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情報と計算の理論的基礎、及びそのコンピュータ上への実装と応用に関する研究分野 ウィキペディアから
計算機科学(けいさんきかがく、英: computer science、コンピューター・サイエンス)またはコンピュータ科学[1]、CSとは[2][3]、情報と計算の理論的基礎、およびそのコンピュータ上への実装と応用に関する研究分野である[4][5][6]。コンピュータサイエンス(computer science)は「情報科学」や「情報工学」とも和訳される[7][注釈 1]。コンピュータ科学には様々な分野がある。コンピュータグラフィックスのように応用に力点がある領域もあれば、理論計算機科学と呼ばれる分野のように数学的な性格が強い分野もある。計算科学は科学技術計算という「計算需要」に応えるための分野であり、それを実現する手段の研究は高性能計算である。また、一見わかりやすい分類として、計算機工学など「ハードウェア」と、プログラミングなど「ソフトウェア」という分類があるが、再構成可能コンピューティングのようにその両方といえる分野があるなど、単純に分類ができるようなものではない。
そろばん(アバカス)や、一種のアナログ計算機といえるような機械といった、計算を手助けするものは古代から存在していた。「計算機械」と今日言われるような機械としては、最初の機械式計算機がヴィルヘルム・シッカートによって1623年に作られた[8]。チャールズ・バベッジはヴィクトリア朝時代にプログラム可能な解析機関を設計した[9]。1890年にはハーマン・ホレリスの発明したパンチカードシステムが米国勢調査に初めて使用されている[10]。
1920年代以前、「computer」という言葉は仕事として計算を行う人(計算手)を指していた。しかしこの時代に、現代に通じる計算理論と計算模型が考案されている。クルト・ゲーデル、アロンゾ・チャーチ、アラン・チューリングなど、後に計算機科学と呼ばれるようになる分野の先駆者は、計算可能性、すなわち(特別な前提知識や技能なしに)紙と鉛筆と命令書だけでどのようなものが計算できるか、に興味を抱いた。この研究は、一部には人間に付き物の間違いをすることなく自動的に計算を行う「計算する機械」を開発したいという欲求に基づくものであった。この重要な洞察は、あらゆる計算作業を(理論上)全て実行可能な汎用の計算システムを構築することを意味し、それまでの専用機械を汎用計算機の概念に一般化した。汎用計算機という概念の創造が現代の計算機科学を生み出したのである。
1940年代に入り、より新しくかつ強力な計算機が開発されるにつれて、「computer」という言葉は人間ではなくそういった機械を指す言葉となった。1940年代から1950年代にかけて、次々と電子式コンピュータが建造され、1950年代末には基本的な考え方としては現代にまで引き継がれている仕組みが(いわゆるプログラム内蔵方式など)完成した。前述の、米国の国勢調査においてパンチカードシステムが有用であった事例などもあるように、科学技術などにおける数の計算(いわゆる数値解析的な計算)だけではなく、もっと一般の事務処理などといったデータ処理にもこういった機械は有用だということは以前から明らかになっていたわけだが、そういった、「狭義の計算」より広い意味を指す語として1960年ごろには[注釈 2]、主に学術方面ではInformation Processing(情報処理)という熟語が使われるようになり、機械翻訳やパターン認識のような、数値計算ではない応用の研究が始まった。また、主に産業方面ではData Processing(データ処理)という熟語もあり、EDPという3文字語などもあった。コンピューティングという語の意味はそれらを含む広い意味とされるようになり、計算機科学はそれらを扱う科学ということになった。1960年代には計算機科学は独立した学問分野として確立され、大学などで計算機科学科の設立と学位認定が行われるようになった[11]。実用的なコンピュータが利用可能になると、その様々な応用が下位領域を形成していった。2000年前後には「IT」という語が流行した。
一部の大学にはコンピュータ科学を専攻とする部門がある。まず近年、コンピュータ科学と計算装置(コンピュータ)が普及させているものとして、すべての人にとって基本的な技術としての「計算論的思考」(Computational Thinking)というものが考えられており(詳細は文献[12]を参照)、後述する国際学会が取りまとめているカリキュラムでも重視されている。各論的カリキュラムとしては、離散構造、プログラミング、計算理論、アルゴリズム解析、形式手法、並行性理論、データベース、コンピュータグラフィックス、システム解析などがある。
またスタンフォードではComputer Science Department(CS)だが、バークレイやMITなどではElectrical Engineering and Computer Science(EECS)というように、一般にこの分野のトップクラスと目されている大学のいくつかでは電気電子工学(日本語では使い分けられるが、英語ではElectrical Engineeringにまとめられていることも多い)を名前に付けている。
コンピュータ科学専攻のためのカリキュラム案としては、国際学会ACMがとりまとめているものがあり、1968年の Curriculum 68 以来定期的に情勢に合わせ見直されている。2015年現在の最新版は CS 2013(Computer Science 2013: Curriculum Guidelines for Undergraduate Programs in Computer Science)である。日本の情報処理学会もこれに合わせ「カリキュラム標準」を発表しており、2015年現在の最新版はJ07[13]である。
他のコンピュータ科学以外の専攻においても、プログラミングが教えられているが、それらはもっぱら、コンピュータ科学の一部としてよりも、物理や化学、あるいは計算言語学といった分野において、コンピュータを道具として使うためのものとして教えられている。
なお、「コンピュータ科学」という用語について、情報処理学会のカリキュラムJ97(『大学の理工系学部情報系学科のためのコンピュータサイエンス教育カリキュラム J97[14]』)では、「コンピュータサイエンス」を「情報工学、情報科学、計算機科学、計算機工学などの総称」としているが、それぞれの語に特に定義を与えているわけでもないため、語がてんでに使われている実態を反映したものと思われる。
当然ながら、メタ分析によれば、コンピュータサイエンスの一部は、他の分野と同様、研究者のバイアスによってある程度歪められており、研究を行う際には、学界に存在するバイアスを意識することが望ましい[15]。
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学問としての歴史は浅いが、計算機科学は科学と社会への数々の根源的貢献をしてきた。
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計算機科学と関係の深い学問分野として、経済学、数学、物理学、言語学などを挙げることができる。一部の人々[誰?]は計算機科学は数学と関連が深いとみなしているという[11]。初期の計算機科学はクルト・ゲーデルやアラン・チューリングなどの数学での業績に強い影響を受けていたし、数理論理学、圏論、領域理論、代数学といった領域は計算機科学と数学の間でアイデアをやり取りする領域となっている。
計算機科学とソフトウェア工学の関係は論争の的である。「ソフトウェア工学」という言葉が表すものが何か、計算機科学の範囲をどう定めるかは長年の議論の対象となっている。一部の人々[誰?]はソフトウェア工学が計算機科学の一部であると信じている。他の人々は、計算機科学が計算全般を扱う学問であるのに対して、ソフトウェア工学は実用的な目的でコンピュータ処理を設計するものであり、異なる学問分野であると考えている。この見方の例としてデイビッド・パーナスがいる[18]。他の人々[誰?]はソフトウェアは全く工学的に扱うことはできていないと考えている。
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