ピレスロイド
ウィキペディア フリーな encyclopedia
ピレスロイド(pyrethroid)とは、除虫菊 (Tanacetum cinerariifolium (Trevir.) Sch. Bip.) に含まれる殺虫成分の総称で、今日では各種誘導体が合成され、各地で広く殺虫剤として利用されている。天然に産するピレスロイドは菊酸を共通構造として持っており、ピレトリン I (Pyrethrin I) とピレトリン II (Pyrethrin II) を主成分とする6種の化合物の混合物である。また、微量成分のピレスロイドとしてシネリン I、シネリン II あるいはジャスモリン I、ジャスモリン II も含まれ、いずれもピレトリンと同様な作用を有する。
人工的に合成したピレトリンの誘導体は合成ピレスロイドと呼ばれ、アレスリンなどが知られている。開発初期の合成ピレスロイドには菊酸構造が存在したものの、現在の合成ピレスロイドに、もはや共通の化学構造は存在しない。
いずれのピレスロイド類も、昆虫類・両生類・爬虫類の神経細胞に作用し、イオンチャネルの1種であるNa+チャネルを持続的に開いて、脱分極を生じさせる神経毒である。しかしながら、哺乳類・鳥類に対する毒性は低い。このため殺虫剤として使用しても哺乳類や鳥類にとっては比較的安全である。
ただし、例えば特異体質のヒトで、ピレスロイド類を吸入した場合に、喘息発作などを誘発する場合があるため、そのような体質の場合は注意が必要である。