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爬虫類の種 ウィキペディアから
インドガビアル(Gavialis gangeticus)は、インドガビアル科インドガビアル属に分類されるワニの一種。インドガビアル属唯一の現生種。単にガビアルとも呼ばれる。ワニの中でも大型で、雌は全長2.6 - 4.5 m、雄は全長3 - 6 mに達する。成体の雄は吻端に特徴的な突起があり、現地で「ガラ」と呼ばれる壺に似ていることから「ガリアル」と呼ばれるようになった。細長い吻には110本の鋭い歯があり、魚を捕らえるのに適している。
インドガビアル | |||||||||||||||||||||||||||
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保全状況評価[2] | |||||||||||||||||||||||||||
CRITICALLY ENDANGERED (IUCN Red List Ver.3.1 (2001)) | |||||||||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||
Gavialis gangeticus (Gmelin, 1789) | |||||||||||||||||||||||||||
シノニム[4] | |||||||||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||||||||
Gharial fish-eating crocodile | |||||||||||||||||||||||||||
2019年時点の分布域(黒色) |
インドガビアルはおそらくインド亜大陸北部で進化した。シワリク丘陵とナルマダー川渓谷の鮮新世の堆積物からインドガビアルの化石が発掘されている。現在はインド亜大陸北部の平野部の川に生息している。ワニの中では最も水生傾向が強く、陸上に出るのは日光浴と砂州での巣作りのときのみである。冬の終わりに交尾し、雌は春に集まって巣を掘り、20 - 95個の卵を産む。雌は巣と幼体を守り、幼体はモンスーンの到来前に孵化する。幼体は最初の1年間は浅瀬に留まって餌を探すが、成長するにつれて深場に移動する。
野生のガビアルの個体数は1930年代から大幅に減少し、現在の分布域は歴史的分布域のわずか2%にまで減少している。インドとネパールで開始された保護プログラムは、1980年代初頭から飼育下で繁殖されたガビアルの再導入を行っている。砂の採掘や農地への転換による生息地の喪失、餌である魚類の枯渇、有害な漁法により個体数が減少している。2007年以来、 IUCNのレッドリストでは近絶滅種とされている。
人間文化において古くから扱われており、インダス川流域でガビアルを描いた約4000年前の粘土板が発見された。ヒンドゥー教では、インドガビアルは川の神ガンガーの乗り物とされる。川の近くに住む人々は、インドガビアルに神秘的な力と治癒力があると信じ、その体の一部を伝統医学における薬の材料として使用していた。
「gharial(ガリアル)」という名前は、ヒンドゥスターニー語で陶器の壺を意味する「ghara(ガラ)」に由来し、成体雄の鼻先にある突起に由来している。「gavial(ガビアル)」とも呼ばれる[5]。「gavial」は「gharial」の誤植が定着したものである[6]。「fish-eating crocodile(魚を食べるワニ)」という英名は、ベンガル語の「mecho kumhir」の翻訳であり、魚を意味する「māch」とワニを意味する「kumhir」に由来する[7]。「Indian gharial」という呼び名はインドの個体群に対して使用される[8]。単にガビアルという場合は本種を指し、ガンジスワニとも呼ばれる[6]。
1789年にヨハン・フリードリヒ・グメリンによって、Lacerta gangetica として記載された[9]。Lacerta(現在はカナヘビ科の属) は1758年にカール・フォン・リンネが提案した属で、当時知られていた他のワニや様々なトカゲが含まれていた[10]。その後の数人の研究者は、インドガビアルをクロコダイル属に分類した。現在もクロコダイル科に含める説もある[11][12][13]。
インドガビアル属 Gavialis は1811年にニコラウス・ミヒャエル・オッペルが円筒形の背中を持つワニを含む分類群として提案した。彼はこの属をクロコダイル科に分類した[18]。Rhamphostoma という属名は、1830年にヨハン・ゲオルク・ヴァーグラーが提案したもので、彼はこの属にCrocodilus gangeticus と Crocodilus tenuirostris の2種が含まれると考えていた[19]。
インドガビアル科 Gavialidae は1854年に動物学者のアーサー・アダムズによって提唱され、インドガビアル属のみが分類されるとした[20]。Gavialis gangetica は、1864年にアルベルト・ギュンターによって使用された学名であり、彼は L. gangetica、C. longirostris、C. tenuirostris をシノニムとし、インドガビアル属を単型分類群とした[21]。ジョン・エドワード・グレイは、ロンドン自然史博物館にある標本を調査した。彼も1869年にインドガビアル属を単型とした。また、彼は細い顎と類似した歯列から、マレーガビアルもインドガビアル科に分類した[4]。
1886年にリチャード・ライデッカーが提唱した Gharialis hysudricus は、シワリク丘陵で発見された頭蓋骨の化石に基づいており、当時知られていたガビアルの頭蓋骨の化石よりも大きかった[22]。現在はインドガビアルのシノニムと考えられている[23]。
インドガビアルの進化と他のワニ類との関係および分岐については、議論の的となっている[24]。一部の研究者は、インドガビアルの頭蓋骨の形状と歯列が独特で、より高度な特殊化を示していることから、インドガビアルは他のワニ類よりも早く進化したと仮定した[25][26]。他の研究者は、血漿タンパク質の分岐度が低いことから、インドガビアルは他のワニ類よりもずっと遅く進化したと示唆した。インドガビアルはこの特徴をマレーガビアルと共有しているため、マレーガビアルと姉妹群を形成することが示唆された[27]。対照的に、尾の筋肉の独特の構造から、インドガビアルと他のすべてのワニ類は姉妹群を形成することが示唆された[28]。インドガビアルとマレーガビアルのミトコンドリアDNAのリボソームセグメントの配列決定により、両者は22の特殊なヌクレオチドを共有していることが明らかになった。94%の類似性があり、姉妹分類群であるという見解を裏付けている[29]。両種の核遺伝子配列の分析も、姉妹群であるという見解を裏付けている[30][31]。分子遺伝学と分子年代測定によると、約3800万年前の始新世にインドガビアルとマレーガビアルの間に遺伝的分岐があったことが示されている[32]。
インドガビアル属は、前期中新世にインドとパキスタンで発生した[33]。ハリヤナ州とヒマーチャル・プラデーシュ州のシワリク丘陵で発掘されたインドガビアルの化石は、鮮新世から前期更新世の間のものである[34]。インドガビアルの化石は、ミャンマー中央部のエーヤワディー川渓谷の2か所でも発見されており、後期更新世のものである[35]。第四紀には、ガビアルはマレー半島を経由してジャワ島まで分散したが、当時は陸続きであった。ジャワ島で発見された Gavialis bengawanicus の化石は、前期更新世のものである[33]。タイのナコンラチャシマ県で発見された G. bengawanicus の化石は、ガビアルが河川を通じて分散したという仮説を支持している[36]。G. bengawanicus は唯一有効な絶滅したインドガビアル属の種である[37]。
現存する主要なワニ類の系統図は、最新の分子研究に基づいており、インドガビアルとマレーガビアルの近縁関係、そしてガビアル科とクロコダイル科がアリゲーター科よりも近縁であることを示している[30][38][39][32][40]。
ワニ目 |
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以下は、絶滅した種も含め、ガビアル科内のインドガビアルの位置を示す詳細なクラドグラムである[32]。
ガビアル科 |
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体色はオリーブ色で、成体は幼体よりも体色が濃く、幼体には暗褐色の横縞と斑点がある[41][42]。背側は20歳でほぼ黒くなり、腹側は黄白色である。首には2枚の鱗が横に4列並んでおり、背中まで続いている[43]。頭、首、背中の鱗板は21 - 22の横列と4つの縦列から1つの板を形成する。背中の鱗板は骨質だが、側面は柔らかく、弱い竜骨状になっている。手足の外縁にはトサカ状に突き出た突起があり、指には部分的に水かきがある[41]。前肢では指の間の1/3のみに、後肢では趾の間の2/3に水かきが発達する[12]。
吻部は非常に細長く[13]、先端は大きな八角形になっており[12]、歯は細かく鋭く湾曲しており、上顎の両側に27 - 29本、下顎の両側に25 - 26本ある[11]。ワニ目の現生種では、最も歯の数が多い[44]。前歯が最も大きい。下顎の第1、第2、第3歯は上顎の隙間に収まる。極めて長い下顎結合は23 - 24番目の歯まで伸びている。成体の吻長は基部長の3.5 - 6倍もある[12][41]。この長い吻部のため、ガビアルは特に魚を捕まえて食べるのに適している[5]。鼻骨はかなり短く、前上顎骨から大きく離れている[12]。頬骨は隆起し[41]、年齢とともに厚くなる[45]。体重103 - 121kgの個体の咬合力は1,784 - 2,006Nであった[39]。
雄は性成熟すると、鼻先に球根状の突起が発達する[43]。この突起は、現地では「ガラ」として知られる陶器の壺に似ている。突起は11.5歳で鼻孔の上に成長し始め、15.5歳で約5 cm × 6 cm × 3.5 cm の大きさになる。この突起は共鳴器としての役割も持っており、雄は75 m離れた場所でも聞こえるシューという音を出すことができる[46]。インドガビアルは、目に見える性的二形を持つ唯一の現生ワニである[45]。成熟した雄は雌よりも頭蓋骨が大きく、基底長は715 mm、幅は287 mmを超える[47]。
雌は全長2.6 mで性成熟し、最大4.5 mまで成長する。雄は全長3 m以上で成熟し、最大で6 mまで成長する[48]。成体雄の体重は平均約160 kgだが、600 kgに達することもある[5][49]。現生ワニ類の中では最大級で、記録された最も重い雄は977 kgであった[50]。1920年8月、ファイザーバードのガーグラー川で体長6.55 mのインドガビアルが死亡したと主張されているが、信頼できる計測は行われていない[51]。全長7.16 - 9.14 mとされる雄のガビアルが、20世紀初頭にインドの河川で目撃された[52]。
水深が深く水が澄んで流れの速い河川に生息する[13][44]。インドガビアルはかつて、パキスタンのインダス川、インドのガンジス川、インド北東部とバングラデシュのブラマプトラ川からミャンマーのエーヤワディー川に至るまで、インド亜大陸北部の主要な河川水系で繁栄していた[45]。20世紀初頭には、パンジャーブを流れるインダス川支流では一般的であると考えられていた[53][54]。1980年代初頭までに、インダス川ではほぼ絶滅した[48]。2008年と2009年の調査では、インダス川でインドガビアルは目撃されなかった[5]。インドのゴーダーヴァリ川にも生息していたが、1940年代後半から1960年代にかけて乱獲され絶滅した[55]。コシ川では1970年以降絶滅したと考えられていた[56]。1940年代には、ゴールデンマハシールを含む大型魚が生息していたアッサム州のバラク川に数多く生息していた[57]。1988年までアッサム州、ミゾラム州、マニプル州を流れるバラク川の支流でも少数の個体が目撃されたが、調査は行われなかった[58]。1927年、ミャンマーのエーヤワディー川の支流であるシュウェリ川でガビアルが射殺された[59]。20世紀までミャンマーにガビアルが生き残っていたことを証明する唯一の正式な記録である。今日でもシュウェリ川にガビアルが生息しているかどうかは不明だが、2012年の時点では不明であった[35]。
1976年までに、その世界的な生息域は歴史的な生息域のわずか2%にまで減少し、生き残ったインドガビアルは200頭未満と推定された[45]。パキスタン、ブータン、ミャンマーでは局所的に絶滅している[5]。1980年代初頭以降、インドとネパールに放たれた飼育下繁殖個体によって、個体群が強化された。2017年、世界の個体数は最大で900頭と推定され、そのうち約600頭の成熟した個体が1,100 kmの河川沿いの6つの主要な集団に生息し、さらに50頭の成熟個体が1,200 kmの河川沿いの8つの小さな集団に生息している[2]。
ネパールでは、ガンジス川の支流であるバルディア国立公園のカルナリ・ババイ川水系[50][60]やチトワン国立公園のナラヤニ・ラプティ川水系に小規模な個体群が存在し、個体数はゆっくりと回復している[61][62]。2017年春、ババイ川で無人航空機を使用した調査が実施され、102kmの範囲で33頭のインドガビアルが確認された[63]。
インドでは、以下の地域にガビアルが生息している。
バングラデシュでは、 2000年から2015年の間にパドマ川、ジャムナ川、マハナンダ川、ブラマプトラ川でインドガビアルの生息が確認された[85]。
ワニの中では最も水生傾向が強い[48]。川岸で日光浴をするときだけ水から出る[8]。変温動物であるため、暑い時期には体を冷やし、周囲の温度が低いときには体を温める[86]。寒い季節には毎日、特に午前中に日光浴をし、湿った浜辺の砂浜を好む。日中の気温の上昇に伴って日光浴のパターンも変化する。朝早くから日光浴を始め、暑いときには川に戻り、午後遅くに浜辺に戻る。成体雄、数匹の雌、および若齢個体からなる群れが一緒に日光浴をしているのが観察されている。成体雄が群れを支配し、未成熟の雄は許容する[48]。12月と1月には、若齢個体と成体が混じった大規模な群れで日光浴を行う。成体の雄と雌は2月中旬までにペアを形成する[87]。
インドガビアルは生息域の一部でヌマワニと生息地を共有している。両者は同じ場所に巣を作るが、日光浴をする場所は異なる[88]。インドガビアルは浅い水辺近くの砂浜で日光浴をし、水辺の砂地に卵を産む。ヌマワニも砂浜で日光浴をするが、インドガビアルとは異なり、急な堤防や岩を登り、日光浴と巣作りの両方で浜辺から遠く離れた場所に移動する[89]。ヌマワニも魚を捕食するが、ヘビ、カメ、鳥、哺乳類、動物の死骸など、インドガビアルよりも多様な獲物を捕食する[90]。
鋭く絡み合った歯と、水中でほとんど抵抗を受けない細長い吻を持っているため、水中で魚を狩るのに適応している。獲物を噛み砕かず、丸呑みする。若いインドガビアルは、魚を頭から飲み込み、自分の頭を後ろに引いて食道に押し込む様子が観察されている。若いインドガビアルは、昆虫、オタマジャクシ、小魚、カエルを食べる。成体は小型甲殻類も食べる。インドガビアルの胃の中からは、ガンジススッポンの残骸も発見されている。インドガビアルは、大型の魚を引き裂き、石を胃石として飲み込むが、これは消化を助けるか、浮力を調整するためである。インドガビアルの中には、宝石が入っているものもあった[48]。1910年にシャルダ川で射殺されたインドガビアルの胃の中から重さ約4.5kgの石が発見された[91]。
食性は動物食で、主に魚類を食べるが、鳥類や哺乳類などを食べることもある[13]。水中で口吻を振り回し、獲物を捕らえる[44]。
雌は全長約2.6 mで成熟する[48]。飼育下の雌は全長3 mで繁殖する[92]。雄は15 - 18歳、全長約4 mで成熟し、吻先にコブが発達する[45]。「ガラ」と呼ばれるコブは性成熟を示し、音を共鳴し、繁殖行動のために使用される[93]。
求愛と交尾は晩冬の2月中旬までに始まる。乾季のチャンバル川で観察される繁殖期の雌は、定期的に80 - 120km移動し、繁殖する雌の群れに加わって一緒に巣を掘る[87]。雌たちは川岸の水から2.5 - 14.5 m離れ、水面より1 - 3.5 m上で砂またはシルト質の河岸堤を巣の場所として選ぶ。これらの巣は深さ20 - 55 cm、直径約50 - 60 cmである。3月末から4月上旬にかけて、雌は20 - 95個の卵を産む[48]。一度に97個の卵を産んだ記録がある[94]。卵はワニの中で最大で、平均重量は160 gである[45]。卵はそれぞれ長さ85 - 90 mm、幅65 - 70 mmである[95]。71 - 93日後、幼体はモンスーンが始まる直前の7月に孵化する。ほとんどの爬虫類と同様に、性別は温度依存性決定である可能性が高い[48]。雌は孵化の鳴き声に反応して孵化したばかりの幼体を掘り起こすが、水にたどり着くことは助けない[45]。モンスーンによる洪水が来るまで巣に留まり、モンスーン後に戻ってくる[87]。
1980年代に観察された飼育下の雄は巣の保護には参加しなかった。飼育下の雄は孵化したばかりの幼体に興味を示し、雌は雄が背中に孵化したばかりの幼体を乗せることを許していた[96]。チャンバル川では、雌が巣の近くに留まり、洪水が起こるまで幼体を守るのが観察された。ある若い雄を無線で追跡したところ、2年の間共同の巣を守る優位な雄であったことが明らかになった[97]。
孵化したばかりのガビアルは全長34 - 39.2 cm、体重82 - 130 gである。2年で80 - 116 cm、3年で130 - 158 cmに成長する[48]。ネパールの繁殖センターで生まれたガビアルは、2013年4月、45ヶ月齢で全長140 - 167cm、体重5.6 - 10.5 kgであった。ガビアルは1匹あたり1ヶ月に最大3.5 kgの魚を消費した。生後75ヶ月までに体重は5.9 - 19.5kg、全長は29 - 62 cm増加し、169 - 229 cmに達した[98]。
生後1年の若い個体は、倒木の残骸に囲まれた浅瀬に隠れて餌を探す[48]。チャンバル川の425kmにわたる調査では、全長120 cmまでの個体は、川の中層の水深が1 - 3mの場所を好むことが明らかになった。体が大きくなるほど、水深の深い場所に移動する。体長180cmを超える亜成体および成体のインドガビアルは、水深が4mより深い場所を好む[99]。
若い個体は、対角線上の両脚を同時に押し出すことで前進する。幼いうちは疾走(ギャロップ)することもできるが、緊急時のみに行う。8 - 9ヶ月齢で全長約75cm、体重約1.5kgに達すると、後脚と前脚を同時に押し出す成体の移動方法に変わる。成体は他のワニのように陸上で半直立姿勢で歩くことはできないため、陸上でうまく活動することができない[44]。浜辺で日光浴をしているときは、水面に顔を向けて向きを変えることが多い[8]。
インドガビアルの個体数は、1946年の5,000 - 10,000頭から2006年には250頭未満にまで減少したと推定されており、3世代で96 - 98%減少している。インドガビアルは漁師に殺されたり、皮革、トロフィー、土着の薬用に狩猟され、卵は食用とされた。残った個体はいくつかの断片化された集団を形成している。狩猟は現在大きな脅威とは見なされていない。野生の成熟個体は、1997年の436頭から、2006年には250頭未満にまで減少した。この減少の理由の1つは、インドガビアルの生息地で漁業に刺し網が多く使用されるようになったことである。もう1つの主な理由は、ダム、堰堤、灌漑用の水路、人工堤防の建設、泥の沈殿や砂の採掘により河川環境が変化したことである。川沿いの土地は農業や家畜の放牧に利用されている[2]。
2007年12月から2008年3月の間にチャンバル川で111頭のインドガビアルの死骸が発見されたとき、当初は毒物か違法な漁網の使用により網に絡まって溺死したのではないかと疑われた[75]。その後の病理検査で組織から鉛やカドミウムなどの重金属が高濃度で検出された。これらの重金属と、胃潰瘍や原生動物の寄生虫が死因と考えられた[100]。チャンバル川から水を汲み出すために使われるポンプは、インドガビアルの個体数に悪影響を及ぼしていることが判明している[101]。カルナリ川の保護されていない地域では、岩石や砂の採掘、無許可の漁業などの脅威がある[60]。
インドガビアルはワシントン条約付属書Iに掲載されている[2]。インドでは1972年の野生生物保護法によって保護されている[45]。ネパールでは1973年の国立公園および野生生物保護法によって完全に保護されている[50]。
1970年代後半から、インドガビアルの保護活動は再導入に重点が置かれてきた。インドとネパールの保護区の川には、飼育下で繁殖した2 - 3歳の全長約1 mの個体が放流されていた[2]。
1975年、インド政府の支援のもと、オリッサ州の保護区で保護プロジェクトが立ち上げられた。このプロジェクトは、国際連合開発計画と国際連合食糧農業機関の財政援助を受けて実施された。インド初の繁殖施設はナンダンカナン動物園に建設された。繁殖プロジェクト立ち上げに伴い、フランクフルト動物園から雄個体が空輸された。その後数年で、いくつかの保護区が設立された[102]。1976年には、ウッタル・プラデーシュ州に繁殖センターが2つ設立された。1つは保護林に、もう1つは野生生物保護区に建てられ、毎年最大800個体を孵化育成し、川に放流している[103]。1975年から1982年にかけて、インドには16ヶ所の保護施設と5ヶ所の保護区が設立された。インドガビアルの卵は当初ネパールから購入されていた。1991年、インド環境・森林・気候変動省は飼育繁殖と卵収集への資金提供を撤回し、このプロジェクトは目的を果たしたと主張した。1997年から1998年にかけて、国立チャンバル保護区には1,200頭以上のインドガビアルと75以上の巣が見つかったが、1999年から2003年までは調査は行われなかった。野生および飼育繁殖の巣から収集されたインドガビアルの卵は、2004年までに12,000個に達した。卵は孵化し、幼体は約1 m以上に育てられた[45]。1980年代初頭から2006年の間に5,000頭以上のインドガビアルが河川に放流された[104]。1982年から2007年の間に142頭のインドガビアルがケーン川に放流されたにもかかわらず、2013年春にケーン川で観察された成体雌はわずか1匹であり、放流されたインドガビアルのほとんどが繁殖していなかった[79]。インドのパンジャーブ州のビアース川にも若いインドガビアルが放流されている[2]。
ネパールでは、1978年以来、採取された卵をチトワン国立公園内の保護繁殖センターで孵化させている。最初の一群である50個体のインドガビアルは1981年春にナラヤニ川に放たれた。その後、インドガビアルは国内の他の5つの川にも放たれた[50]。2016年には、このセンターは5歳から12歳のインドガビアル600頭以上で過密状態となり、多くは放流する適切な年齢を超えていた[105]。1981年から2018年の間に、合計1,365頭のインドガビアルがラプティ・ナラヤニ川水系に放たれた[106]。インドガビアルの再導入は個体数の維持に役立ったが、放流個体の生存率はかなり低かった。 2002年と2003年の春にラプティ・ナラヤニ川に標識を付けて放された36頭のうち、2004年春に生存が確認されたのはわずか14頭であった[62]。この再導入プログラムは、寒冷期に荒廃した地域に、高齢で雌雄判別のつかないインドガビアルが放たれたことや、再導入の有効性が評価されなかったことなどから、包括的かつ協調的ではないとして2017年に批判された[105]。代わりに、野生の巣をそのまま残し、営巣地や日光浴場所の保護を強化し、インドガビアルの動きを監視することが提案されている[107]。
飼育下個体の放流は、生存可能な個体群の回復には大きく貢献しなかった[2]。放流個体の観察により、再導入では生存に影響を与える複数の問題に対処できないことが明らかになった。河川の流路変更による撹乱、砂の採掘、川岸の耕作、地元住民による漁業、刺し網やダイナマイトの使用などの漁法に関連する問題が挙げられる[108][109]。そのため、2017年にワニ専門家グループのメンバーは、ガビアルの保護プログラムへの地元コミュニティの関与を促進することを推奨した[110]。
2023年5月、パキスタンのパンジャーブ地方でインドガビアルの目撃情報が報告された。これは、30年ほど姿を消していたとみられる同種のパキスタンにおける初の目撃となった。これらの目撃情報を受けて、WWFは他のパートナーと協力してインドガビアルの保護活動を強化することを目指している。目標は、新たに発見された個体群を生存させ、反映させることである。パキスタンは、同種を再導入するため、ネパールから数百匹のインドガビアルの移送を要請している[111][112][113]。
ギルワ川の川岸では、2019年に砂州と川中島の木本植物が除去され、2020年には砂が追加され、約1,000平方メートルの人工砂州が作られた。この介入により、この場所の土壌温度が安定し、最適化された。この川沿いのガビアルの巣の数は2018年の25から2020年には36に増加し、未孵化卵と幼体の死亡数は大幅に減少した[114]。
1999年時点では、インドではマドラス・クロコダイル・バンク・トラスト、マイソール動物園、ジャイプール動物園、ククライル・ガビアル・リハビリテーションセンターなどでガビアルが飼育されていた[115]。
ヨーロッパでは、チェコ共和国のプラハ動物園とプロティヴィーン動物園、ドイツのベルリン動物園でガビアルが飼育されている[116]。フランスのワニ園では、2000年にネパールの繁殖センターから6匹の幼体を受け取った[117]。
アメリカ合衆国では、ブッシュガーデン・タンパベイ、クリーブランド・メトロパーク動物園、フォートワース動物園、ホノルル動物園、サンディエゴ動物園、スミソニアン国立動物園、サンアントニオ動物園、セントオーガスティン・アリゲーター・ファームでインドガビアルが飼育されている[45]。ブロンクス動物園とロサンゼルス動物園は2017年にインドガビアルを導入した[118][119]。2023年、フォートワース動物園は4頭のインドガビアルの誕生を発表した[120]。
日本では野毛山動物園とiZooのみで飼育されている。ワシントン条約に加え、ガビアル科単位で特定動物に指定されているため、個人での飼育は出来ない[121]。
インドガビアルの最も古い描写は、インダス文明に遡る。印章や粘土板には、口に魚をくわえ、魚に囲まれたインドガビアルが描かれている。粘土板には、ガビアルと魚に囲まれた神が描かれている。これらの破片は約4,000年前のもので、モヘンジョダロとシンド州のアムリで発見された[123]。
紀元前3世紀に遡るサーンチーの仏塔の柱の岩の彫刻の一つにガビアルが描かれている[124]。ヒンドゥー教の神話 では、ガビアルは川の神ガンガーと風と海の神ヴァルナの乗り物である[125]。16世紀にバーブルは著書『バーブル・ナーマ』の中で、 1526年にガジプルとバラナシの間のガガラ川でインドガビアルが目撃されたと記している[126]。
1915年、イギリス人将校がインダス川沿いで漁師がガビアルを狩る伝統的な方法を観察した。漁師は砂州近くの水面下約60 - 75cmの深さに網を張り、ガビアルが川から上がって日光浴をするのを隠れて待った。しばらくすると漁師は隠れ場所から出て、驚いたガビアルは川に飛び出して網に絡まった[127]。
ネパールの人々は、雄のガビアルのコブに神秘的な力があると信じ、コブを得るためにガビアルを殺した[128]。タルーの人々は、コブを野原で燃やすと虫や害虫を寄せ付けないと信じ、ガビアルの卵は咳止め薬や媚薬として効果的であると信じていた[50]。人間を襲うことはないと考えられている一方、水葬者を食べるとみなされており、消化管の内容物から装飾品が発見された例もあるが、実際に死骸を食べたのか胃石として装飾品を食べたのかは不明である[11][48]。
ネパール語では「Lamthore gohi」や「Chimpta gohi」 (gohiはワニの意味)、ヒンディー語では「Gharial」、マラーティー語で「Susar」 、ビハール語で「Nakar」や「Bahsoolia nakar」 、オリヤー語で「Thantia kumhira」(「Thantia」はサンスクリット語でくちばし、鼻、象の鼻を意味する「tuṇḍa」に由来)などがある。オリヤー語ではオスは「Ghadiala」、メスは「Thantiana」と呼ばれている[7]。
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