Isabel Rosanoff Plesse所著的《野口英世與他的生涯》(Noguchi and His Patrons)[16]中認為他的研究在今天看來幾乎都沒有意義。當時沒有人察覺,完全是因為他的背後存在著一位權威—Simon Flexner(英語:Simon Flexner),而阻擋了檢驗和批判的緣故。[17][18]
Susan E. Lederer. Subjected to Science Human Experimentation in America before the Second World War. Johns Hopkins University Press. : 86. ISBN 9780801857096.
Wilson G.S. Faults and Fallacies in Microbiology: The Fourth Marjory Stephenson Memorial Lecture. Microbiology. 1959, 21 (1): 1–15. doi:10.1099/00221287-21-1-1.
同時期に同じ研究室で仕事をしていたハンス・ジンサー(Hans Zinsser)は、英世の方法により繰り返し純粋培養された野口株が病原性を失い、非病原性の梅毒スピロヘータの混入により変成した可能性があると報告した。((a) Zinsser, H.; Hopkins, J. G.; Gilbert R. "NOTES ON THE CULTIVATION OF TREPONEMA PALLIDUM" J. Exp. Med. 1915, 21(3), 213-221. (b) Zinsser, H.; Hopkins, J. G. "ANTIBODY FORMING AGAINST TREPONEMA PALLIDUM-AGGLUTINATION" J. Exp. Med. 1915, 21(6), 576-582.)。一方、英世の報告に遅れて単離されたニコルズI株は、純粋培養には失敗したものの病原性を有し(Nichols, H. J.; Hough, W. H. "Demonstration of Sprochaeta pallida in the cerebrospinal fluid from a patient with nervous relapse following the use of salvarsan" J. Am. Med. Assoc. 1913, 60, 108-110.)、生きた動物の睾丸を介して継代培養されて來た。試験管內でのニコルズI株の培養は、1981年にハワード・フィールドスティールらによって成功が報告され、別のグループによって獨立に追試されたが、死んだウサギの睾丸の組織を培地としており、現在でも完全な純粋培養の報告例はない((a) Fieldsteel, A. H.; Cox, D. L.; Moeckli, R. A. "Cultivation of Virulent Treponema pallidum in Tissue Culture" Infect. Immun. 1981, 32(2), 908-915.(b) Norris, S. J. "In Vitro Cultivation of Treponema pallidum: Independent Confirmation" Infect. Immun. 1982, 36(1), 437-439. )。今日野口株として保存されている標本の遺伝子の型は、病原性のTreponema pallidumではなく、非病原性のTreponema refrigensという別種のものであり、両者ともに1905年にドイツのフリッツ・シャウディン(Fritz Schaudinn)とエーリヒ・ホフマン(Erich Hoffmann)らのグループによって梅毒患者から単離と新種記載を報告された梅毒スピロヘータである。非病原性の梅毒スピロヘータであるTreponema refrigensと、英世本人が1912年に新種記載と純粋培養を報告した別の非病原性の梅毒スピロヘータであるTreponema phagedenis (Noguchi, T. "PURE CULTIVATION OF SPIROCHÆTA PHAGEDENIS (NEW SPECIES), A SPIRAL ORGANISM FOUND IN PHAGEDENIC LESIONS ON HUMAN EXTERNAL GENITALIA" J. Exp. Med. 1912, 16(3), 216-268.)とは、英世の純粋培養の報告と前後して他に5例の純粋培養が報告されており、英世が最初ではない。また一般に非病原性梅毒スピロヘータを含むトレポネマ屬は嫌気性細菌であり、英世も病原性梅毒スピロヘータの純粋培養には酸素の完全な除去が必須であると強調し、獨自の酸素除去の実験項を含めて論文に報告したが、後に病原性梅毒スピロヘータであるTreponema pallidumがトレポネマ屬としては例外的に酸素を必要とする微好気性細菌であることが判明し、フィールドスティールらのニコルズI株の試験管培養も1.5%の酸素濃度下で成功しており、病原性梅毒スピロヘータの培養には酸素濃度のコントロールが重要であった。英世が報告した方法では病原性梅毒スピロヘータの増殖が困難であることから、現在では英世は病原性梅毒スピロヘータの純粋培養には成功していなかったと考えられている。