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ドイツの医療(ドイツのいりょう、Healthcare in Germany)では、複数提供者制の社会保険によるユニバーサルヘルスケアが実現されており、ドイツ連邦保健省が所管している[1][2][3]。
医療保険には法的強制保険(Gesetzliche Krankenversicherung、傷病金庫)と私的保険(Private Krankenversicherung)[4][5][6]の両者が存在しており競争政策が取られ、2009年から市民は疾病金庫と私的保険の何れかから選択できるようになった[7][8]。
戦前の日本は、ドイツを手本に社会保険方式の公的医療保険制度を導入した[9]。日本の介護保険制度もドイツを手本としている。
保健セクターの規模は、3,502.21億ユーロ(米ドル購買力平価では4,489.529億米ドル)で、GDPの11.1%を占め(2016年)、人口1人あたりでは€4,252.9ユーロ(米ドル購買力平価では$5,451.9米ドル)あった。[11]保健支出はWHOによると2015年は、約84.5%が政府支出であった。[12]
2002年において通院患者に多い疾患は、男性では一位が心臓病、次にアルコール依存症・ヘルニアであり、女性では一位が妊娠関連、次に乳がん、心臓病であった。[13]
平均寿命は、WHOによると2016年では81.0歳で世界183カ国中26位、男性は78.7歳でフィンランド、ギリシャと同率で23位、女性は83.3歳でマルタと同率の23位であった。[14] 乳児死亡率は非常に低く(1000出生あたり3.4[2016年])[15]、医師数は344,755人であり、人口1,000人あたり医師数は4.19人(一般開業医、専門医、インターン、外国人医師を含む。)でOECD27カ国中5位であった。[16]また、ドイツ国内の外国人医師の比率は8.7%(2013年12月)である。[17]
少子高齢化が進み、1人の高齢者を2.9人で支える高齢社会に突入しており(2012年)、OECD各国においては日本に次いで進行している[10]。
ドイツは世界最古の国営社会保険医療制度を持ち[1]、その起源はオットー・フォン・ビスマルクによる社会政策立法、1883年疾病保険法(Health Insurance Bill of 1883)、1884年労災保険法(Accident Insurance Bill of 1884)、1889年障害・老齢保険法(Old Age and Disability Insurance Bill of 1889)にさかのぼる[8][18]。これらの法定強制医療保険は、初期では低賃金労働者と特定の公務員にのみ適用されていたが、後に人口の大多数に広がった[19]。 この制度は分権的であり、民間医師が外来患者を治療し、それとは独立して非営利病院が大部分の入院医療を提供していた。
人口のおよそ92%が法定医療保険プランに加入し、この制度では1100の傷病金庫(公的または私的)にて、法定標準カバー範囲の医療を受けられた。法定保険の原資は雇用者・雇用主・政府の三者が負担し、保険料割合は加入者の所得レベルによって変化した。一部の高所得労働者では、税を支払って標準保険を脱退し私的保険に加入することもあった。私的保険では受給サービスは収入レベルではなく、個人の健康状態に基づいて支給される[20]。
現在は疾病金庫は統合再編が進み、1991年頃に約1200あったものが約200まで統合されている[21][7][8]。
また、これまでは介護保険制度は無く公的扶助で対応されていたが、1995年からは長期介護保険制度が開始された[22]。介護保険は保険料のみで運営され、税財源の投入は行われていない[22]。
医療制度は開業医となる家庭医(GP)と専門医、および病院に厳密に分かれており、病院は入院患者を扱い、開業医は外来診療を担当する。緊急の場合を除き、病院診療を受けるには開業医の紹介を受けなければならない[7][23]。また開業医は定員制となっており、地域及び診療科ごとに上限が定められている[7]。臨床データの電子化も進んでおり、開業医および病院が患者診療データを共有している[7]。
1980年から、自己負担制度が過剰診療を防止するために導入されている。医薬品は価格の10%ほど(5〜10ユーロの範囲)、入院は一日10ユーロ、外来診療は四半期ごとに10ユーロの自己負担が生じる[9][24]。18歳未満は全額社会保険負担で自己負担がなく、また妊婦・出産については全額公費負担となる[24]。また年間の自己負担上限があり、そのラインは世帯年収によって決まる[24]。
ドイツにはユニバーサルヘルスケア制度が存在し、その提供者は複数であり医療保険は二種類に分けられる。ドイツ国民は法定の3種類の保健福利(医療保険・傷害保険・長期介護保険)を受けられ、その原資は雇用主と雇用者が負担している。
全ての雇用者は公的保険(疾病金庫)に加入しなければならない[9][7]。公務員、学生、自営業者、高所得者(€50,000.00以上、毎年調整)のみが私的保険を選択できる[9][7]。
医療保険は複数提供者制である。人口の85%が加入しているのは法定の基本医療保険プランで、法規制のSozialgesetzbuch V (SGB V)プログラムであり、基本的な範囲をカバーしている[9]。残りの人口の15%は任意で私的医療保険に加入しており、大抵は追加サービスが付く。
公的保険は非営利組織である傷病金庫によって共通レートで全市民に提供されており、これは収入が一定以下の市民は強制加入である[9]。保険料は雇用者と雇用主の両者で負担し[9]、原則として国庫負担はない[26]。傷病金庫は幅広い疾患をカバーし、また加入を拒否したり特定のリスク患者を不平に扱ってはならないと法で定められている。一部の人は税金ベースの公営労働保険や社会保険によってカバーされている。年金受給者では、法的強制保険レベルの収入があっても基金の加入は任意であるが、たいていの人は加入するか私的保険に加入している。公的保険を補う私的保険には様々な種類がある。
診療報酬は州ごとに保険医協会と傷病金庫の交渉によって決定される[8][27][28]。以前は点数制の出来高払い制度であったが、1993年からは包括払い制度が導入されている[27][26]。
公的保険では、政府は低収入者に対して医療費の一部を還付しており、低収入者への保険料は予め上限額が定められている。逆に高収入者では給与ベースの保険料の追加負担が生じるので、私的保険のほうに加入する場合もある。そのため、健康な若年者ほど私的保険に移ると保険料を相当分節約できる。しかし年をとって病気がちになると私的保険は保険料率を上げたり保険加入を認めなくなるので、公的保険に切り替えこととなるが[20]、それが常に認められるかは不定である[29]。
過去20年の間、私的保険の保険料はどんどん上昇し、公的保険との有利性は少なくなってきている[30]。
ホスピタルフィー | 33.1% |
ドクターフィー | 15.4% |
医薬品 | 18.1% |
総計 | 1,540億ユーロ |
疾病金庫は2009年時点で202箇所が存在する[9]。地区疾病金庫・企業疾病金庫・同業者疾病金庫・農業疾病金庫・海員疾病金庫・労働者職員代替疾病金庫などが存在し、疾病金庫間で選択の自由がある[9]。
公的保険には以下の特徴がある。
加齢によって疾病リスクが上昇するため、公的保険制度存続のために若年層・労働世代に対して高負担を課す高負担高福祉のシステムが特徴である。
私的保険会社はドイツに52社ほど存在する[9]。
私的保険には以下の特徴がある。
公的保険を脱退して私的保険に入る人がいるが、再び公的保険に戻るのは難しいとされている。55歳以下の場合、公的保険に再加入するには、被保険者の収入が私的保険の要求するレベル以下でなければならないからである。私的保険はたいてい公的保険よりも高額で、低所得者では加入できない額になる。
医療制度の規制は、ドイツ連邦合同委員会(Federal Joint Committee、Bundesausschuss)が行う。 ドイツの医療において公衆衛生機構が承認を行った医療規制改革案は、機械的に法案通過している[31]。
また連邦保健省配下の医療品質・効率性研究機構(IQWiG)は、根拠に基づく医療技術評価を行っている。
病院は、公立病院(37%)、非営利病院(40%、財団や慈善団体など)、営利私立病院(23%)の3つに分けられる[33]。保険医と入院施設(病院)の機能が明確に分離されているため、社会的入院といった問題は起こらない[34]。
メルク社は世界最古の医薬品メーカーであるとされる。
医薬品の通信販売は1998年に原則対面販売となり禁止されていたが、2003年の法改正により認可登録を受けた薬局は処方箋医薬品を含めて通信販売が解禁された[35]。
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