相補的DNA
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相補的DNA(そうほてきDNA、complementary DNA)は、mRNA から逆転写酵素を用いた逆転写反応によって合成された二本鎖 DNA。一般には「相補的」を意味する英語、complementary の頭文字をとって、cDNA と省略される。遺伝子の上でタンパク質に翻訳される領域の配列が開始コドンから終止コドンまで一続きに含まれているため、タンパク質の一次構造(アミノ酸配列)を解明する出発点として、また人工的にタンパク質を発現させる目的でも単離される。
ヒトを始めとする真核生物では、遺伝子はゲノム上にコードされているものの、多くはそこから転写された mRNA前駆体がスプライシングを受けてイントロンが除去されるまでは蛋白質に翻訳されない情報も含んでいる。 そこで、スプライシング済みの成熟mRNA から cDNA を合成すればイントロンを含まない状態の遺伝子(塩基配列)を知ることができることから、遺伝子のクローニングに広く利用されている。
また、mRNA はスプライシング以外にも RNAエディティングという加工が起こるため、対応するゲノムDNA と cDNA の比較を行うことによって、エディティングサイトの特定が可能となる。
cDNA合成を逆転写酵素によって行ったのち、
- λファージベクターやプラスミドにクローニングし、cDNAライブラリーを作製。標識プロープや抗体などにより cDNA ライブラリーをスクリーニングして、特定遺伝子の cDNA を単離する。
- PCR法により、既知の塩基配列の情報をもとに、特定配列を増幅する(RT-PCRという)。それを直接解析するか、プラスミド等にクローニングした後、解析を行う。この方法を工夫して、未知の 5'側配列、3'側配列を増幅するのに、RACE法(Rapid Amplification of cDNA end) と呼ばれる cDNA増幅法がある。
- サブトラクション法などによって、未知であるが、遺伝子発現量に差がある cDNA のみを増幅し、それを単離する。
といった解析が行われる。