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ある物理量を基準となる量との比の常用対数によって表した計量単位 ウィキペディアから
デシベル (英語: decibel 記号: dB)は、諸々の物理量を基準量との比によって示すときのその対数のとりかたを示す単位であり[1]、底を10として対数をとり、得られた値をさらに10倍してあることを示す。なお、ベルは対数の底が10であることを示す単位であり、デシは10分の1を示す接頭辞である。もっぱらデシベルが使用され、ベルが単独で計量に使用されることが稀であるがこの理由は後述する。
ベル bel | |
---|---|
デシベル単位で目盛りが降られた騒音計 | |
記号 | B |
種類 | SI併用単位 |
量 | レベル表現 |
定義 | ある量 X と基準値 X0 の比の常用対数を取ったときの値 |
語源 | アレクサンダー・グラハム・ベル |
デシベルは、電気工学や振動・音響工学などの分野で頻用され、音の強さ、音圧レベル、電力比や電気機器の利得等の物理量を、特定の基準に対する比の対数の数値で表すときの単位である。
国際単位系(SI)においては、ベルおよびネーパと並んでSI併用単位に位置付けられている。なおSIにおいて比の対数の数値として表される量は無次元量である。
日本の計量法においては、SI単位のない量についての非SI単位と位置づけられていて、電磁波の減衰量、音圧レベル、振動加速度レベルの3つの物象の状態の量に対応する法定計量単位である[2]。
計量法における定義は次のようになっている[3]。
都合上、まず「ベル」について解説する。
「ベル」の語源は、アレクサンダー・グラハム・ベルが電話における電力の伝送減衰を表わすのに最初に用いたことに由来する[4]。
物理量のレベル表現とは、基準となる物理量に対するその物理量の比を対数で表した量である。底が 10 の常用対数で表す単位がベル(bel、記号: B)、底がネイピア数の自然対数で表す単位がネーパ (neper 記号: Np)である。
基準量を A0 としたとき、物理量 A のレベル表現が LA であるとき
の関係がある。
ベルは十進法における桁の差を表したものと言える。例えば、A が A0 の1000倍、すなわちちょうど3桁大きい場合
となり LA = 3 B である。
例えばゲインが1段で100倍のアンプを2段重ねると、全体のゲインは 100 × 100 で10000倍になる。これをベルであらわすと、1段は2ベル (= log10 100)である。それが 2 + 2 = 4 で、全体で4ベルすなわち10000倍となる。このように、対数で表現することで、倍率と倍率の組み合わせで乗算になる計算を、加算で済ませることができる、という利便性がある。
さらに1000倍×1000倍といった値を扱う分野では1/100万 (=10−6)から100万 (=106)のように幅広い桁数の値を扱うことになるが、ベルの値であれば−6から+6と扱い易い値でとりあつかうことができる。
比を常用対数で表すベルは便利で明快だが、実用上よく使われる 1/10 倍から 10 倍の範囲が −1 B から +1 B となる。つまり多くの場合 −0.x B とか +0.x B となり、少々使い勝手が悪い。そこで値が 10 倍になるよう単位の方を 1/10 倍にしたデシベルが通常使われる。デシベルはベルに 10−1 を意味する SI接頭語デシ(記号: d)を付けたものである。
基準量 A0 に対する A のレベル表現 LA をデシベルによって表すと
となる。 その定義から、 0 dB で 1 倍、 10 dB で 10 倍、 20 dB で 100 倍である。 1 dB は約 1.259 倍である。また「10 dB で 1 桁違う」ことから「1 dB で 0.1 桁違う」とも言える。
デシベルによる表現は、音の強さ(音圧レベル)や、電力の比較、減衰などをエネルギー比で表すのに使用される。音のレベルをdb(デシベル)で示すメーターを、「ピーク・メーター(Peak Meter)」と言う(「たった1人のフルバンド YMOとシンセサイザーの秘密」松武秀樹、勁文社、1981年、p219)。
レベル表現は二つの量の相対的な関係を表現するものだが、絶対的な値を表現するために各分野で基準値である 0 dB に相当する量が定義されている。
電磁波の減衰量、音圧レベル、振動加速度レベルについては、計量法において「取引又は証明」に用いるべき単位としてデシベルを定めている。後 2 者は、それぞれ、音圧 (Pa) および振動の加速度 (m/s2) の基準値に基づいて定義された絶対デシベルである。電磁波の減衰量は比をデシベルで表現したもの(相対デシベル)である。
デシベルは増幅器や減衰器の利得(ゲイン)を表す場合にも用いられる。工学の分野でデシベルを用いて表現する場合、対数をとる対象はパワーに相当する次元の物理量の比とするのが一般的である。
すなわち、デシベルで表す電力利得 LP は、入力電力を Pin 、出力電力を Pout とすると、
である。
一方、電圧や音圧などの交流信号の振幅からデシベルで表す利得LVを求める場合、パワーは振幅の2乗に比例すると仮定し、
として計算する。ここに、Vinは入力電圧、Voutは出力電圧である。 ここで注意する必要があるのは、定義が なのではなく、 の式変形の結果として乗じる係数が20となっている点である。 これは電気回路で入出力のインピーダンスが等しい場合に相当し、この条件下では明らかに以下の関係が成立する。
相対量としてのデシベルは任意にとった基準量との比をデシベルによるレベル表現で表すものである。相対量であることを明示するために dBr という表記をする場合もある。
デシベル値・場の量[5](電圧など)の比・工率の量(電力など)の比を表にして示す。
デシベル値 | 場の量の比 | 工率の量の比 |
---|---|---|
0 dB | 1.000 倍 | 1.000 倍 |
1 dB | 1.122 倍 | 1.259 倍 |
2 dB | 1.259 倍 | 1.585 倍 |
3 dB | 1.413 倍 | 1.995 倍 |
4 dB | 1.585 倍 | 2.512 倍 |
5 dB | 1.778 倍 | 3.162 倍 |
6 dB | 1.995 倍 | 3.981 倍 |
7 dB | 2.239 倍 | 5.012 倍 |
8 dB | 2.512 倍 | 6.310 倍 |
9 dB | 2.818 倍 | 7.943 倍 |
10 dB | 3.162 倍 | 10.00 倍 |
11 dB | 3.548 倍 | 12.59 倍 |
12 dB | 3.981 倍 | 15.85 倍 |
13 dB | 4.467 倍 | 19.95 倍 |
14 dB | 5.012 倍 | 25.12 倍 |
15 dB | 5.623 倍 | 31.62 倍 |
16 dB | 6.310 倍 | 39.81 倍 |
17 dB | 7.079 倍 | 50.12 倍 |
18 dB | 7.943 倍 | 63.10 倍 |
19 dB | 8.913 倍 | 79.43 倍 |
20 dB | 10.00 倍 | 100.0 倍 |
30 dB | 31.62 倍 | 1,000 倍 |
40 dB | 100.0 倍 | 10,000 倍 |
50 dB | 316.2 倍 | 100,000 倍 |
60 dB | 1,000 倍 | 1,000,000 倍 |
場の量で 6 dB は約 2 倍、 12 dB は約 4 倍、 14 dB は約 5 倍、 17 dB は約 7 倍、 18 dB は約 8 倍、 19 dB は約 9 倍、 20 dB は正確に 10 倍である。工率の量では 3 dB は約 2 倍、 6 dB は約 4 倍、 7 dB は約 5 倍、 9 dB は約 8 倍、 10 dB は正確に 10 倍である。
場の量である電圧や電流では 10 倍であることを +20 dB とか 20 dB 大きいといい、 1/10 であることを −20 dB とか 20 dB 小さいという。工率の量である電力では 100 倍であることを +20 dB とか 20 dB 大きいといい、 1/100 であることを −20 dB とか 20 dB 小さいという。一見厄介に思えるが、電圧が 10 倍だと電流も 10 倍で電力は 100 倍ということをすべて +20 dB で表現できる。逆に 10 倍ではそれは電圧のことなのか電力のことなのかいちいち確かめなくてはならず、慣れるとむしろデシベルで表現する方がわかりやすい。
ただし、どんな場合でも電圧の 1/2 が −6 dB になるわけではない。たとえば工率を計測する機器で出力電圧の 1/2 が工率の 1/2 を表す場合、それは −6 dB ではなく −3 dB である。当然のことながら表現する対象を考慮する必要がある。
基準となる物理量をあらかじめ決めておくと、物理量を直ちにデシベルでレベル表現できるようになる。これは音響など特定の分野で非常に便利であり多用される。その例を列挙する。
ただし国際度量衡総会 (CGPM) の立場では、デシベルはあくまで相対量を表すものであり、基準量を示す必要があるとしている。その表現方法として、アメリカ国立標準技術研究所 (NIST) から発行されている「Guide for the Use of the International System of Units (SI)」の 7.4 節に次のように記されている。
ある量の値を表現する場合、量やその測定条件に関する情報を提供するために単位に文字や記号を添えるのは正しくない。そのような場合には量記号に文字や記号を添えるべきである。
例:Vmax = 1000 V
こうではなく:V = 1000 Vmax
従って下記に示す x dBSPL などの表記も正しくなく、 Lp (re 20 µPa) = x dB もしくは Lp/(20 µPa) = x dB と表記するべき、というのが CGPM の立場である。いちいち Lp (re 20 µPa) = x dB などとやっていられない場合(たとえば図中に記入する場合)、 x dB (20 µPa) のような表記を CGPM は認めている。 (要するに CGPM は dBSPL とか dBSIL といった特定用途向けの単位を乱造するのではなく、 20 µPa なり 1 pW/m2 なりの基準量を明示して、 dB はあくまでも相対量として使うべきという主張をしている。)
記号 | Unicode | JIS X 0213 | 文字参照 | 名称 |
---|---|---|---|---|
㏈ | U+33C8 | - | ㏈ ㏈ | デシベル |
Unicodeには、デシベルを表す上記の文字が収録されている。これはCJK互換用文字であり、既存の文字コードに対する後方互換性のために収録されているものであるので、使用は推奨されない[8][9]。
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