エメラルド・タブレット
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エメラルド・タブレット(英: Emerald Tablet)、タブラ・スマラグディナ(羅: Tabula smaragdina)は、12世紀以降のヨーロッパに出現した、ヘルメスに帰せられた諸文献のうち特に名の知れたごく短いテクストである[1]。エメラルド板、エメラルド牌、エメラルド碑文、緑玉板とも。
エメラルド板をめぐって中世ヨーロッパでは多くの伝説が作られた[2]。伝説上のエメラルド板は、錬金術の守護神で、ある種の秘教修道者たちの総称とも考えられていたヘルメス・トリスメギストスによって記された銘碑で、12の錬金術の奥義が記されているというが、碑文の実物は現存しない[3]。実際のエメラルド板のテクストはアラビア語文献からの翻訳と考えられており、さらにその元になった古いギリシア語原典の存在も想定されてはいるが[1]、ギリシア語で記された佚文や原テクストに相当するようなものは現存しない[4]。エメラルド板の起源について確証があるのは8世紀以降にアラビア語で記されたということであり、知られる限りのその初出はバリーヌース(偽テュアナのアポロニオス)の『創造の秘密の書 (Kitāb sirr al-khalīqa)』というアラビア語の書物に収められた補遺である[4]。少なくとも、エジプトのアレクサンドリア界隈で後3世紀までに成立したヘルメス文書群よりも後代の作品である蓋然性が高い[5]。