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陸上自衛隊の組織 ウィキペディアから
水陸機動団(すいりくきどうだん、英称:Amphibious Rapid Deployment Brigade[1])は、陸上自衛隊陸上総隊隷下の部隊で、長崎県佐世保市の相浦駐屯地に団本部が駐屯する水陸両用作戦部隊。略称は水機団[2](すいきだん)。報道等では「日本版海兵隊」とも称される[3][4][5]。
団長は陸将補が充てられ、相浦駐屯地司令を兼ねる。2024年時点の隊員数は約3,300人[6]。部隊章には霊鳥「金鵄」と三種の神器の一つである「天叢雲剣」が描かれている。
2013年(平成25年)に策定された平成26年度以降に係る防衛計画の大綱について(25大綱)に基づき、2018年(平成30年)3月27日に新編された。21世紀初頭、中華人民共和国(以後は中国と表記)は増大する経済力に合わせるように、軍事力を国外へ膨張させてゆく状態にあった。中国は第一列島線に示されるようにその防衛線を周辺国に設定し、これに合わせる様に中国人民解放軍海軍は原子力潜水艦や航空母艦などをはじめとする水上戦闘艦艇の配備を推し進め、中国海上治安当局の船艇が尖閣諸島周辺で領海侵入を繰り返すようになった。またそれまで台湾への侵攻を主目的とした上陸訓練に、新たな回収目標として日本の尖閣諸島も追加されることとなった[7]。
この脅威に対応すべく新たに策定された25大綱にて水陸機動団の新編が明示され、手始めに水陸両用準備隊を編成し、水陸両用車をはじめとする各種機材の検証を通じて敵国に占領された離島を奪還するため、部隊の戦力化に必要な技術の取得を早期に推進することとなった。
これに先立ち、アメリカ海兵隊との合同演習「アイアンフィスト」及び三自衛隊が参加した統合演習「ドーンブリッツ」への派米訓練が行われている[8]。
2014年(平成26年)の環太平洋合同演習では陸上自衛隊が初参加し、多国間演習とは別にアメリカ海兵隊と2国間で水陸両用作戦の訓練を実施した[9]。日本国内でも、相馬原演習場(群馬県)などに米海兵隊を招いて共同訓練や、陸自隊員を在沖縄米海兵隊に派遣しての研修を実施している[10]。2020年の日米共同方面隊指揮所演習の前後にも、水陸機動団は沖縄でアメリカ海兵隊と共同演習を実施し、「海兵隊員と多くを学ぶ」としている[11]。2021年には、五島列島津多羅島で尖閣諸島占拠を想定して沖縄県警国境離島警備隊や第十一管区海上保安本部との共同訓練を行った[12]。
水陸機動団は西部方面隊直轄部隊であった旧西部方面普通科連隊を基幹に、3個連隊を基幹に編成され、約3,000人規模の部隊になっている。この3個連隊の内、主戦力となる第1連隊は西部方面普通科連隊を発展的に改組し団本部と共に佐世保市(相浦駐屯地及び海上自衛隊佐世保地方隊崎辺地区[注 1])に拠点を置くとされ、第2および第3連隊はそれぞれ700人から900人規模の部隊の予定とされた[13]。各連隊の編成は本部中隊、AAV中隊、ヘリボーン中隊およびボート中隊(強襲戦闘偵察用ボートを装備)からなるとされる[14]。
水陸機動団の活動用地確保のため、相浦駐屯地に所在する西部方面混成団は平成29年度末(2017年度末)をもって団本部と第5陸曹教育隊を久留米駐屯地へ移駐する計画であることが発表され(先行処置として第118教育大隊を2017年(平成29年)3月26日付で久留米駐屯地に移駐)[15]、2018年(平成30年)3月26日をもって混成団本部と第5陸曹教育隊は移駐完了した[16]。2017年(平成29年)3月27日には、水陸機動団に配属される隊員の教育部隊である水陸機動教育隊が駐屯地内で発足した[17]。このほかに、諸部隊の駐屯地として、大分県の玖珠駐屯地・湯布院駐屯地が挙がっていた[18]。
水陸両用車を装備した新部隊は南西諸島が侵攻された際、戦闘地域から数キロメートル離れた海域から上陸部隊を進発、戦闘部隊を揚陸させ島嶼部の確保を図る[13]。また住田和明陸幕防衛部長(当時)は、3カ所の事態に対して同時3個の初動部隊を投入できるようにする、と説明している。
2015年の平成27年版『防衛白書』「図表II-2-3-1」より抜粋した水陸機動団の編制[19]および、長崎新聞に掲載された編成表[20]を以下に示す。ヘリボーンについては陸上自衛隊航空科部隊が支援を行う。西部方面隊直轄部隊及び4師団、8師団の隷下部隊を基幹として設立し、当初は1個水陸機動連隊を欠いた定員約2,100人の編成だが、将来的には3,000人規模まで拡大・充足させる予定であった[21][注 2]。2024年3月に第3水陸機動連隊が竹松駐屯地において新編されたことによってフル編成となり、水陸機動団の編成が完結することとなった[6]。
水陸機動団の設立準備に備え、第4戦車大隊に水陸両用車(AAV7)が訓練用として1両先行配備されたほか、西部方面特科隊第112特科大隊などでは現行装備から120mm迫撃砲への転換訓練を行っていた[24][25]。また、西部方面普通科連隊では、他編成部隊の隊員向けへの転換教育や資格取得を支援していた。
また、部隊の航空輸送としては、従来のCH-47Jの活用に加え、V-22オスプレイの導入が決定しており、担当部隊として、第1ヘリコプター団輸送航空隊が2020年3月26日に新編された[26][27]。配備先として佐賀空港が予定されているが、配備決定まで木更津駐屯地・高遊原分屯地に暫定配備されることとなった[27]。
なお、水陸機動団所属隊員の部隊章(師団等標識)は第1空挺団同様、独自のものが設定されている[28]。
水陸機動団新編準備室
水陸機動準備隊・水陸機動教育隊
水陸機動団
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ここでは、独立記事になっていない部隊について概説する。
水陸機動団特科大隊(すいりくきどうだんとっかだいたい)は、大分県由布市の湯布院駐屯地に駐屯する陸上自衛隊水陸機動団隷下の野戦特科部隊である。
西部方面特科隊第112特科大隊を母体として発足。3個射撃中隊と火力誘導中隊基幹で、発足当時は1個射撃中隊編成であった。搬送性と威力から第1空挺団特科大隊と同様に120mm迫撃砲RTを運用する。
火力誘導中隊は野戦特科火力、艦砲射撃、航空爆撃等の陸・海・空自衛隊の火力の誘導を任務とし、野戦特科部隊に編成される情報中隊と同様に特科大隊の射撃観測任務を行うほか、水陸機動連隊に「火力誘導班」として同行する。
部隊編成
水陸機動団後方支援大隊(すいりくきどうだんこうほうしえんだいたい)は、長崎県佐世保市の相浦駐屯地に大隊本部が駐屯する水陸機動団隷下の後方支援部隊。
旅団後方支援隊に準じた編成をとる。一部、水陸機動連隊等の戦闘職種の隊員が履修する水陸両用基本訓練課程等の教育訓練を修了した隊員が所属する。
部隊編成
特記ないものは相浦駐屯地所在。
施設中隊は第5施設団の一部、廃止された第8施設大隊第4中隊等をもって編成。通常の施設科任務に加え、水際地雷処理等の任務にあたる。
通信中隊は西部方面通信群の一部等をもって編成。
26中期防において水陸機動団に配備する水陸両用車52両の調達が計画された。これに先立ち2013年度、平成25年度防衛予算において性能確認や運用検証等を実施するための参考品としてAAVP7A1 RAM/RS(人員輸送型)4両が調達され、2014年(平成26年)2月20日に横浜港に到着した[42][13]。平成26年度防衛予算でも参考品としてAAVC7A1 RAM/RS(指揮通信型)とAAVR7A1 RAM/RS(回収型)が1両ずつ調達された。2014年(平成26年)12月2日、防衛省は翌2015年度、平成27年度概算要求に計上した陸上自衛隊の水陸両用車の車種をAAV7A1 RAM/RSに決定した[43]。最終的に水陸両用車(AAV7)は人員輸送型46両、指揮通信型6両、回収型6両の計58両が調達され、参考品扱いだった車両も含め水陸機動団に集中配備された。
また、特科の火器については、輸送性等の都合から第1空挺団の空挺特科大隊同様、120mm迫撃砲RTを装備する。このほか、水陸機動連隊にも通常の普通科連隊同様に81mm迫撃砲が配備されているほか、水陸機動連隊・戦闘上陸大隊に個人操作が可能な60mm迫撃砲も導入された。
おおすみ型輸送艦に対し水陸両用戦機能を強化すべく大規模な改修も進め、いずも型ヘリコプター護衛艦の司令部機能を強化する。他にも、最新鋭の強襲揚陸艦を導入することも検討されている[44]。
これ以外に駐屯地施設として水陸機動団の有力候補駐屯地である相浦駐屯地には、不時着水したヘリコプターから緊急脱出するための訓練施設と水路潜入用の訓練施設の整備が認められる。両施設は2年から3年かけて整備される予定[45]。
制服は2018年(平成30年)3月27日から導入された『16式常装』が優先して配布されている[46]。
水陸機動団創設を支援するためアメリカ海兵隊から派遣されていたグラント・ニューシャム元大佐によれば、「自衛隊は既に水陸両用戦に必要なハードウェアの8割を保有しており、ソフトウェアについては必要なノウハウの20の内、米国から5つ程度が提供されており、これを発展させるべく系統的な教育努力が必要であるとされ[47]、南西諸島の本格的な防衛にはさらに海軍力・空軍力とを連携する必要があり、強襲揚陸艦や垂直離着陸が可能な戦闘機も必要である」と指摘された[48]。
編成式において初代団長の青木伸一陸将補は、「現時点では能力が完全ではなくさらに訓練が必要である」との認識を示している[48]。
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