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オマリズマブ(Omalizumab)は、元々はアレルゲンに対する感受性を低下させることを目的として開発された薬であるが、一般的に高用量のコルチコステロイドに反応しない重度のアレルギー性喘息の治療に処方されることが多い。慢性特発性蕁麻疹にも使われることがある。
モノクローナル抗体 | |
---|---|
種類 | 全長抗体 |
原料 | ヒト化 (マウスより) |
抗原 | IgE Fc region |
臨床データ | |
発音 | oh-ma-liz'-oom-ab |
販売名 | Xolair |
Drugs.com | monograph |
MedlinePlus | a603031 |
ライセンス | EMA:リンク、US Daily Med:リンク |
胎児危険度分類 | |
法的規制 | |
薬物動態データ | |
半減期 | 26 days |
識別 | |
CAS番号 | 242138-07-4 |
ATCコード | R03DX05 (WHO) |
DrugBank | DB00043 |
ChemSpider | none |
UNII | 2P471X1Z11 |
KEGG | D05251 |
ChEMBL | CHEMBL1201589 |
化学的データ | |
化学式 | C6450H9916N1714O2023S38 |
分子量 | 145,058.53 g·mol−1 |
オマリズマブは、組換えDNA由来のヒト化IgG1kモノクローナル抗体で、血液や間質液中の遊離ヒト免疫グロブリンE(IgE)、およびBリンパ球の表面上の膜結合型IgE(mIgE)に特異的に結合する[2]。通常の抗IgE抗体とは異なり、肥満細胞、好塩基球、抗原提示樹状細胞の表面に存在する高親和性IgE受容体(FcεRI)に既に結合しているIgEには結合しない[3]。
オマリズマブは、経口または注射のコルチコステロイドではコントロールできない重症で持続性のあるアレルギー性喘息の治療に使用される[5]。これらの患者は、すでにステップIからステップIVの治療に失敗し、ステップVの治療を受けている。このような治療法は、1993年に米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)の米国国立心肺血液研究所(National Heart, Lung, and Blood Institute)と世界保健機関(World Health Organization)が共同で立ち上げた医療ガイドラインである喘息管理に関する国際指針(GINA、Global Initiative of Asthma)が発表した、喘息の管理と予防のために広く採用されているガイドラインと一致している[6]。
オマリズマブは、抗ヒスタミン薬(H1ブロッカー)の効果が不充分な成人および青少年(12歳以上)の慢性特発性蕁麻疹を適応としている[7][8]。オマリズマブを4週間に1回皮下投与することにより、痒みの程度および丘疹数を有意に減少させることが示されている[7][8][9]。
留意すべき重大な副作用は、ショック、アナフィラキシーである[4]。発生頻度は1000人中1~2人である[5][10]。
オマリズマブが心血管疾患(CV)または脳血管疾患(CBV)の発症リスクを高めるか否かを確認できる研究は限られている。コホート研究や無作為化対照研究では、オマリズマブを服用している患者では、オマリズマブを服用していない患者と比較してCV/CBV疾患の発症リスクが約20~32%高いことが示されている[要出典]。オマリズマブとCV/CBV疾患との関係や臨床的意義をさらに明らかにするためには、対象者数を増やした多国間の縦断的研究をさらに行う必要がある[要出典]。CV/CBV疾患の副作用は重篤であるため、臨床医や医療従事者は、オマリズマブで患者を治療する際には、引き続き警戒して副作用を監視しなければならない。
IgEは、免疫系によるがん細胞の認識に重要な役割を果たしている可能性がある[11]。従って、オマリズマブを用いてIgEと受容体の相互作用を非選択的に遮断することは、予期せぬリスクを伴う可能性がある。2003年に行われた初期の第I相から第III相までの臨床試験で収集されたデータによると、オマリズマブの投与を受けた患者に発生した悪性腫瘍(0.5%)は、対照群(0.2%)と比較して数値的に不均衡であったが有意差は無かった[5]。2012年の研究結果では、癌との因果関係は考え難い[12]。
抗IgE療法用抗体を設計した根拠や、抗IgE療法の薬理学的メカニズムについて、総説に纏められている[3][13][14]。
おそらく最も劇的な効果は、抗IgE療法が考案された時点では予測されておらず、臨床試験中に発見されたものであるが、オマリズマブによって患者の遊離IgEが減少すると、好塩基球、マスト細胞、樹状細胞のFcεRI受容体が、幾分異なる速度で徐々に低下し、これらの細胞がアレルゲンによる刺激に対する感受性を大幅に低下させることである[15][16][17]。従って、オマリズマブのような治療用抗IgE抗体は、新しいクラスの強力な肥満細胞安定化薬となる[14]。これが、肥満細胞の脱顆粒を伴うアレルギー性および非アレルギー性疾患に対するオマリズマブの効果の基本的なメカニズムであると考えられている。多くの研究者が、オマリズマブを投与された患者の炎症状態を低下させる多くの薬理作用を同定または解明している[18][19][20]。
アレルギー疾患の治療法として抗IgE療法の適用性を検討するという現実的な目標を達成すると同時に、喘息、アレルギー性鼻炎、ピーナッツアレルギー、慢性特発性蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、その他のアレルギー疾患を対象としてタリズマブおよびオマリズマブについて企業が実施した多くの臨床試験は、これら広範囲のアレルギー疾患の病因におけるIgEの役割を明確にするのに役立った。例えば、喘息に対するオマリズマブの臨床試験結果は、喘息の発症にIgEが中心的な役割を果たしているかどうかについての長い議論に明確に決着をつけた[19]。さまざまなアレルギー性疾患や非アレルギー性疾患、特に炎症性皮膚疾患に対して、医師主導のケーススタディや小規模なパイロットスタディが数多く行われている。これらの疾患には、アトピー性皮膚炎、さまざまなタイプの物理的蕁麻疹(光線性、寒冷性、局所性温熱性、遅発性圧迫性)、および比較的罹患率の低いアレルギー性または非アレルギー性の疾患や状態〔アレルギー性気管支肺アスペルギルス症[21]、皮膚性または全身性肥満細胞症、蜂毒過敏症(アナフィラキシー)[22]、特発性アナフィラキシー、好酸球関連胃腸障害、水疱性類天疱瘡[23]、間質性膀胱炎[24]、鼻ポリープ、特発性血管浮腫[25]など〕が含まれる。
オマリズマブが非アレルギー性の喘息患者に有効である可能性があるという臨床試験結果が幾つか報告されている[26]。これは、上述した抗IgE療法の薬理学的メカニズムに関する一般的な理解に反していると思われる[27]。また,オマリズマブの有効性・安全性が検討されている疾患の中には,外部抗原に対する過敏反応が関与していないため,アレルギー疾患ではないものも存在する。例えば、慢性特発性蕁麻疹の一部[28][29]や水疱性類天疱瘡の全例[23]は明らかに自己免疫疾患である。残りの慢性特発性蕁麻疹や物理的蕁麻疹のさまざまなタイプの症例では、疾患の発現につながる内部の異常は特定されていない。しかし、これらの疾患の多くは、皮膚の炎症反応やマスト細胞の活性化が関与していることが明らかになっている。IgEが肥満細胞の活動を増強すること[30]、オマリズマブが肥満細胞の安定化剤として機能し[14]、これらの炎症細胞の活動を低下させることを示す論文が増えてきている。
オマリズマブは、改変したチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)株から産生されるグリコシル化IgG1モノクローナル抗体である[3]。抗体分子は、大型バイオリアクターを用いた細胞培養時に、宿主細胞から分泌される。培養終了後、培地に含まれるIgGは、タンパク質Aを吸着剤とするアフィニティカラムで精製した後、クロマトグラフィーを経て、UF/DF(限外濾過/深層濾過)で濃縮される。
オマリズマブは、数年間は乾燥粉末製剤のみが提供されており、注射する前に医師の診察室で溶液を調製する必要があった。現在では、日本を含む多くの国で薬剤充填済注射器での液体製剤が販売されている[31]。
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