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サウロクトヌス(学名:Sauroctonus)は、後期ペルム紀のゴルゴノプス亜目に属する絶滅した獣弓類の属[1]。ロシア連邦タタールスタン共和国から産出したS. progressusとタンザニアから産出したS. parringtoniの2種が知られている[1]。犬歯の発達や頭蓋骨の高さをはじめ、ノクニッツァのような基盤的な属とイノストランケビアのような派生的な属との中間的な形態形質を持つ[1]。
サウロクトヌス | ||||||||||||||||||||||||||||||
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S. progressusのレクトタイプ標本 PIN 156/5 | ||||||||||||||||||||||||||||||
地質時代 | ||||||||||||||||||||||||||||||
後期ペルム紀キャピタニアン | ||||||||||||||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Sauroctonus Bystrow, 1938 | ||||||||||||||||||||||||||||||
シノニム | ||||||||||||||||||||||||||||||
S. progressusのシノニム
S?. parringtoniのシノニム
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種 | ||||||||||||||||||||||||||||||
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1938年にソビエト連邦の古生物学者Alexandra Paulinovna Hartmann-Weinbergは現在のロシア連邦タタールスタン共和国で発見されたゴルゴノプス亜目のいくつかの化石を記載した。本論文で記載された化石の1つは不完全ではあったものの保存の良い頭蓋骨であり、PIN 156/5として登録された。Hartmann-Weinbergは本標本が南アフリカ共和国のアークトグナトゥスの新種であると考え、Arctognathus progressusと命名した。種小名progressusは他のゴルゴノプス類よりも哺乳類的で先進的な数多くの特徴を持つキノドン類との形態的類似性に基づいたものである[2]。その後間もなく、本属は他のゴルゴノプス類よりも強いキノドン類との関係性を持たないことが明らかになり、1940年にはイワン・エフレーモフがロシアの属であるイノストランケビア属の新種に再分類し、Inostrancevia progressusと改名した[3]。1955年、Alexey Bystrovは本種を別の属に分割することを提唱してSauroctonusと命名し、PIN 156/5をレクトタイプ標本に指定した[4]。この提案は直後に後続研究に受け入れられた[5][6][7][3][8][9][10]。属名のSauroctonusは古代ギリシア語で「トカゲ」を意味するσαῦροςと「殺人者」を意味するκτόνοςに由来し、動物食性動物であることを踏まえて「トカゲ殺し」を意味する[4][11]。知られている全ての標本は頭蓋骨が最初に発見されたタイプ産地から産出したものである。これらの化石の中には、PIN 156/6と呼称される、破砕された頭蓋骨・体骨格の前側部分・多数の単離した骨を含む標本がある[3][11]。
確認されたSauroctonusの全ての化石はロシア領のみで記録されており、主に頭蓋骨に基づく標本に代表されるS. progressusに分類されている[3][11][9]。1950年にタンザニアのウシリ層で発見された比較的完全な骨格はGPIT/RE/7113の標本番号を与えられ、ドイツの古生物学者フリードリヒ・フォン・ヒューネがScymnognathus parringtoni[注釈 1]としてフランシス・レックス・パリントンにちなんで記載・命名した[12][11]。1970年にはこの骨格はフランスの古生物学者Denise Sigogneau-Russellによってアエルログナトゥスとして再同定され、Aelurognathus parringtoniとして改名された[5]。古生物学者Eva V. I. Gebauerは2007年に本種をアフリカのサウロクトヌス属に再分類し[7]、2014年にも同様の主張をした[8]。しかし、頭蓋骨の解剖学的特徴に基づく新たな分類ではゴルゴノプス科はロシアの分岐群とアフリカの分岐群の2つに分けられ、GPIT/RE/7113は後者のグループ内のincertae sedisとして残されるため、この分類は2018年に否定された[9]。
本種に分類されている他の標本も存在するが、現在までのところ具体的な分類は判明していない。例えば、保存状態の良好な頭蓋骨SAM-PK-K10034は哺乳類以外の単弓類の夜間視力に関する研究で言及されているが、S. cf. parringtoniとして扱われている[13]。
サウロクトヌスの頭蓋骨長は22.5センチメートルで、中型のゴルゴノプス類であったことが示唆される。頭蓋骨は後側で狭く、また眼窩は小型である。側頭窓は長く伸びており、cranial archは狭く、歯骨はやや高い[14]。ヴィアトコゴルゴンと同様に、サウロクトヌスの口蓋結節は高く、歯が多く、骨の凹凸は弱く、門歯は犬歯よりも後方の歯と比較してわずかに高いのみである[9]。上顎骨において犬歯よりも後方の歯は4本から6本である[15][3]。
サウロクトヌスの分類学的位置は何度も変更されている。1974年にロシアの古生物学者Leonid Petrovich Tatarinovは本属をキナリオプスやスキラコグナトゥスおよびスキラコプスといったアフリカの属と共にゴルゴノプス科キナリオプス亜科に分類した[6]。1989年に出版した書籍の中でSigogneau-Russellはサウロクトヌスをゴルゴノプス亜目の属として扱いつつ、その位置づけを未決定とした[14]。2003年にMikhail Ivakhnenkoがサウロクトヌスをゴルゴノプス科に分類した際には、ゴルゴノプス科のいかなる下位分類群にも分類されなかった[15]。2007年にはGebauerがサウロクトヌスを基盤的なゴルゴノプス科と見なした[7]。こうした分類の変更が繰り返されたため、サウロクトヌスはゴルゴノプス類の中でも位置づけが不確かであり、アフリカの属に近縁とする者もいれば、独自の系統に属すると考える者もいる[9]。
2018年に古生物学Christian KammererとVladimir Masyutinはイノストランケビアやプラヴォスラヴレヴィアおよびスコゴルゴンと共にサウロクトヌスをロシアのゴルゴノプス類のグループに分類した。これは頭蓋骨の特徴、特に翼状骨と鋤骨とが近接することがグループ間で共有されていることに基づくものである[9]。この分類はその後の研究でも引き継がれている[10][16]。
以下のクラドグラムはKammerer and Rubidge (2022)に基づく[16]。
ゴルゴノプス亜目 |
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ゴルゴノプス類で最もよく知られている特徴の1つは、サーベル状の長い犬歯が上下の顎に存在することである。2020年の研究によれば、これに匹敵する形態を持つ先史時代の捕食者は獲物を殺害する様々な技術を持っていた可能性がある。ゴルゴノプス類の中ではサウロクトヌスは近縁のイノストランケビアと異なり顎の開閉角度が小さく、他の属種ほど狩りに特化してはいなかったことが示唆される[17]。
S. progressusはヨーロッパロシアの北東部に位置するタタールスタン共和国の産地Sjomin Ravineで発見されている。この産地の地層は中期ペルム紀(キャピタニアン期)のものであり、細粒の多源砂岩の分かれた層を伴う粘土岩とシルト岩で主に構成されている。この地層には単離した骨や断片的な骨格をはじめとする四肢動物の化石が含まれ、また希少な植物化石も知られている。S. progressusの他に同定された主な四肢動物としてはディキノドン類のイデレサウルスや爬形類のクロニオスクス、分椎目のドゥヴィノサウルス、パレイアサウルス科のスクトサウルスを含む竜弓類、主竜形類のエオラサウルスがいる[18]。
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