、分析化学の分野で試料や溶液を一定量まで希釈するのに用いる、実験ガラス器具の一種である。
メスフラスコはガラスまたはプラスチックで作られ、胴体部の平底の球体と長い首の部分から構成されており、首の開口部は栓で封ができるようになっている。栓は本体と摺合せで出来ているガラス製かプラスチック製である。首部分にはすり加工による水位を示す1つの輪が付けられている(標線)。標線は規定体積を示し、その他には許容誤差や製造メーカー、検定を受けたものは較正温度、精度等級、検定検印などがラベルされている。普通は、無色透明のガラスもしくはプラスチックで作られるが、硝酸銀やビタミンAなど遮光が必要な物質を操作するために、褐色透明の素材で作られるものもある。
メスフラスコは規定溶液を調製するのに用いられる。典型的な操作法の例として1N塩化ナトリウム溶液の調製を例に示す。 規定体積1000mlのメスフラスコに1mol(58.4g)の塩化ナトリウムを投入し、塩化ナトリウムを計った容器の洗いこみを含めておよそ800mlの精製水をメスフラスコに一旦入れる。口に栓をしてメスフラスコを緩やかに振り動かして完全に結晶を溶解し均一化させる[4]とともに、適宜静置して溶液を室温(通例20℃)に馴化させる。その後に精製水を加え、液のメニスカス下面が標線(首部にすり線で示されている線)の上縁に達するまで追加する[5]。メニスカスの観測は首部に黒色背景を置き、メニスカス下面を標線上縁を一致させる[6]。
濃い溶液から規定溶液を作る場合、濃い溶液500mlに精製水500mlを加えても1000mlにならないことに留意すべきで、エタノールと水がよい例であるが、溶液を合わせて均一化すると体積が変化することがある。このような場合は、メニスカスの近傍では水の追加と振とうによる均一化を繰り返して徐々に標線に合わせ込むようにする。
メスフラスコの様な共栓フラスコはバカラクリスタルなどの様な装飾クリスタルデキャンタよりは簡素な形式の、ワイン、ブランデーやモルトウイスキーのようなアルコール飲料のデキャンタとしても使用されてきた。栓をすることで、封をしてあるのとほぼ同等に蒸発による減量を防止する。
メスフラスコには栓が付いている。この栓をしたまま棚にしまってしまうと、栓が本体に固着してしまうため、棚にしまう際は、薬包紙を挟んだり、栓を外した上でしまう必要がある。しかし、薬包紙をいちいち挟むのは手間がかかり、またメスフラスコは用事必ず栓を使用する物なので、本体と栓を別々にしまうのは効率が悪い。 そこで、本体と栓をたこ糸で結わえ付けて、栓を外した状態で一緒に棚にしまえるようにする方法がある[7]。
メスフラスコは加熱してはいけない。加熱膨張と冷却収縮に伴ってガラスに歪みが生じるために保証されている検定公差から逸脱してしまう可能性がある。溶質を加熱溶解しなくてはならないときは、別の容器で加熱溶解させた後、室温まで冷却してからメスフラスコに移すようにする。
洗浄は通常、洗浄剤に浸漬しすすいだ後、蒸留水などでリンスし、逆向けにぶら下げて自然乾燥させる。ブラシなどを入れ、こすって洗浄することは内壁に傷を付け容積変化の原因となるため禁忌である。
全量フラスコには、大別して2つの異なる等級が存在し、許容誤差が異なる[8]。高位規格(Class A、アメリカ薬局方ないしは他国の薬局方相当公定書の基準に相当)は標線が正確で許容誤差が狭く、トレーサビリティーの為にシリアル番号が打たれている。誤差がある程度あっても構わない場合は、低位規格(Class Bないしは相当品)が使われ、定性分析や教育現場などで使用される。
標示された容量は20℃で検定された結果であるが、容器の体積膨張率は室温付近では10-5/K程度であるから室温付近での計量では無視してよい。厳密な公定分析などにおいては、検定票を参照してその容量を補正する。この際は使用する溶媒の膨張率等も考慮しなければならない。 ホールピペットの標示量がガラス表面に付着した濡れを含まない自然流下した液体の体積を表す出用[9]であるのに対し、メスフラスコの体積の標示量はガラス表面に付着した濡れを含む受用[10]である。そのため一定量の体積の液体を計量するためのものではなく、定容に用いられる。出用のメスフラスコも特注品などで存在はするが、その精度は受用に比べて半分程度劣るため[11]、あまり使用されない。
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