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B65型超甲型巡洋艦(超甲巡、B65がたちょうこうがたじゅんようかん en:Design B-65 cruiser)とは[注釈 4]、日本海軍が計画した巡洋艦または巡洋戦艦である[4]。
B65型超甲型巡洋艦 | |
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B65計画図 | |
艦級概観 | |
艦種 | 一等巡洋艦または巡洋戦艦[1][注釈 1] |
艦名 | 未詳[注釈 2] |
前型 | 天城型巡洋戦艦[注釈 3] |
次型 | - |
同型艦 | 第795号艦、第796号艦 |
竣工 | 計画のみ、未起工 |
性能諸元(以下全て計画値) | |
排水量 | 基準:31,400トン 公試:34,950トン 満載:不明 |
全長 | 240.0m |
全幅 | 27.5m(公試水線) |
平均喫水 | 8.8m(公試状態) |
主缶 | ロ号艦本式重油専焼水管缶8基 |
主機 | 艦本式オールギヤード・タービン4基4軸 |
最大出力 | 170,000hp |
最大速力 | 33.0ノット(約61km/h) |
航続距離 | 18ノット(約33km/h)で8,000浬(約14,800km) |
燃料 | 重油:4,545トン |
乗員 | 1,300名 |
兵装 | 31cm(50口径)3連装砲3基 九八式 10cm 65口径 連装高角砲8基 九六式 25mm 61口径 三連装機銃4基 九三式 13mm 76口径 四連装機銃2基 |
装甲 | 舷側:195mm(傾斜装甲)[2] 甲板:125mm 主砲塔:不明 主砲バーベット:260mm(最厚部) 司令塔:215mm(最厚部) (数値はいずれも最大) |
航空兵装 | 水上機3機 カタパルト1基 |
老朽化した金剛型戦艦の代艦として、夜戦で水雷戦隊を支援する役割を与えられる予定であった[5]。巡洋戦艦並みの船体と装備を持ち、大和型戦艦に類似した外観を持つ[6]。昭和16年に策定された第五次海軍軍備充実計画(⑤計画)で2隻[注釈 5]の建造が計画された[1][7]。本型は、⑤計画から改⑤計画への見直しの際に航空母艦(空母)の重要さから計画から削除され、2隻とも建造中止となった[8]。
日本海軍の艦隊決戦計画では、主力部隊同士の艦隊決戦の前夜に重巡戦隊及び水雷戦隊からなる4群の襲撃群によって構成された夜戦部隊によって、敵主力艦隊に夜間雷撃戦を実施する事になっていた[9]。しかし計80隻以上にも及ぶ大艦隊を指揮するに際し高雄型重巡洋艦を旗艦とした場合[10]、特に司令部要員の収容および通信能力の観点から、能力不足であると認識されるようになっていた[9]。また重巡洋艦(甲型巡洋艦)の火力で、敵警戒部隊を突破するのは困難と考えられていた[9]。 そこで14インチ砲8門を持ち速力30ノット発揮可能な改装榛名型戦艦(金剛型戦艦)に夜戦部隊の支援を行わせ[11][12]、数的優位に立つアメリカ海軍の巡洋艦を撃破しようとした[3]。だが金剛型巡洋戦艦自体も、大改装により能力向上を果たして高速戦艦に変貌してはいるものの[12]、艦齢が25年に達していたために早期に代艦を建造する必要性があった[6]。 くわえて軍縮条約決裂時には最上型巡洋艦[13]や利根型巡洋艦の6インチ砲を[注釈 6]、主砲塔ごと8インチ砲に換装する予定だったが[15][16]、それでも威力不足と判断したのである[3]。 その上、アメリカが6インチ砲(15.5cm砲)3連装砲塔5基(15門)を搭載した1万トン級巡洋艦を多数建造しており[17][注釈 7]、この新型巡洋艦に対抗する必要も生じていた[注釈 8]。
このような経緯を踏まえ、日本海軍は有力な指揮施設・旗艦装備を持ち、金剛型に匹敵する火力を持つ艦を計画した[22]。これが、甲型巡洋艦を超える巡洋艦、ということから[23]、“超甲型巡洋艦計画”として計画された本型である[24]。⑤計画と⑥計画では超甲巡推定6隻が建造予定であり[25]、造船能力拡充のため⑤計画において大分県の大神村(現在は日出町)に新型戦艦(超甲巡、超大和型戦艦)用の海軍工廠を建造予定であった[26]。
同時期、ドイツ海軍はドイッチュラント級装甲艦を完成させ[27][注釈 9]、刺激を受けた列強各国は高速戦艦の開発に乗り出していた[29]。一例としてフランス海軍はダンケルク級戦艦を就役させた[注釈 10]。これに対応すべくドイツ海軍はシャルンホルスト級戦艦を建造[32]、アメリカ海軍もアラスカ級大型巡洋艦の建造に着手している[33]。
イギリス海軍は日本海軍の建艦情勢について情報を収集しており[注釈 11][注釈 12]、日本の超甲巡(巡洋戦艦)に対抗するため重装甲の巡洋戦艦を計画した(新標準艦隊)[36]。この新型巡洋戦艦を基本とし、カレイジャス級巡洋戦艦の15インチ砲とライオン級戦艦の機関を流用して戦艦ヴァンガード (HMS Vanguard, 23) が建造された[37]。
本型の外観の特徴としては、現代に残る資料で見られる上部構造物の形状や主砲レイアウトが大和型戦艦に酷似している事が挙げられる[22]。
本型の船体は平甲板型船体であるが同時期の重巡洋艦と同じく艦首の乾舷は高く、甲板も強いシア(甲板の傾斜)が付けられていた。 舵の配置は、大和型と同様に半釣合舵の主舵と、小型の副舵のタンデム配置となっていた。
艦首甲板に新設計の主砲を三連装砲塔に納め、1番・2番主砲塔を背負い式で2基配置した[23]。2番主砲塔基部から上部構造物が始まり、司令塔の背後に大和型に酷似した塔型艦橋が立つ[23]。また球状艦首の採用なども見られる。艦橋のレイアウトは上から測距儀塔、戦闘艦橋、操舵艦橋の順である。艦橋の背後には斜めに傾斜した集合型煙突が立ち、周囲は艦載艇置き場となっていた[38]。煙突の後部で艦上構造物は終了して中央部甲板上に水上機射出用カタパルトとクレーンが配置し、このクレーンは艦載艇運用も兼ねていた[38]。左右の舷側甲板上には九八式10cm高角砲を爆風避けのカバーを被せた連装砲架で等間隔で片舷4基ずつ計8基を配置した[38]。水上機施設の後部には後部測距儀塔を配置し、後部甲板上に3番主砲塔を後向きに1基が配置していた[38]。
本型の最大の特徴は、アメリカ海軍のアラスカ級大型巡洋艦に搭載されたMark 8 12インチ50口径砲に対抗し、弩級戦艦並みの口径である31cm50口径砲を新規に開発し、これを採用予定であったことである[22]。
本型の主砲は、31cm (310mm) [注釈 13]50口径砲を新規に開発し、これを搭載するものとされていた[22]。ただし、本砲は、「試製乙砲」として試作が計画されていたが、実際には製造されず[注釈 14]、また、制式化されなかったため、詳細な要目は不明である[39][注釈 15]。 超甲巡はアラスカ型に対抗するため36cm連装砲を搭載することを検討していたが、新型31cm砲の性能は射程以外で36cm砲の性能を凌駕しており、見送られたという[22]。
主砲以外の砲は、水上砲戦用の副砲は搭載せず、高角砲として新型の九八式10cm高角砲を採用予定であった[6]。
近接対空火力は、九六年式25mm機銃を三連装砲架で4基、九三式13mm機銃を四連装砲架で2基を搭載予定であった。
14インチ(36cm砲)防御を施すと基準排水量4万トンを超える大型艦となるため、見送られた[22]。本型の防御面での特徴だが、海軍の要求では31cm砲弾に対しては20,000m-30,000m、800kg爆弾の急降下爆撃に耐える防御が計画された[22]。装甲の防御配置は集中防御方式を採用すると共に、舷側装甲は大和型と同じく下部に行くほどにテーパー状されたものを傾斜して装着する形式で舷側装甲の最大厚は195mmであった[22]。甲板も主甲板は125mmの一枚板とした[22]。中型戦艦としては列強各国の同級艦に見劣りしないが、戦艦としては、やや弱体であった[22]。
砲塔装甲は不明である[注釈 17]。一部資料では、バーベット部は前面装甲210mm、後面190mmとする[22]。31cm三連装砲塔の重量は約1000トンに達し、長門型戦艦の41cm連装砲塔に匹敵する重量があった[22]。
1930年代中盤のアメリカ海軍は、ドイツ海軍のドイッチュラント級装甲艦(通称“ポケット戦艦”)や[40][注釈 18]、シャルンホルスト級戦艦[32][注釈 19]、日本海軍が建造予定とされた新型の戦闘巡洋艦(巡洋戦艦)[注釈 12]に対抗する必要に迫られていた[24][注釈 20]。これらの通商破壊艦や大型巡洋艦(巡洋戦艦)に対抗してアメリカ海軍が建造した艦が[42]、アラスカ級大型巡洋艦 (Alaska Class Large Cruiser) である[33][43]。
この両艦を比較すると、同サイズの艦艇同士の戦闘を目的として建造された艦に見えるが、用兵上から要求される建造目的、及び技術的な設計思想では相当異なる。超甲巡は、既述の通り金剛型戦艦の代艦であり、夜戦部隊の旗艦として建造され、敵主力艦に味方水雷戦隊が接近するために敵警戒部隊(特に敵巡洋艦)を排除する役割を担った[24]。「巡洋戦艦」的な性格が強く、自艦主砲への対応防御を施し、防御構造を始めとして、大和型戦艦の技術的影響が随所に確認される。一方で、在来の重巡洋艦とは船体構造や耐弾・水中防御等で直接の影響下にはなく、単純に大型化した巡洋艦と呼ぶのは不適切と言える。
一方、アラスカ級の建造目的は、当時アメリカ海軍が想定した在来の巡洋艦の延長線上と言えるものであり(具体的には、空母部隊[注釈 21]の直衛艦任務、及び単艦での分遣・哨戒任務)、そこから想定される戦闘で、「遭遇した条約型巡洋艦や通商破壊艦を一方的に撃破できる能力を有すること」及び「条約型巡洋艦を超えた『巡洋艦キラー』となる大型巡洋艦の出現に対抗出来ること」を目的としていた。設計思想でも、防御の基本計画、特に水中防御構造等は、巡洋艦式設計の延長上にあり[注釈 22]、また、対弾防御も、自艦の同級砲よりも、下位の巡洋艦の攻撃への十分な対応防御を期すること[注釈 23]が設計上の重要な議論であり、文字通り「大型化した」巡洋艦として計画、建造された。
アラスカ級大型巡洋艦は6隻建造される予定だったが、就役したのは2隻(アラスカ、グアム)に終わった[注釈 24]。太平洋戦争では、空母機動部隊の護衛や対地艦砲射撃に従事した[44]。超甲巡が建造されなかったこともあり、戦前に想定した活躍の場はなかった[44]。また高速化した戦艦とのプラットホームとしての余裕の違い、建造・運用コストでの優位性の比較、及び実際の艦の操舵性の悪さなどから、失敗としての評価が多くなされている。そのため、日本海軍が超甲巡を実際に建造した場合も、同様の結果になったのではないかという意見がある。しかしながら超甲巡の場合は、上述の通りアラスカ級とは若干の性格の違いがあり、また「現実に実戦で酷使するほど活用された金剛型の代艦として建造される」というアメリカ海軍にはない観点がある。実際の所は単なる計画のみで終わったために、建造・運用実績に基づく評価が出来ず、評価は推測の域を出ない。
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