ドウモイ酸

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ドウモイ酸

ドウモイ酸(ドウモイさん、ドーモイ酸、domoic acid、略称DA)は、天然由来のアミノ酸(正確にはイミノ酸)の一種で記憶喪失性貝毒の原因物質。神経毒であり、短期記憶の喪失や、脳障害を引き起こし、死に至る場合もある。

概要 ドウモイ酸, 識別情報 ...
ドウモイ酸
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識別情報
CAS登録番号 14277-97-5
PubChem 5282253
ChemSpider 4445428
J-GLOBAL ID 200907039504314352
特性
化学式 C15H21NO6
モル質量 311.33 g mol−1
外観 白色粉末
密度 1.273 g/cm3
沸点

607.2 °C at 760 mmHg (101.3 kPa)

蒸気圧 2.62×10−16 mmHg (34.9 fPa) at 25 °C
危険性
安全データシート(外部リンク) 長瀬産業
Rフレーズ R20 R21 R22
Sフレーズ S36 S37
引火点 321 °C
半数致死量 LD50 3.6 mg/kg(マウス、腹腔)
出典
LD50[1]
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。
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プセウドニッチア属 (Pseudo-nitzschia) やNitzschia navis-varingica[2]珪藻が生産することが明らかになっている。

分子式は C15H21NO6分子量は 311.33。IUPAC名 [2''S''-[2a,3b,4b(1''Z'',3''E'',5''R'')]]-2-カルボキシ-4-(5-カルボキシ-1-メチル-1,3-ヘキサジエニル)-3-ピロロリジン酢酸CAS登録番号は 14277-97-5。プロリンの誘導体でもある。構造的には神経伝達物質L-グルタミン酸の固定アナログである。

単体は融点 213217 °Cで、無色の結晶性粉末。によく溶け、有機溶媒に不溶。

解説

1958年、徳之島で駆虫薬として用いられていた紅藻ハナヤナギChondria armata[3]、現地名ドウモイ)から分離・命名され[4]、1966年に構造決定された[5]。発見者は醍醐皓二カイニン酸と似た性質を示し、グルタミン酸アゴニストとしてグルタミン酸受容体と強く結合して駆虫作用を示す。煮沸消毒を行っても毒性がなくならない特性を持つ。

ドウモイ酸は、異常繁殖した珪藻が活動を停止する際に作り出される。 生物濃縮によって貝類カニアンチョビなどに取り込まれるため、現在では魚介類の輸出入において検査が行われるようになって来ている。カナダのドウモイ酸規制値は 20 ppm である[6]。日本の厚生労働省のサイトに記載されている説明では、記憶喪失性貝毒(ドウモイ酸)については監視体制や規制値を定めていない。輸出する場合には外国の規制値(20 ppm)を準用している。

問題となった事例

  • 1987年の11月から12月にかけて、カナダプリンスエドワード島で養殖のムラサキイガイ(ムール貝)による食中毒が発生した[6]。被害者107人中4人が死亡、12人が重度の記憶障害に陥った。中毒を起こしたムラサキイガイを調べたところ、貝 100 g 当たり 31128 mg のドウモイ酸が検出され、中毒者の摂取量は 60290 mg と推定された(駆虫薬として用いられる量は 30 mg 程度である)。検死解剖などから、海馬に大量のドウモイ酸が取り込まれてグルタミン酸受容体と結合したために脳細胞が興奮・死滅し、中枢神経が侵されたことが分かった。その後、人の致死量は 300 mg/60 kg と割り出された。特に子供や高齢者は注意が必要。赤潮からも検出される。
  • 2010年代後半にはアメリカ合衆国の沖合では潮流の変化で珪藻が大量発生。カリフォルニア州の主力水産資源の一つであるアメリカイチョウガニからも高濃度のドウモイ酸が検出されるようになった。国によりドウモイ酸の濃度に応じた漁業規制が行われるようになり、州の漁業は不振を極めた[7]


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カイニン酸の構造

脚注

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