アヴェスター文字

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アヴェスター文字とは、アヴェスター語を表記するための文字。アラビア文字などと同様に、右から左へ書かれる。

アヴェスター文字
類型:	アルファベット
言語:	アヴェスター語
時期:	4世紀 - 12世紀
親の文字体系:	原カナン文字 フェニキア文字 アラム文字 パフラヴィー文字 アヴェスター文字
Unicode範囲:	U+10B00-10B3F
ISO 15924 コード:	Avst
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音素文字の歴史
青銅器時代中期-原シナイ 前19-15世紀 ウガリット 前15世紀 原カナン 前14世紀 フェニキア 前11世紀 古ヘブライ 前10世紀 サマリア 前6世紀 アラム 前9世紀 ブラーフミー 前6世紀 （インド系） チベット 7世紀 クメール 7世紀 ジャワ 9世紀 他多数 ヘブライ 前3世紀 シリア 前2世紀 ナバテア 前2世紀 アラビア 4世紀 ペルシア 7世紀 ウルドゥ 11世紀 ターナ 18世紀 パフラヴィ 前2世紀 アヴェスタ 4世紀 ソグド 突厥 5世紀 ウイグル 8世紀 (契丹小字 10世紀) (女真小字 12世紀) モンゴル 13世紀 満洲 16世紀 シベ 20世紀 トド 17世紀 ワキンダラー 20世紀 ギリシア 前9世紀 エトルリア 前8世紀 ラテン 前7世紀 ルーン 2世紀 オガム 4世紀 ゴート 4世紀 コプト 300年 グルジア 4世紀 アルメニア 405年 グラゴル 862年 キリル 10世紀 イベリア 前6世紀 南アラビア 前9世紀 ゲエズ 前5–6世紀
メロエ 前3世紀
カナダ先住民 1840年
注音 1913年

概要

アヴェスター文字は、ゾロアスター教の聖典である『アヴェスター』用の典礼言語であるアヴェスター語を表記するための文字として、パフラヴィー文字から派生的に生み出されたアルファベットの一種である。

『ヴェーダ』の典礼言語であるサンスクリット語を表記する文字が、かなり後代になってから整えられたのと同様、『アヴェスター』（アヴェスター語）も、このアヴェスター文字の成立よりはるか前から成立・伝承してきたものである点に、注意が必要。

文字

字形および現在一般的なラテン文字転写は以下の様なものである。転写方法にはこれ以外もあり、特に古い書籍ではかなりの不統一が見られるが、一応ウィキペディア日本語版ではこれを標準とする。

母音文字

文字	転写	発音	備考
𐬀	a	/a/	短母音「ア」
𐬁	ā	/a:/	長母音「アー」
𐬂	å	/ɒ/	アとオの間のような広い短母音「オ」
𐬃	ā̊	/ɒ:/	アとオの間のような広い長母音「オー」
𐬄	ą	/ã/	鼻母音「アン」
𐬅	ą̊	/ã:/	ąと同様の鼻母音と考えられる
𐬆	ə	/ə/	曖昧母音シュワー。カナ転写では「ウ」段で表される。
𐬇	ə̄	/ə:/	əの長音。
𐬈	e	/e/	短母音「エ」
𐬉	ē	/e:/	長母音「エー」
𐬊	o	/o/	短母音「オ」
𐬋	ō	/o:/	長母音「オー」
𐬌	i	/i/	短母音「イ」
𐬍	ī	/i:/	長母音「イー」
𐬎	u	/u/	短母音「ウ」
𐬏	ū	/u:/	長母音「ウー」

子音文字

文字	転写	発音	備考
𐬐	k	/k/	無声軟口蓋破裂音「カ」
𐬑	x	/x/	無声軟口蓋摩擦音「ッハ」
𐬒	x́	/xʲ/, /ç/	硬口蓋化無声軟口蓋摩擦音、無声硬口蓋摩擦音「ヒャ」の「ヒ」
𐬓	xᵛ	/xʷ/	唇音化無声軟口蓋摩擦音「ッフヮ」
𐬔	g	/ɡ/	有声軟口蓋破裂音「ガ」
𐬕	ġ	/ɡʲ/, /ɟ/	口蓋化有声軟口蓋破裂音、有声硬口蓋破裂音
𐬖	γ	/ɣ/	有声軟口蓋摩擦音「ガア」の「ガ」
𐬗	c	/ʧ/	無声後部歯茎破擦音
𐬘	j	/ʤ/	有声後部歯茎破擦音
𐬙	t	/t/	無声歯茎破裂音「タ」
𐬚	ϑ	/θ/	無声歯摩擦音
𐬛	d	/d/	有声歯茎破裂音「ダ」
𐬜	δ	/ð/	有声歯摩擦音
𐬝	t̰	/t̚/	内破音無声歯茎破裂音
𐬞	p	/p/	無声両唇破裂音「パ」
𐬟	f	/f/	無声唇歯摩擦音
𐬠	b	/b/	有声両唇破裂音「バ」
𐬡	β	/β/	有声両唇摩擦音「サブ」の「ブ」
𐬢	ŋ	/ŋ/	軟口蓋鼻音「健康（ケンコウ）」の「ン」
𐬣	ŋ́	/ŋʲ/
𐬤	ŋᵛ	/ŋʷ/	唇音化軟口蓋鼻音
𐬥	n	/n/	歯茎鼻音「ナ」
𐬦	ń	/ɲ/	硬口蓋鼻音「ニャ」の「ニ」
𐬧	ṇ	/ŋ/	軟口蓋鼻音「健康（ケンコウ）」の「ン」
𐬨	m	/m/	両唇鼻音「マ」
𐬩	m̨	/m̥/, /mʰ/	両唇鼻音「マ」、
𐬪	ẏ	/j/	硬口蓋接近音「ヤ」
𐬫	y	/j/	硬口蓋接近音「ヤ」
𐬌𐬌	ii	/ii̯/	非円唇前舌狭母音「イ」の長音「イー」
𐬬	v	/v/	有声唇歯摩擦音「ヴ」
𐬎𐬎	uu	/uu̯/	円唇後舌狭母音「ウマ」の「ウ」の長音「ウー」
𐬭	r	/r/	歯茎ふるえ音「ラ」の巻き舌
𐬯	s	/s/	無声歯茎摩擦音「サ」
𐬰	z	/z/	有声歯茎摩擦音「ワザ」の「ザ」
𐬱	š	/ʃ/	無声後部歯茎摩擦音
𐬲	ž	/ʒ/	有声後部歯茎摩擦音「アジ」の「ジ」
𐬳	š́	/ɕ/	無声歯茎硬口蓋摩擦音「詩歌（シイカ）」の「シ」
𐬴	ṣ̌	/ʂ/	無声そり舌摩擦音
𐬵	h	/h/	無声声門摩擦音「ハ」

合字

• 𐬱𐬀 /ʃa/ = 𐬀 /a/ + 𐬱 /ʃ/ （参照：ش + ا = شا）
• 𐬱𐬗 /ʃʧ/ = 𐬗 /ʧ/ + 𐬱 /ʃ/ （参照：ش + ج = شج）
• 𐬱𐬙 /ʃt/ = 𐬙 /t/ + 𐬱 /ʃ/ （参照：ش + ت =شت）
• 𐬀𐬵 /ah/= 𐬵 /h/ + 𐬀 /a/ （参照：ا + ه =اه）

約物

写本には句読点が乏しかったり、存在しなかったりしたため、カール・フリードリヒ・ゲルトナーが1880年代に標準的な表記法を開発した。彼が自身の研究結果に基づいて開発したこの方法では、3つの点が三角形を形成し、その役割は点のサイズと配置 (上に1つの点、下に2つの点𐬽、または上に2つの点、下に1つの点𐬼) によって決まり、コロン、セミコロン、文末のピリオド、セクションの終了の役割を果たす。^[1]

Unicode

Unicode では、U+10B00-10B3Fの領域に文字が収録されている。

U+	0	1	2	3	4	5	6	7	8	9	A	B	C	D	E	F
10B0x	𐬀	𐬁	𐬂	𐬃	𐬄	𐬅	𐬆	𐬇	𐬈	𐬉	𐬊	𐬋	𐬌	𐬍	𐬎	𐬏
10B1x	𐬐	𐬑	𐬒	𐬓	𐬔	𐬕	𐬖	𐬗	𐬘	𐬙	𐬚	𐬛	𐬜	𐬝	𐬞	𐬟
10B2x	𐬠	𐬡	𐬢	𐬣	𐬤	𐬥	𐬦	𐬧	𐬨	𐬩	𐬪	𐬫	𐬬	𐬭	𐬮	𐬯
10B3x	𐬰	𐬱	𐬲	𐬳	𐬴	𐬵				𐬹	𐬺	𐬻	𐬼	𐬽	𐬾	𐬿