統一原子質量単位
質量の非SI単位 ウィキペディアから
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質量の非SI単位 ウィキペディアから
ダルトン(英: dalton、記号: Da)および統一原子質量単位(とういつげんししつりょうたんい、英: unified atomic mass unit、記号:u)は、主として原子や分子のような微小な粒子に対して用いられる質量の非SI単位である。 1 Da = 1.66053906660(50)×10−27 kg[注 1] である。
2019年以降は、ダルトンはSI併用単位となっているが、統一原子質量単位はSI併用単位ではない[2]。ただし、どちらも法定計量単位ではない。
ダルトンの名称は、近代原子論を提唱したジョン・ドルトン(en:John Dalton)に由来する。人名のDaltonは日本語環境ではドルトン と表記されることが多いが、単位名としては「ダルトン」と表記され、ラテン文字では dalton と小文字で始まる[3][4]。単位としてのダルトンが最初に用いられたのは、1924年である。
ダルトンの単位記号は、立体の「Da」である。人名に由来するので、最初の文字は大文字である。かつては記号「D」が使用されていたが、現在では使用してはならない。
ダルトンは、原子、イオン、分子(DNAやタンパク質などの巨大な高分子を含む)の質量を表すのに使われる。大きなものではリボゾームのような複数個の超高分子の複合体にも使われる。生化学で生体高分子や複合体の質量を表すときにも、ダルトンが使われる。
ダルトンがSI併用単位になる前の書籍等では「ダルトンが使われるが正式には統一原子質量単位を使うべきである」などとされていた。生物学では無次元量である分子量を示すときにも間違って「ダルトン」がしばしば使われていた。
ダルトン(および統一原子質量単位)は「原子量や分子量を表す単位」と誤解されることがある。しかし、ダルトン( Da )は質量の単位であるのに対し、原子量は質量そのものではなく、その原子の質量と 1 Da(の質量) との比であり、無次元量である。したがって、原子量・分子量を Da で表すことはできない[7]。
ダルトン (Da) にはSI接頭語を付けることができる(SI併用単位#SI併用単位)。キロダルトン(kDa)、メガダルトン(MDa)、あるいはナノダルトン(nDa)、ピコダルトン(pDa)などの単位と記号が使われる[8]。
統一原子質量単位 (u) にSI接頭語を付けることは、禁止されている訳ではないが、実際にはほとんどない。
ミリマスユニット (milli mass unit, mmu) という非公式の単位もあり、1 mmu = 1/1000 u = 1 mDa とされるが、SI接頭語のシステムと整合性がなく、使用は推奨されない。
2019年までは、ダルトンは、静止して基底状態にある自由な炭素12 (12C) 原子の質量の1/12と定義されていた。現在では、静止して基底状態にある自由な炭素12 (12C) 原子の質量の1/12と等しいとされている。[要出典]
定義より、厳密に
である。
12C原子は、12C原子核とそれを取り巻く6個の電子からなる。電子の質量は原子核の質量よりもずっと小さい。炭素12の質量数(陽子数と中性子数の合計)は12なので、したがって、核子(陽子と中性子)および1H原子の質量はほぼ 1 Da である。ただし実際はわずかに重く
および
である。これは、自由な核子が高い核エネルギーを質量の形で持っているからである。しかしこの程度の差異を誤差として許容するなら、質量数 A の原子の質量はおよそ A u であるといえる。天然に存在する核種であれば概して
である[11]。
ダルトンの定義は、「12 g の炭素12の物質量」とされていたモルの以前の定義の裏返しになっており、
である。つまり、ある分子等の質量をダルトンで表した数値は、その分子からなる純物質 1 mol(正確に アボガドロ数(6.02214076×1023)個の分子)の質量をグラムで表した数値とほぼ等しい(2019年のSI基本単位の再定義以前は正確に等しかった)。
20世紀初頭、酸素O原子の質量の1/16が原子質量単位(amu)と定義されていた。しかし1929年、酸素の同位体 17O と 18O が発見されると、「酸素」と呼ばれているものは各種同位体の混合であり、「酸素原子の質量」とは、各同位体原子の質量の、同位体比に応じた平均であることが明らかになった。そしてまもなく、その同位体比も一定ではないことが明らかになり、原子質量単位の定義は不確実になった。
物理学の世界ではこれに対し、酸素16 16Oの質量の 1/16 と定義された新しい原子質量単位 (physical amu、物理学的amu) を使うようになった(これにより、従来の値は変更しなくてはならないという問題も出てきた)。一方、化学の世界では従来の定義の原子質量単位 (chemical amu、化学的amu) を使った。こうして2つの定義が混在することとなった。これらを現在のダルトン(Da)で表すと
となり、約 1/3600 の差がある。
この混乱を解消するため、国際純粋・応用物理学連合 (IUPAP) と国際純正・応用化学連合 (IUPAC) が協議し、1960年に炭素12 12C 原子の質量の1/12である統一原子質量単位が定められた[12]。この定義は、核種を特定することで同位体比の問題をなくしつつ、chemical amu に最も近く従来の数値を変更する必要がないように選ばれた。このとき、単位記号も新しく、unified(統一)の語から u と定められた。
(「統一」の語のない)原子質量単位が「炭素12の質量の1/12」と公式に定義されたことはないが、ほぼ常に、統一原子質量単位と同じ「炭素12の質量の1/12」の意味で使われてきた。
ダルトン(Da)という単位が提案されたのは1924年で[13]、長らく公式の定義がなかったものの、1960年まではphysical amuと同じ「酸素16の質量の1/16」、1960年以降は統一原子質量単位と同じ「炭素12の質量の1/12」の意味で使うことが多かった。
2006年以降は、国際度量衡局はダルトンを、統一原子質量単位と全く同じ定義の単位としてSI併用単位に採用した[14]。しかし、2019年には国際度量衡局は、ダルトンのみをSI併用単位として採用し、統一原子質量単位をSI併用単位から除外した。
国際単位系国際文書(SI文書)各版のSI併用単位の章におけるダルトンと統一原子質量単位の位置づけは次のとおりである。年次を追うにしたがって、ダルトンと統一原子質量単位の位置づけが逆転していることがわかる。
名称 | 単位記号 | 第1版(1970)~第3版(1977) | 第4版(1981)~第6版(1991) | 第7版(1998) | 第8版(2006) | 第9版(2019) |
---|---|---|---|---|---|---|
ダルトン | Da | 記載なし | 記載なし | 注記のみ | 記載あり | 記載あり |
統一原子質量単位 | u | 記載あり | 記載あり | 記載あり | 記載あり | 注記のみ |
1 Da のSI文書における値とCODATA推奨値は次のとおりである。括弧内の数値は標準不確かさである。
原子質量定数(げんししつりょうていすう、英: atomic mass constant)は、記号 mu で表される、原子質量と原子量を関連付ける物理定数である。統一原子質量単位と等しい[16]。すなわち mu = 1 u = 1 Da である。
原子 E の相対原子質量(すなわち原子 E の原子量)Ar(E) は、原子 E の質量 ma(E) と原子質量定数 mu の比として定義される[17]。
同様に分子 B の相対分子質量(すなわち分子 B の分子量)Mr(B) は、分子 B の質量 m(B) と原子質量定数 mu の比として定義される[17]。
元素 E の相対原子質量(すなわち元素 E の原子量)Ar(E) は、元素 E の平均質量 ma(E) と原子質量定数 mu の比として定義される[18]。
モル質量定数 Mu は原子質量定数 mu とアボガドロ定数 NA の積として定義される[17]。
Mu はモル質量を原子量や分子量と関連付ける物理定数であり、モルの定義が変更された2019年5月20日以降は、0.99999999965(30) g mol-1 である[19]。
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