共通農業政策
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共通農業政策(きょうつうのうぎょうせいさく)とは、欧州連合 (EU) における農業補助に関する制度や計画を扱う政策。英語表記の Common Agricultural Policy の頭文字をとって CAP とも表記する。共通農業政策に充てられるEUの予算は2005年度で4300億ユーロとなっており、この額は全体のおよそ44%を占めている[1]。
共通農業政策では生産高や耕地に対する補助金の直接支払いと価格維持メカニズムが組み合わされており、また農作物の最低価格の保証、域外からの特定農業生産品に対する関税の賦課や輸入量制限の実施も行っている。補助金制度については改革が進められており、2005年から2012年にかけては輸入量制限の緩和や、補助金について生産高に基づく支給から農地の管理に基準を置く方式へと段階的に移行している。制度の実施の細かい部分は加盟国ごとに違いがあるが、たとえばイギリスでは農家への直接支給が定められた単一支払制度が導入されている。直接支払いにあたっては以下の要件を満たすことが求められる。
- 対象農地において「適正な状態」 (Good Agricultural Condition) が維持されている。
- 多角化や生産者組合を設立するなどの農村部の発展に貢献している。
- 環境に寄与するような農地運営を実施している[2]。
1992年以前にはEUの農業に関する支出が予算全体の61%近くを占めていたが、2013年までに従来の共通農業政策の支出が占める割合をおよそ半分の32%にまで抑えるという方針が決まっている。これとは逆に1988年で予算全体の17%となっていた地域政策の支出を、2013年にはおよそ2倍の36%にすることになっている[3]。
共通農業政策の目的とは、農家に対しては適切な生活水準を、消費者に対しては適正な価格で良質な食品をそれぞれ提供するということ、さらには農業という文化的な遺産を保護するということである。共通農業政策は社会の変化に直面しており、食品の安全や環境保護、採算性、代替燃料への転作といったものが次第に重要度を増している。