行動遺伝学
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行動遺伝学(こうどういでんがく、英: Behavioural genetics)とは、行動における個人差の本質と起源を調査するために遺伝学的手法を用いる科学的研究分野である。 「行動遺伝学」という名称は遺伝的影響に焦点を当てていることを示唆しているが、この分野では、遺伝的要因と環境的要因が個人差にどの程度影響を与えているのか、また、遺伝子と環境の交絡を取り除くことができる研究デザイン(英語版)の開発を広く研究している。行動遺伝学は、19世紀後半にフランシス・ゴルトンによって科学的分野(英語版)として設立されたが、第二次世界大戦の前後に優生学運動と関連付けられたことで信用を失った。20世紀後半になると、この分野は、人間の行動と精神疾患の遺伝に関する研究(典型的には双生児と家族の研究(英語版)を使用)、および選択的交配と交配による遺伝的に有益なモデル生物の研究によって、再び注目されるようになった。20世紀後半から21世紀初頭にかけて、分子遺伝学の技術的進歩により、ゲノムを直接測定し、修飾することが可能になった。これにより、モデル生物の研究(例えばノックアウトマウス)や人間の研究(例えばゲノムワイド関連研究)で大きな進歩があり、新しい科学的発見につながった。
行動遺伝学研究の知見は、行動に対する遺伝的および環境的影響の役割に関する現代の理解に広く影響を与えている。これには、研究されたほとんどすべての行動が、かなりの程度の遺伝的影響を受けているという証拠や、その影響は個人が成人になるにつれて増加する傾向があるという証拠が含まれる。さらに、研究された人間の行動のほとんどは、非常に多数の遺伝子の影響を受けており、これらの遺伝子の個々の影響(英語版)は非常に小さい。環境的影響も強い役割を果たしているが、それらは家族を互いに似ているようにするのではなく、互いに異なるようにする傾向がある。