従円と周転円
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従円(導円)と周転円(じゅうえん(どうえん)としゅうてんえん、deferent and epicycle)は、古代ギリシアの天動説的な天文学で、月や太陽、惑星などの運行の速さや方向の変化を説明するために導入された、数学的な概念である。従円-周転円理論では、天体の運動は、大きな円(従円、あるいは導円)の円周を中心とする小さな円(周転円)の円周上を運動するという円軌道の組み合わせで説明された。(この組み合わせで生成される運動の軌跡をエピトロコイドという。)
紀元前3世紀の終わり頃のアポロニウスは、惑星の順行・逆行の説明に既にこれを用いていた。また、ヒッパルコスやプトレマイオスの数理天文学で非常に重要な役割を果たし、精密な天体の方位の計算を可能にした。
従円-周転円は、古代ギリシア天文学とともに広まり、中世イスラム世界、中世後期のヨーロッパ、また5世紀以降のインドでも用いられた。中世前期のヨーロッパにおいても、基本的な考え方は知られていた。
アリストテレスの宇宙論では、天体は地球を中心に回転するとされ、周転円のような、地球を中心としない回転は想定していなかった。そこで、周転円を用いた理論が、どの程度実在する宇宙を反映しているのか、また数理天文学と自然学との関係について、古代末期から中世にかけて様々な議論があった。中には、従円や周転円を用いずに、地球中心の回転のみで天体の動きを説明しようとする試みもあった。