バール(英語: bar)は、圧力の単位である。105 Pa に等しい。メートル法系の単位であるが、MKS単位系とCGS単位系のどちらにおいても一貫性のない単位である。また、メートル法から発展した国際単位系(SI)にも含まれない非SI単位であり、SIの国際文書では、第8版(2006年)までは「その他の非SI単位」として記載されていたが[1]、現行の第9版(2019年)から全く記載されていない。
かつて気象分野ではバールの 1/1000 であるミリバール(記号: mbar)が使われたが、ヘクトパスカル(記号: hPa)に置き換えられた。
日本では、計量法においてバールを基本的な計量単位として位置付けており[3]、使用分野を特に限定していない[4]。計量法の改正により圧力の単位は1992年12月から国際単位系 (SI) であるパスカルを使用することになった。
定義と大きさ
元々のバールの定義は、106 ダイン(記号: dyn)(1メガダイン)の力が 1平方センチメートル(cm2)の面積に作用する時の圧力であった。これは 1 atm(1気圧)にできるだけ近い値として定められたものである。正確には 1 atm = 1.013 25 bar = 1013.25 mbar = 1013.25 hPa である。約 1.3 % の差があるが、気圧計の測定精度を考えると実用上はほぼ同じとみなせる。
これはCGS単位で表すと 1 bar = 106 b = 106 dyn/cm2、MKS単位 (SI) で表すと 1 bar = 105 Pa = 105 N/m2 である。
1気圧にほぼ等しい単位として定められたため、CGS単位系においてもSIにおいても、基本単位だけから組み立てることはできず、10の冪の係数が付く(一貫性がない)。このため非SI単位である。
単位記号
バールの単位記号は、barである[5]。
ミリバールの単位記号は mb とすることもあったが、バール単独、あるいは他の派生単位中のバールを b とすることはあまりなかった。なお b は本来は、バリ (barye) の記号である。
歴史
1911年、気象学者V・ビヤークネスが提唱し、1914年から気象通報に使われ始めた[6]。
バールの名は、重さを意味する ギリシア語: βάρος(báros)に由来する。同じ語源の単位にCGS単位系の圧力の単位バリ (barye) があり、かつてはそれをバールと呼ぶこともあった[6]。
日本の気象分野では、古くは水銀柱ミリメートル(mmHg)が使われていたが、1945年からミリバール(mbar)に切替えられ、更に1992年12月にヘクトパスカル (hPa)に切替えられた。
国際単位系の公式の国際文書では、1970年から1991年までは暫定的に使用できる単位、1998年には現今では使用できる単位、2006年にはその他の非SI単位と位置づけられていたが、2019年の第9版においては全く認められなくなった。
アメリカでは現在もミリバール(mbar)が使われている[7]。
ヘクトパスカルの採用理由
ミリバールからの変更に際し、本来ならば他の単位と同じように、103 ごとのSI接頭語を用いて、キロパスカル (kPa) に移行し、例えば 1000 ミリバール → 100 キロパスカルとすべきところである。しかし気象関係者の要望により[要出典]、通常はほとんど使われないSI接頭語である「ヘクト」を用いて、ヘクトパスカル (hPa) が採用された。
1 bar = 105 Pa なので、1 mbar = 10−3 bar = 10−3 × 105 Pa = 102 Pa = 1 hPa となり、ヘクトパスカルはミリバールに等しい。したがってミリバールからヘクトパスカルへの移行の場合、数値がそのまま使える。これがキロパスカルが採用されず、ヘクトパスカルが採用された理由である。
派生単位
かつては倍量単位としてはメガバール Mbar、キロバール kbar が、分量単位としてはミリバール mbarがよく使われた。絶対圧であることを明示した bara、ゲージ圧であることを明示した barg も使われた。
符号位置
記号 | Unicode | JIS X 0213 | 文字参照 | 名称 |
---|---|---|---|---|
㍴ | U+3374 | - | ㍴ ㍴ | SQUARE BAR |
脚注
関連項目
外部リンク
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