コンパイルが開発した1986年のビデオゲーム ウィキペディアから
『ザナック』(ZANAC)は、コンパイルが開発し、1986年7月25日にポニー(ポニカブランド。現・ポニーキャニオン)から発売されたMSX用縦スクロールシューティングゲーム。
ジャンル | 縦スクロールシューティング |
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対応機種 | MSX |
開発元 | コンパイル |
発売元 |
ポニー (現・ポニーキャニオン) |
ディレクター | 仁井谷正充 |
デザイナー |
寺本耕二 仁井谷正充 広野隆行 |
プログラマー |
仁井谷正充 広野隆行 |
音楽 | 宮本昌知 |
美術 |
寺本耕二 YORIKI |
人数 | 1人 |
メディア | ロムカセット |
発売日 |
1986年7月25日 発売日一覧
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その他 | 型式:R49X5093 |
ゲーム内容は自機の最新鋭戦闘機「AFX-6502=ZANAC」を操作し、有機知性体が作り出した「システム」の暴走による脅威から人類を救出する事を目的としている。 緩急のついたスクロールや高速スクロールや特徴で、森林や海辺、荒野、メカニカルな基地、星の見える宇宙空間、スペースコロニー、生物内部など、多彩なステージで構成される。 さらにA.L.C.(Auto Level Control/自動難易度調整)というシステムを採用しており、プレイする都度に、またプレイヤーの技量次第で展開と難易度が変化するようになっている。MSX版やファミコン版のタイトルに見られる「A.I.」には、このA.L.C.を人工知能によって制御しているという意味が含まれている。
1986年に大幅にアレンジされた形で日本国内ではファミリーコンピュータ ディスクシステム用として、北米ではNES用ソフトとしてフジサンケイ・コミュニケーションズ・インターナショナルより発売された。その後、1987年にはディスクシステム版をMSX2へと逆移植した『ザナックEX』が発売された。
2001年にはPalm OSに移植された他、MSX版は2006年にWindows用ソフトとしてi-revoにて、2012年にプロジェクトEGGにて配信された。また、MSX2版は2011年にWindows用ソフトとしてプロジェクトEGGにて配信された。
ディスクシステム版はPlayStation用ソフト『ザナック×ザナック』(2001年)に収録された他、携帯電話アプリゲームとして2003年にはJavaアプリ、2004年にはEZアプリ、2005年にはiアプリにそれぞれ移植された。また、2007年にはWii用ソフトとしてバーチャルコンソールにて配信された他、2015年にはWindows用ソフトとしてプロジェクトEGGにて配信された。
難度は高く、要領が掴めるまではエリア1のクリアさえ難しい。ただし、局面によって限られた攻略パターンを見つけて極めるというタイプではなく、先へと進むためのプレイ様式は幅広い。また、プレイスタイル、プレイヤーの技量によりA.L.C.が大きく影響し難易度は大幅に変化する。
各エリア毎のプレイ時間は長く、それが全12エリア(MSX版は全8エリア)存在するため、オールクリアまでのプレイ時間もかなり長い。ワープ技によりプレイ時間の短縮も可能。残機エクステンドは頻繁であり、慣れてくれば後半のエリアでは残り数十機から100機オーバーとなることもある。
横手に回りこんで攻撃してくる敵が多く、縦スクロールシューティングのなかでも独特の調整となっている。弾は発射ボタンを押しっぱなしにしていれば自動で連射される。
このゲームはA.L.C.の影響でウェポンボタンを高速で連射する程に難度が上昇する設定になっているため、連射機能付きのコントローラを使用して連射を続けているとエリア1でも難度が急上昇し、その攻略はますます困難なものとなる。また、前述の赤い「ランダー」を連続して取って連射速度を上げたり、画面に時折現れる偵察機「サート」を撃ち漏らした場合も難度が上昇する。基本的にウェポンを使用するとA.L.C.は微妙ながらも上向きに作用するため、地上要塞撃破時にボーナスが入りスクロールが再開する間の一定時間や次エリアへ移行するまでの一定時間など、敵が一切登場しないタイミングでも自機が自由に操作できる間にメインウェポン・サブウェポンを無駄撃ちする行為も無意識の間にA.L.C.の効果で難度を上げてしまう仕様となっている。
そのため、攻略に際してはA.L.C.が作用するこの様な行動を避けるのがセオリーであるが、ただしそれを逆手に取ってA.L.C.で意図的に難度を釣り上げた状態での攻略を目指すというプレイもあった。
パワーチップを取り続けることで、単発2連射→単発3連射→2並行2連射→2並行3連射→3並行2連射→3並行3連射へと5段階パワーアップする。アイアイを攻撃することでより幅の広い攻撃へのパワーアップも可能。敵弾(リード)は破壊できず素通りする。前述の通り、パワーチップの入ったボックスに体当たりすると一気にパワーアップできるが、失敗すると一機失うので、別のパワーチップやサブウェポンを取った時の無敵時間を利用するのが常道であった。
0番~7番の8種類ある。全てのサブ武器は1画面1発である。種類によっては、残機表示の上に残り時間や残り弾数、耐久力を表す数字が表示される。時間や弾数・耐久力数の制限がある武器は、使い切ると0番に戻る。また、同じ番号を、制限がある武器の場合は使い切らないうちに取り続けることでパワーアップする。制限がある武器は同時に制限の数字が初期状態に回復する。アイテムを取っても武器性能が変化しない、見かけの最大レベル状態からさらに同じアイテムを取り続けると進化する武器もある。
武器(特に2番)を1つ取ると即座に敵の出現テーブルが大きく変化することがある。
いくつかのエリアの「アイアイ」と呼ばれる地上物に武器を撃ち込むことで、レベルを最大にできる(一度撃つとメインウェポンがワイドになりアイアイの色が青くなる。青いアイアイを撃つとサブウェポンのレベルが最大になるが、例えば5番の場合レーザー最高レベルにするには数度撃つ必要がある)。レベルはミスや武器切り換えで0に戻る。また、メインウェポンにおいては、アイアイに打ち込んだ時に3並行3連射の状態でないと、その後パワーチップを取った時に、撃ち込む前の状態に戻ってしまう。
はるか昔にとある有機知性体が作り出した「システム」は、生みの親である有機知性体がいなくなった今日も活動を続けていた。この「システム」には生命体の発展を助けるため、「イコン(聖像)を正しく開いたものには知識を。誤って開いたものには滅亡を。」という命令が組み込まれていた。
ある時、人類はイコンの一つを誤った方法で開いてしまい、「システム」からの攻撃を受ける。ところが少し経った後、人類が別のイコンを今度は正しく開き、イコンは「システム」の中枢に攻撃中止を要請したが、「システム」はこの要請を無視し、単なる殺戮装置と化した。「システム」を生み出した有機知性体が、このような事態を想定していなかったのかは定かでは無い。
正しく開かれたイコンは幸いにも正常に作動し手持ちの知識を人類に与えたが、所詮「システム」の末端にすぎないイコンでは「システム」全体に対する知識を得ることはできない。「システム」側の圧倒的物量・攻撃力の前に、人類の繰り出す迎撃部隊は次々に撃破されていった。
いよいよ人類が滅亡の危機に瀕した時、イコンの与えた情報から一つの可能性が提起された。『「システム」は基本的に戦略マシンであり、多対多の戦闘を想定している。ならば単独で「システム」に向かって行けば相手の思考の隙を突くことになり、効果的に対応できないのではないか?』
危険な賭けだったが、勝利へのわずかな可能性に賭けてこの計画は実行された。人類はイコンによってもたらされたテクノロジーをもとに、新型戦闘攻撃機「AFX-5810=ZANAC」を制作。ZANACは単独で「システム」の中枢に侵入しこれを破壊することに成功。危機は去った…と思われた。
しかし敗北を喫した「システム」は、破壊される直前に他の「システム」にこの事態を連絡したのである。すでに幾つかのコロニアムは攻撃を受け、連絡を絶っている。AFX-5810を改良した最新鋭の戦闘機「AFX-6502=ZANAC」が、より強大な「システム」の脅威から人類を救うため、再び単独で飛び立っていった。
本作は、全12エリア(ステージ)で構成されている(MSX版では全8エリア)。ここではファミコンディスクシステム版をもとに記述する。なおゲーム中の「エリア」の表記はMSX版では「ROUND x」、FC版では「ARER x」、以降の版では「AREA x」となっている。
No. | タイトル | 発売日 | 対応機種 | 開発元 | 発売元 | メディア | 型式 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | ザナック | 1986年11月28日[1][2] 1987年10月 |
ディスクシステム NES |
コンパイル | ポニー | ディスクカード(片面) ロムカセット |
L29V5906(PNF-ZAN) NES-ZA-USA |
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2 | ザナックEX | 1987年1月 |
MSX2 | コンパイル | ポニー | ロムカセット | R58Y5093 | |
3 | ザナック | 2001年10月24日 |
Palm OS | コンパイル | コンパイル | 内蔵ゲーム | - | 2002年7月30日にダウンロード販売開始 |
4 | ザナック×ザナック | 2001年11月29日 |
PlayStation | コンパイル | コンパイル | CD-ROM | SLPS-03354 | ディスクシステム版の移植 |
5 | ザナック | 2003年9月1日[3][4] |
J-フォン (Javaアプリ) |
ジー・モード | ジー・モード | ダウンロード (ゲームマーケット) |
- | ディスクシステム版の移植 |
6 | ZANAC | 2004年2月12日[5][6][7] |
BREW対応機種 (EZアプリ) |
ジー・モード | ジー・モード | ダウンロード (テトリス&100円ゲーム) |
- | ディスクシステム版の移植 |
7 | ZANAC | 2005年3月7日[8][9][10] |
FOMA900iシリーズ (iアプリ) |
ジー・モード | ジー・モード | ダウンロード (Get!!プチアプリ) |
- | ディスクシステム版の移植 |
8 | ザナック | 2006年4月21日 |
Windows | コンパイル | アイレボ | ダウンロード (i-revo) |
- | MSX版の移植 |
9 | ザナック | 2007年10月9日 2007年11月3日 |
Wii | コンパイル | ポニーキャニオン D4エンタープライズ |
ダウンロード (バーチャルコンソール) |
- | ディスクシステム版の移植 |
10 | ザナック×ザナック | 2010年7月28日[11] 2012年12月4日 |
PlayStation 3 PlayStation Portable (PlayStation Network) |
コンパイル | ガンホー | ダウンロード (ゲームアーカイブス) |
- | ディスクシステム版の移植 |
11 | ザナックEX | 2011年8月9日[12] |
Windows | コンパイル | D4エンタープライズ | ダウンロード (プロジェクトEGG) |
- | MSX2版の移植 |
12 | ザナック | 2012年5月2日[13] |
Windows | コンパイル | D4エンタープライズ | ダウンロード (プロジェクトEGG) |
- | MSX版の移植 |
13 | ZANAC MSX | 2014年8月2日[14] |
iPhone/iPad (iOS) |
ジー・モード | ジー・モード | ダウンロード | - | MSX版の移植 |
14 | ザナック | 2015年9月1日[15][16][17] |
Windows | コンパイル | D4エンタープライズ | ダウンロード (プロジェクトEGG) |
- | ディスクシステム版の移植 |
15 | G-MODEアーカイブス29 ZANAC |
2021年1月28日[18][19][20] |
Nintendo Switch | ジー・モード | ジー・モード | ダウンロード (ニンテンドーeショップ) |
- | アプリ版の移植 G-MODEアーカイブスのNo29発売 |
16 | ザナック | 2021年12月7日[21][22][23] |
Windows | コンパイル | D4エンタープライズ | ダウンロード (プロジェクトEGG) |
- | NES版の移植 |
17 | EGGコンソール ザナック MSX |
2025年1月23日[24] |
Nintendo Switch | コンパイル | D4エンタープライズ | ダウンロード (ニンテンドーeショップ) |
- | MSX版の移植 |
元々コンパイルはセガと組んでゲームを作っていたが、コンパイル社内からは自社タイトルを望む声が上がっていた[25]。
その後、新たに組んだポニーキャニオンからシューティングゲームを作ってほしいと頼まれ、コンパイルは本作の開発に乗り出した[25]。
また、コンパイルとポニーキャニオンの間に、人工知能を専門とするAII(エーアイアイ)が加わり、同社から説明を受けて、人工知能を作品のコンセプトに据えた[25]。
ディレクターを務めたコンパイル創業者の仁井谷正充は開発におけるAIIとのやりとりについて「『AIとは、こういうものですよ。ゲームにAI的な要素を入れましょう。[中略]』と、プログラマーといろいろディスカッションをしながら作っていたと思います。」と鴫原盛之との対談の中で振り返っている[25]。
本作の目玉となる「ALC」(AUTO LEVEL CONTROLER)はAIIが求めていた「AI的な要素」の一つとして導入された[25]。 このシステムを制作したのはプログラマの広野隆行であり、仁井谷は鴫原との対談の中で、「当時はゲームデザイナーと呼ばれるような人はまだ存在しない時代でしたから、自分でプログラムをしながらパラメーターも全部調整していたと思います。」と振り返っており、「細かい内容は覚えていないのですが、例えば5発撃つと倒せる敵が10発撃たないと倒せないようになるとか[中略]そういうことをAI的にやっていたのではないかと思います。」とも話している[25]。 また、MSX版ではALCの数値を内部パラメータとして扱うのではなく、あえてプレイヤーに明示するという当時としては異例の演出がとられた[25]。 仁井谷はその意図について、RPGでレベルを表示するのと同等だと答えつつも、プログラマーの広野が自分の考えを積極的にプレイヤーに明示する傾向があったとも話している[25]。
『ゼビウス』(1983年)においてもAIの概念は指摘されており、仁井谷も同作からの影響を受けたことは認めているが、AI的な面で影響を受けたことは否定している[25]。 仁井谷はその理由として、パラメータを調整して敵の動きに多様性を持たせることは本作以前から行っており、それをAIといえばそうかもしれないが、ある意味それは普通のことであると答えている[25]。
「0面」は広野隆行が担当した[26]。
なお、MSXのマイクロプロセッサがZ80である関係で機械語でプログラミングしていたことや、元々メモリの節約が一般的だったことから、AIの導入によってROMの容量が圧迫されるような事態はなかったと仁井谷は振り返っている[25]。
長いマップと二重スクロールは仁井谷のアイデアである[25]。 前者について仁井谷は、ゲーム雑誌の攻略記事にマップをすべて載せられて悔しい思いをしたことがきっかけだと話しており、雑誌側が写真を小さくして全体を載せたため目論見が崩れたとも話している[25]。
初期バージョンは「Le Colonium」のタイトルで藤島聡により開発されていたが、途中で藤島が別プロジェクトに移ることになり広野隆行に引き継がれた[27]。
なお、寺本耕二がデザインを、音楽は宮本昌知がそれぞれ担当した[25]。
仁井谷によると、本作はゲーム業界においても反響を呼び、アーケードゲーム会社が本作のAIに注目し、プログラミングの研究が進んだとされている[25]。
項目 | キャラクタ | 音楽 | 操作性 | 熱中度 | お買得度 | オリジナリティ | 総合 |
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得点 | 3.08 | 3.37 | 3.29 | 3.51 | - | 3.42 | 16.67 |
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