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新幹線規格の線路を新規に建設することなく、既存の在来線を改軌して新幹線路線と直通運転できるようにする、日本の鉄道高速化手法のひとつ ウィキペディアから
ミニ新幹線(ミニしんかんせん)またはミニ新幹線方式(ミニしんかんせんほうしき)とは、フル規格新幹線の線路を新規に建設することなく、既存の在来線を改軌した上で新幹線路線と直通運転(新在直通運転という)できるようにした方式で[1]、鉄道高速化の一手段である。
新幹線と在来線の一体的なネットワークを形成することによって、高速サービスを全国新幹線鉄道整備法の枠外にある地方都市にも拡大しようとする手法(新在直通運転)の一つである。1983年(昭和58年)10月10日に日本国有鉄道内で、続いて1986年(昭和61年)には運輸省でも「新幹線と在来線との直通運転構想検討会」が設置され、検討が始まった[2][3]。このような考えによる高速列車ネットワークの構築は1981年にフランスが実現したが(TGV)[4][5]、日本では軌間が異なるという点が問題となった。改軌方式ことミニ新幹線方式については1987年(昭和62年)に奥羽本線の福島 - 山形間がモデル線区に選定された[3]。
この方式を採用した鉄道路線は、旅客案内上「新幹線」と称しているが、全国新幹線鉄道整備法の定義では在来線であって、新幹線ではない[6]。また、当然整備新幹線にも含まれない。あくまで在来線の改軌ならびに高速化改良である。
フル規格設備上の新幹線列車の運行時間帯は、利用者の数が当初の予想以上に増え、毎日深夜から早朝にかけて保線を行わなければいけなくなった。よって始発が午前6時以降、終着が午前0時以前(所定ダイヤの場合)となっているが[7]、設備の一部が在来線改良であるミニ新幹線はその制約を受けないダイヤを組める。
なお、ミニ新幹線に直通する車両をミニ新幹線車両としている。ミニ新幹線は在来線を改軌した区間を指すことが多いが、ミニ新幹線車両はフル規格区間まで乗り入れる車両と位置付けられている[1]。
1995年(平成7年)以降この方式を採用されたことがない。鉄道ライターの枝久保達也によるとフリーゲージトレインの登場と沿線のフル規格新幹線を望む声が考えられるという。山形新幹線・秋田新幹線でもフル規格新幹線の奥羽新幹線(福島県福島市-山形県山形市付近-秋田県秋田市)の建設運動がある[8]。
軌間の違う路線の直通運転には車両側で対応する「異ゲージ直通運転方式」[10]と軌道側で対応する「改軌方式」[10]、それらを組み合わせる方法がある[11]。1983年(昭和58年)国鉄は「改軌方式」で対応することにした。山形新幹線とその新庄延伸・秋田新幹線では標準軌方式を基本としつつ、各線の状況をや輸送を考えて三線軌方式、標準軌・狭軌単線並列方式を一部に取り入れた[11]。
電気方式は新幹線区間が交流50Hz25kVまたは交流60Hz25kVに対して、在来線区間は交流50Hz20kVまたは交流60Hz20kV、直流1.5kVとなっているため、「車両複電圧・複周波数・交直流方式」、「在来線電車線昇圧・EC方式」、「在来線電車線昇圧・架線下DC方式」のうち一つを選んで直通できるようにする[12]。
新幹線区間と在来線区間の間にはミニ新幹線車両が行き来できるようアプローチ線を設ける[13]。ミニ新幹線でのアプローチ線は下記に設置されている。
三線軌条化しない場合(狭軌線路を併設せず、新幹線直通列車が走行する標準軌線路のみを敷設する場合)、以下の点も欠点となり得る。
附則 第6条2 新幹線鉄道直通線 既設の鉄道の路線と同一の路線にその鉄道線路が敷設される鉄道であつて、その鉄道線路が新幹線鉄道の用に供されている鉄道線路に接続し、かつ、新幹線鉄道の列車が国土交通省令で定める速度で走行できる構造を有するもの
この方式で新在直通を図った路線として、2023年時点で山形新幹線(奥羽本線福島駅 - 新庄駅間)と秋田新幹線(田沢湖線・奥羽本線盛岡駅 - 秋田駅間)の2路線がある。前述のように「新幹線」と称しているものの、法的には在来線である。路線愛称の「新幹線」は山形新幹線の開業準備に入ってからである[24]。
1.都道府県主導型
2.市町村主導型
1988(昭和63)年度予算編成作業中に大蔵省主計官が整備新幹線建設を非難し膠着した。打開策として1988年(昭和63年)8月の運輸省によってフル規格新幹線、ミニ新幹線、スーパー特急の組み合わせで提示され、同年8月31日に政府・与党申し合わせにより整備内容が決定された。うちミニ新幹線整備区間は下記のとおりである。なお、どの線区でもフル規格実現への願望が強かった[33]。
九州新幹線西九州ルート 新鳥栖駅 - 長崎駅間は一部在来線の長崎本線を挟む関係でスーパー特急方式で建設され、後に武雄温泉駅 - 長崎駅間がフル規格に変更。さらにフリーゲージトレイン導入の計画、試験まで行われたが頓挫し、武雄温泉駅で乗り換えるリレー方式で武雄温泉駅 - 長崎駅間が西九州新幹線として暫定開業した。
東京駅 - 山形駅間を最短3時間9分が2時間27分に短縮され、1995年(平成7年)に1両増結の7両編成化。5往復あった羽田空港 - 山形空港の全日空航空便は2002年(平成14年)10月31日に休止[34]。しかし日本エアシステム(のちに日本航空)が2003年(平成15年)4月1日より同路線1日1往復を再開。航空会社の自助努力のみでは維持・充実が困難な路線で、地域と航空会社による共同提案によって優れた路線に羽田空港の発着枠を配分する 国土交通省の「羽田発着枠政策コンテスト」で1日2往復まで回復。キャンペーンや朝便と夜便が設定されたことで、ビジネス客の姿も多く見られるようになった[35]。
東京駅 - 秋田駅間を最短4時間29分が3時間49分に短縮され、1998年(平成10年)に1両増結の6両編成化[34]。
ミニ新幹線に用いる車両は在来線の車両限界で設計されている。車長は、フル規格新幹線車両の25mに対して、ミニ新幹線車両では20 - 23mであり、車幅は、3,380mmに対して、2,945mmとなっている。そのため、新幹線区間では、乗降口とホームとの間隔が開いてしまうため、折り畳み式のステップを車両の乗降ドアの下部に備える[36]。
大都市の新幹線ターミナル駅に乗り入れる場合は新幹線区間の線路容量、ターミナル駅の発着容量に不足をきたすから、多層建て列車にすることも考えなければいけない[37]。たとえば東京駅発着の場合、大宮駅 - 東京駅がJR東日本関連の新幹線が集まる区間で、設定できる列車本数に限りがあることから、多層建て列車にできるよう東京側の先頭車には連結器カバー・電気連結器付き密着連結器・超音波測距装置、レーザー測距装置で構成された自動分割併合装置が搭載されている。分割併合時は極力人手をかけないようにかつ基本的な列車防護ルール「一つの区間に2個列車が入らないようにする原則」を崩してしまうために、併結相手列車との距離を検知し絶対に衝突しないように設計し、安全性も確保している[38]。
400系およびE3系では在来線区間での急カーブへの対応と新幹線区間での直進安定性を確保するため、前後の車輪の車軸の間の距離である軸距を、フル規格新幹線の2,500mmに対して、2,250mmとしており、車輪の踏面(とうめん)形状は安定して走れるように設計された「1/16新在円弧踏面」となっている[39]。なお、従来の在来線特急電車の代表485系の「国鉄DT32形台車」は2,100mmである。
E6系では新幹線区間での320km/hの高速運転に対応するために軸距を2,500mmにし、従来の「1/16新在円弧踏面」に加え、ヨーロッパの高速鉄道車両のようにヨーダンパを片側2本装備(1台車あたり4本)を備えた。2本は減衰力固定式ヨーダンパ、残り2本は減衰力切り替え式ヨーダンパ(大減衰力と無減衰力の2段階)にし、新幹線区間では減衰力を大きくし高速安定性を確保し、在来線区間では減衰力を小さくしあえて ”ゆらゆらと” 進めるようにすることで急カーブをスムーズに通過できるようにしている[40][41][42]。
E8系は新幹線区間での300km/hの高速運転に対応するためE6系とほぼ同じ仕様のものを採用している[42]。
在来線区間の走行時はいかなる時でも600m以内に停止しなければいけなかった(鉄道運転規則「600メートル条項」)ために、フル規格区間の走行時よりブレーキ力が大きくなるような設定を加えている[43]。
製作された台車は下記の通り。
主電動機は次の通り。400系のみ直流モーターを採用している。参考までに国鉄特急用電車485系はMT54形で120kW、国鉄東北新幹線用電車200系はMT201形で出力は230kWでいずれも直流モーターである。
集電装置は在来線区間の電車線の高低差の大きさに合わせてフル規格新幹線車両用より大きく作られている[43]。採用された集電装置は下記の通り。
保安装置についても新幹線区間の自動列車制御装置 (ATC) と在来線区間の自動列車停止装置 (ATS) の両方を搭載している[45]。全線ATC化しなかった理由は線区のグレード、工事費や工事期間の抑制との経済的理由である[46]。ミニ新幹線方式の採用区間の保安装置は下記の通り。
改軌は狭軌用枕木を標準軌用に交換する。工法として、人力法、軌きょう縦送り法、枕木交換法、軌道連続更新機法、ミニテックス法がある[51]。
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