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品質マネジメントに関する国際規格 ウィキペディアから
ISO 9000は、国際標準化機構 (ISO) による品質マネジメントシステムに関する規格の総称。
ステータス | Published |
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初版 | 1987年 |
組織 | 国際標準化機構, 日本産業規格 |
委員会 | ISO/TC 176/SC 2 Quality systems |
ドメイン | 品質マネジメントシステム |
ウェブサイト |
www |
認証の対象となる、中核をなす規格はISO 9001である。
ISO 9001の前身規格は事業所の性格に応じてISO 9001、ISO 9002、ISO 9003に分かれ、現在も関連規格は9000番台が中心であることから、これらを ISO 9000 と称する。
対応する日本産業規格は「JIS Q 9000 品質マネジメントシステム − 基本及び用語」である。
ISO 9000で品質(英: Quality)は次のように定義される。
degree to which a set of inherent characteristics of an object fulfils requirements
対象に本来備わっている特性の集まりが,要求事項を満たす程度 — ISO 9000:2015 / JIS Q 9000:2015
製品・サービス・組織・システムといったモノゴト(対象[1])は、それ自身に内在し永久不変の性質を様々もつ[2]。例えばあるリンゴは固有の大きさ・糖度などを特性として有している[3]。これらの集まりが明示的・暗黙的・義務的なニーズ・期待を満たす程度を品質という[4]。
定義から明らかなように、品質は特性の強弱ではない。品質は特性と要求の一致度である。甘く高い糖度特性をもつリンゴがあるとする。このとき「このリンゴは糖度特性が高いので品質が良い」とはならない。リンゴが甘味処への卸売を予定していれば「高い糖度特性は甘味処のニーズと一致するので、このリンゴは品質が良い」となり、リンゴが観賞用であれば「糖度特性は見た目に影響せずサイズ特性も平凡で観賞に適さず、このリンゴは品質が低い」となる[5]。
品質が特性と要求の一致度であるため、「高品質」が指すところは(異なる要求をもつ)文脈によって異なる。レストランでは「高品質=美味しい」かもしれないし、インテリアショップでは「高品質=美しい」かもしれない。
要求事項として考えられるものはさまざまである。一般に品質は4種に分類可能で[6]、それぞれの場合の要求事項は具体的に以下となる。
品質は製品に対する評価の基準の一つであるが、製品とは実体のある工業製品には限らない。ISO 9000シリーズでは、製品 (product) を、プロセスの成果、と定義し、それには輸送やソフトウェアなどの顧客に無形で提供されるものも製品に含めている[7]。ISO 9000シリーズで使われている「製品」(product) の単語をこのような意味として理解すれば、ISO 9000シリーズは製造業に限らずサービス業にも適用することができ、実際適用されている。
品質という言葉が使われた歴史は古代ギリシャにまでさかのぼる。アリストテレスは何かを一般的に評価する基準として、数値、関係、組成、場所、時間などと一緒に品質を挙げている[8]。
ISO 9000 は、作業の最小単位は活動(英: activity)と称する[9]。組織では予定された活動や不意に起こる活動が相互に関連しあいながら発生し、資源を製品へ変換または生産していると言える[10]。相互作用する活動群に見いだされる、入力と出力をもった一連の秩序だった活動をプロセス(英: process)という[11][12][13]。品質マネジメントシステムは複雑な活動のまとまりを秩序立ったプロセスの集合(システム)として理解し、このプロセスを設計・運用・改善することでシステムとそれが生む製品の品質をマネジメントする。プロセスアプローチ)[14][15]。
品質が現代的な意味で重要になったのは、流れ作業による大量生産が始まった20世紀に入ってからのことである。それまでは熟練工が個々の部品をそれぞれが組み合うように修正しながら組み立てていたが[16]、流れ作業による大量生産では作業員は決められた作業に集中して遂行する方法がとりいれられた。例えば、ヘンリー・フォードの時代のフォードでは、原材料や工具の受領、設備のメンテナンス、品質管理などは、組み立て作業とは独立して、専門のグループが行うような組織が編成された[17]。このような流れ作業による大量生産を実現するもっとも重要なポイントは、ベルトコンベアではなく、完全で一貫した部品の互換性である[18]。その理由として、どの部品もそのままで互いに組み合わなければそもそも流れ作業が成り立たないからである。品質管理が重要になったのはそのためである。
製品・部品の個々の特性を個別に管理するだけでなく、品質マネジメントシステムとして、品質を管理・維持する仕組みを整える考え方は、最初は軍の資材調達で取り入れられている。1959年には、アメリカ軍がサプライヤーに対する要求としてMIL-Q-9858 「品質マネジメントプログラム」を作成した。これはアメリカ海軍のMIL-Q-21549やアメリカ空軍のAF1523を基に作られたもので、その後の1963年に、MIL-Q-9858Aに改定された。続いてNATOでも1968年にAQAP-1が制定された。
軍事分野以外では、原子力エネルギーの分野で1971年に ANSI N45.2 「原子力発電所に関する品質保証プログラムの要求事項」が制定された。これは原子力発電所の設計・建設における品質保証プログラムを計画・実施する際の要求事項をまとめたものである[19]。これは1977年にANSI 45.2-1977 「原子力機器に関する品質保証プログラムの要求事項」として、広く原子力産業の設備に適用できるように改められた。
1974年にイギリスで、英国規格協会 (BSI) が産業界からの要望に応えてBS 5179「品質保証システムの運用と評価の指針」を発表した。この BS 5179 の制定に刺激されて各業界がそれぞれ独自の指針を作成し始めるようになった。 この状態は1977年に全国経済開発局のレポート「技術産業における規格と仕様で報告され、同時に統一規格の作成が勧告された[20]。この勧告を受けて作成され、1979年に制定された規格がBS 5709「品質システム」である。BS 5709は3部構成をなしており、第一部は「設計・製造・据付のための仕様」、第二部は「製造・据付のための仕様」、第三部は「最終検査および試験のための仕様」となっていた。
ISO も品質管理システム規格の制定のためにISO/TC176技術委員会が1979年に組織される[21]。 最初に ISO 8402:1986「品質-用語」が制定され、ISO 9000 シリーズが始まる。ISO 9001「品質システム-設計・開発、製造、据付における品質保証のためのモデル」、ISO 9002「品質システム-製造、据付における品質保証のためのモデル」、ISO 9003「品質システム-最終検査及び試験における品質保証のためのモデル」、ISO 9004「品質マネジメントおよび品質システムの要素-指針」はそれぞれ1987年に制定された。これらはBS 5709を基に作成されたものである。ISO 9001、ISO 9002、ISO 9003は、BS 5709の第一部、第二部、第三部にそれぞれ対応する。ISO 9004は、1981年にBS 5709に付け加えられた第四部から第六部をまとめたものに相当する[22]。
その後、ISO 9000シリーズは1994年に改定された。これはISO 9000シリーズの示す品質マネジメントシステムの導入のしやすさを狙うと同時に、時代に合わせた考え方を取り入れたものであった。
2000年にISO 9000シリーズは大幅に改定され、この2000年版のISO 9000シリーズが2013年現在のISO 9000シリーズの元になっている。それまでのISO 8402とISO 9000-1は統合され、新しくISO 9000「品質マネジメントシステム-基本と用語」とされた。事業所の性格に合わせて分けられていたISO 9001、ISO 9002、ISO 9003はまとめられてISO 9001「品質マネジメントシステム-要求事項」となり、ISO 11011は、ISO 19011として、品質マネジメントシステム以外のマネジメントシステムにも適用できる規格となった。ISO 9004は、番号は変更せずに内容が改定された。
2008年にもISO 9001の改定があったが、容易な語句へ改め、環境マネジメント規格のISO14001 と調整して用語を変更し、パラグラフの順番を変えるなどの軽微な変更にとどまっている[23]。2013年はISO 9001:2008が現行規格である。
1994年版 | 2000年版 | 2015年現在の版 |
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ISO 8402 | ISO 9000 | ISO 9000:2015 Quality management systems — Fundamentals and vocabulary
品質マネジメントシステム-基礎と用語 |
ISO 9000-1 | ||
ISO 9001 | ISO 9001 | ISO 9001:2015 Quality management systems — Requirements 品質マネジメントシステム-要求事項 |
ISO 9002 | ||
ISO 9003 | ||
ISO 9004-1,2,3,4 | ISO 9004 品質マネジメントシステム-パフォーマンス向上のための指針 | ISO 9004:2009 組織の持続的成功のための管理方法-品質マネジメントアプローチ(2016年に改訂予定) |
ISO 10011 | ISO 19011 | ISO 19011:2011 マネジメントシステム監査の指針 |
2000年の改定前のISO 9001、ISO 9002、ISO 9003と2000年の改定以後のISO 9001(以下、特に発行年をつけて区別しない限り、これらをまとめてISO 9001とする)がISO 9000シリーズの中核をなす規格で、これらの規格が品質マネジメントシステムのモデルを提供する。このモデルを実現していると認定にされた事業所が、いわゆるISO 9001認定事業所である。
ISO 9001 は多くの企業が採用し、ISO 9001:2008 は170か国以上で100万移譲の企業が導入している[24]。ISO 9001が広く採用された理由を挙げる[25]。
ISO 9000の示す品質マネジメントモデルを導入した個々の企業や事業体の活動効果は議論もあるが、顧客はISO 9001の認証をサプライヤーに要請している[26]。EUは ISO 9001 認証が市場参入のデファクトスタンダードとされ、事業者が認証申請する動機となる。業界により新規顧客の獲得、従来顧客の維持、マーケティング利益、などを期待して認証申請する場合もある[27]。ISO 9001 の品質マネジメントモデルは、不良率減少、コスト削減、返品率低下などオペレーション成績の効果も期待できる[26]。認証の成果は運用手腕による[28]。
ISO 9001:2000(およびISO 9001:2008-以下同様)は八つの品質マネジメント原則[29]を基礎としており、経営者はこれらの原則を組織の実績を向上させるために使用することができる[30]。
ISO 9001:2000(およびISO 9001:2008-以下同様)は、以下のように構成されている。
つまり、経営者の責任において、顧客の存在を重要課題として企業活動の方針に取り込み、その方針を実現するために経営資源を調え、顧客の要求事項を具体的に製品として実現させ顧客に供給する。そして、それが本当に顧客の要求事項を実現し、顧客満足を得ているかどうかを測定・分析し、その結果を経営者にフィードバックする。同時に測定・分析の結果は品質マネジメントシステムの改善に役立てる、というのかISO 9001が示す品質マネジメントシステムのモデルである。
ISO 9000シリーズでは、検証と妥当性確認を以下のように定義している。
2013年現在、ISO 9000シリーズを構成するとされる規格は、ISO 9001:2008の他に以下のようなものがある[33][注 1]
ISO 9000は国際標準化機構が制定する品質管理システムの基礎と用語に関する規格である。
規格番号は9000、名称は「Quality management systems — Fundamentals and vocabulary」である。ISO 9000シリーズ "Quality management systems" の1つ。本規格は品質管理システムの基本的な考え方を示し用語を定義している。例えば、八つの品質マネジメントの原則がISO 9000 シリーズの基礎をなしていることは、この規格で説明されている[30]。
対応する日本産業規格は「JIS Q 9000 品質マネジメントシステム − 基本及び用語」である。
名称 | 発行年 | 対応JIS |
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ISO 9000:2015 Quality management systems — Fundamentals and vocabulary | 2015-09 | JIS Q 9000:2015 |
ISO 9000:2005 Quality management systems — Fundamentals and vocabulary | 2005-09 | JIS Q 9000:2006 |
ISO 9000:2000 Quality management systems — Fundamentals and vocabulary | 2000-12 | |
ISO 8402:1994 Quality management and quality assurance — Vocabulary | 1994-03 | |
ISO 8402:1986 Quality — Vocabulary | 1986-06 |
本規格は組織が持続的な成功を実現するための手引きである[34]。品質マネジメントシステムの持続的な成功とは、顧客や関係者の期待や必要に合った製品を長期にわたって持続的に供給できるということである。このことは組織の効率的なマネジメントによって実現することができる[34]。ISO 9001:2000とは相互補完関係にあり[35]、ISO 9001:2000 と容易に比較・対象できるようによく似た構成になっている。
これはマネジメントシステム監査一般の指針で、品質マネジメントシステム以外にも、環境マネジメントシステム(ISO 14001)やサプライチェーン安全マネジメントシステム(ISO 28000)など他のマネジメントシステムの監査にも共通して使用する規格である。ただし、第三者機関によるマネジメントシステム認証のための監査は2011年度版からは外され、内部監査(自分の組織の自己監査)とサプライヤーに対する監査を対象にしている[36]。第三者機関によるマネジメントシステム認証の監査の指針は、2006年に発効されたISO/IEC 17021(2013年現在の最新版はISO/ICE 17021:2011)が対象としている[36]。
ISO 9001は様々な産業に適用することを想定しているため、特定の産業に対しては不十分であると考えられることもある。そのような場合に、ISO 9001を土台にし、それに変更・追加を加えた規格を各産業で独自に制定する場合がある。自動車業界は、このようなISO 9001ないしISO 9000シリーズを土台にした業界独自の品質マネジメントシステムの規格・制定を早い時期から始めていた。1991年にはVDA(ドイツ自動車工業会)がVDA6.1を発表した。これは当時のDIN EN ISO 9004 を基準にしたチェックシートで、新しい要求事項を付け加えることを意図したものではないが、自動車部品メーカーの品質管理システムを監査するために作られているので[37]、自動車業界の標準的な考え方が反映されている。1994年にはアメリカのクライスラー、フォード、ゼネラルモーターズが統一の品質マネジメントシステム規格、QS-9000を発表した。これはISO 9000:1994の4章を発展させたもので、クライスラーのサプライヤー品質保証マニュアル、フォードのQ-101 品質システム規格、 ゼネラルモーターズのターゲット・フォー・エクセレンス(優秀たることへの目標)の内容も網羅している[38]。その後、欧米の主要な自動車生産国の自動車工業会と各メーカーがIATF(国際自動車タスクフォース)を結成し、統一の品質管理システムの仕様[注 2]である ISO/TS 16949 を作成した。
他の産業でも以下のような、ISO 9000 (特に ISO 9001 ) を発展させた独自の規格が制定されている。
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